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【出演者インタビュー】戸枝陽基さん「医療的ケア児の実態を捉え、新しい枠組みで判定や支援の方法を考えないといけない」

2016年04月04日(月)

20160404_a.jpg4月5日放送(4月12日再放送)
シリーズ 変わる障害者福祉
第1回 “医療的ケア児”見過ごされた子どもたち
ご出演の戸枝陽基さんにメッセージをいただきました。

 

《戸枝陽基さん プロフィール》

全国医療的ケア児者支援協議会 代表


――今回は、今年3月に国会に提出された「障害者総合支援法」の見直し案のなかでも、特に「医療的ケアが必要な子どもたち」の問題について見ていきました。番組ではそのご家族から届いた「毎日を生きるのに精一杯です」「預け先がないから家を出られない」といった切実な声を紹介しましたが、それらを聞いてどう感じましたか。

 

みなさん必死に、なんとか前を見ようとしているけど、暗闇しか見えない苦しみや悲しみ、それでも子どもを愛そうとする思いとか、いろんなことが伝わってきて、涙なしでは見られない思いでした。




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――番組にそのような声が多く届いたということは、周りに話せる人がおらず、ネットでやっと話せる場所を見つけたという方もいるのでしょうか。

 

親御さんは子どものことを見ていないといけないので家から出られないわけです。訪問看護師が見つからないご家族もたくさんあるので、インターネットが唯一のコミュニケーション手段、情報を得る手段になっているのかもしれません。この番組のホームページで初めて外部に向かって自分の状況を訴えたという人が多くいるんじゃないかという気もしています。私も全国医療的ケア児者支援協議会という組織を作ったわけですが、やっぱり思いを受け止めたり投げ返したりするような場所の必要性は感じているところです。

 

――なぜ医療的ケアが必要な子どもたちは見過ごされてしまっているのでしょうか。

 

ひとつは行政の仕組みの問題です。たとえば厚生労働省の中で、医療のことを考えるのは医政局ですが、子育てを支援するのは児童家庭局、「障害がある」のであれば社会・援護局(障害福祉課)というように、縦割り行政のなかで見過ごされたということが要因としてあります。同じ理屈で、病院と相談支援専門員、訪問看護師の連携もそうです。さまざまな職種の人が合わさって助けないといけない子どもたちなので、結果的にみなさん「誰かがやるだろう」と思って見過ごされてしまったわけです。多職種連携がうまくいっていないという闇にのまれた子どもたちの問題なのです。

 

――今回の制度の見直しで、期待することや注意して考えないといけないことは何でしょうか。

 

厚生労働省も文部科学省もこの問題に気づいてくださり、結果として医療的ケア児が障害者総合支援法のなかに位置付けられるようになったり、文部科学省も学校の看護師さんの予算を大幅に増やしてくださったりと、かなり具体的なアクションをしてくださっています。そのうえで言うと、やっぱり旧来の重症心身障害児の枠組みの延長線上に彼らが位置づけられるのはちょっと無理があると思っています。立ち上がるし、知的障害もないような子もいっぱいいるんです。だから、きちんと実態を捉えながら、新しい枠組みで判定や支援の方法を考えないといけないのではないかと思うんですね。

そして、各地の実態調査で、医療的ケアが必要な子どもは人口1万人に対して2、3人いるとわかってきています。そうすると全国に結構な人数がいるわけですが、潜在化しているので特別な人の問題だというふうに考えられてしまい、場合によっては行政の人でもまだそう思っているのではないかという気もしています。でも、これだけの人数がいるわけですから、根本的な仕組みを作ってもいいと思うんですよ。まずは調査からと言っていると待っている間に亡くなってしまう子もたくさんいますし、何より子どもたちの育ちが遅れてしまいますから、できれば医療的ケア児の相談支援センターのようなものを全国にある程度整備して、そこに看護師と介護職が一緒にいて、とりあえず声を上げる的(まと)だけでもはっきりさせてあげるという方法もありますよね。当事者たちがそういう場を求めているというのは今回の番組への声を見てもはっきりしたので、的を作ってあげることと、各役割の人たちが連携するということをハイブリットで進めながら、その上で判定や支援の仕組みを作っていかないといけないと思います。

 

――今回の番組やこの記事が、どのようなきっかけになれば良いと思いますか。

医療的ケアが必要な子どもたちことを考えていくと、命の重さの問題につながります。たとえば日本はこれから在宅や地域での介護の問題やお年寄りの高度医療をどこまでするのかという問題を考えなければいけませんが、この子たちはそこを問うために生まれてきている気がするんです。この子たちをちゃんと育てたり、命を救えるかどうかが日本の高齢化社会の仕組み全体を左右するという。可愛らしい子どもたちの問題だとみんな前向きに考えられるじゃないですか。そういう機会としてこの問題を捉えてもらえるといいなと思います。特別な問題ではなく、この子たちを守れるかどうかが、自分が自分らしく死ぬまで生きられるかどうかいうこととリンクしている。そう考えていかないといけないなと思いますね。

コメント

昨日放映を見させて頂きました。
私の息子もたんの吸引が必要な医療ケア児です。
生後2ヶ月で重い病気にかかり、気管チューブを挿管した後に気管に傷がつき呼吸困難になり気管切開をしました。
そのときは生きるために仕方なく選んだ道ですが、お陰様で病気は良くなりましたが気管切開だけは残った状態で退院となりました。
現在は1才10ヶ月で気管切開以外は病気もなく、まさに元気な病人のため預かってくれる所がありませんでした。
自分で行政に訴えかけて少しだけ見て頂けたデイケアも走り回りだした為利用出来なくなりましたが、この春より保育園が非常勤の看護師さんがいらっしゃる時だけと条件付きで預かってくれる貰えることとなりほっとしています。
私は恵まれている方だと思いました。
在宅看護は想像を絶するほど辛いものです。全くの医療知識のない者がいきなり24時間365日重症な患者の看護を引き受けなければいけないのです。
本当に本当に孤独です。この小さな命を支えられるのは私しかいないんだと思いながら看病をしています。
大学病院から退院して在宅看護に入るときにもっと医療、行政が連携をとって質の良い在宅看護をサポートしてほしかったです。
息子の病状は年々良くなっておりますので予定では数年で気管切開を卒業出来る予定です。
もしその時は、私達が経験者として医療ケア児のお母さんをサポート出来ればと思っています。
もっともっと早く医療ケア児の問題が改善出来ますようお願い致します。

投稿:キムチ君 2016年04月06日(水曜日) 13時30分