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【出演者インタビュー】藤井克徳さん「『介護保険の優先原則』をなくさないと、本当にあるべき論点は見えてこない」

2016年04月04日(月)

20160404_c.jpg4月6日放送(4月13日再放送)
シリーズ 変わる障害者福祉
第2回 “高齢障害者”65歳の壁
ご出演の藤井克徳さんにメッセージをいただきました。

 

《藤井克徳さん プロフィール》

NPO法人 日本障害者協議会 代表


――今回は、今年3月に国会に提出された「障害者総合支援法」の見直し案について見ていきましたが、その中でも藤井さんが特に強調して伝えたい点はどのようなことですか。

 

「介護保険の優先原則」についてです。現在だと65歳の誕生日を迎えると「障害福祉サービス」ではなく「介護保険サービス」が優先されて、そちらをまずは使わなければならなくなります。そうすると番組で紹介したように、生活介助の時間が大幅に減ったり、それらを併給したとしても十分とはいかなくなったりしてしまうのです。ですから、これからの国会での議論を通してこの優先原則をなくさないと、今回の改正の値打ちは下がってしまいますし、高齢者福祉に関する本当の意味でのあるべき論点というのは出てこないのではないかなと思います。




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――その議論を進めていく中で、どのような課題があると感じますか。

 

日本は障害者権利条約を批准したので、これからの障害者福祉制度は基本的に障害者権利条約を設計図にするということになります。しかし、私がこの問題を見ていますと、障害者権利条約をベースに考えるというよりは、どうも財源論が前にきているんじゃないかと思うんです。その流れの中では、障害を持った人の社会参加とか、人生の豊かさを支えていく支援策というのは生まれにくいのではないかと感じるんですね。

 

――番組で紹介した女性は、65歳以降、サービスの時間が大幅に減り、お世話になった近所の方の告別式にも出られなかったと話していました。ご覧になりどのようなことを感じましたか。

 

まさか人生の終末でこんなことになるとは思っていなかったとおっしゃっていましたよね。それは本当に当事者全体を代表する声だと思います。残念ながら日本はまだまだ障害を持った人に関する基礎データがとぼしいんです。ですから、今日のようなひとり一人の声を今後も番組で拾ってほしいし、私たち民間の団体としてももっと実態を集める努力をしていかないといけないということを強く感じました。

 

――対策の例として紹介した埼玉県和光市では、月に2回「中央コミュニティケア会議」を設けて、65歳になった障害者に対し、サービスの利用プランをケアマネジャー、相談支援専門員、作業療法士などの専門家と一緒に考えるという会議を行っています。その例についてはどのように感じましたか。

 

和光市もおそらく財政面で潤沢ではないと思います。限られた財源をどこに優先して使うのか、市で考えて実施されていらっしゃるはずです。つまり和光市は、障害者福祉に少しウェイトを起きましょうという意識が、市当局にも、議会にも、それを支持する住民にもあると思うんですよ。ですからあの例は多くの自治体にとって、これからの障害者福祉の手がかりになるものだというふうに思いました。

 

――そのような例が全国的に広がっていくために必要なことは何でしょうか。

 

やはりそれは国として障害者福祉の考え方をきちんと構えること。そして、それと同時に、その構えを立証するような財源の裏打ちを作ることです。それらがあって初めて自治体は動くのではないかと思うんです。ですから、和光市はとても立派ですが、それを普遍化していくためには国がもう少し財源の手当てをするということが問われている気がします。

 

――今回の番組やこの記事をご覧になった方に伝えたいことはありますか。

 

私は今回の障害者問題のあり方を通して、これからの地域福祉のあり様が問われていると思っています。おそらくここでの議論は、保育問題とか、高齢者問題とか、これからの地域の暮らしのあり様につながる原点だと思うんです。単に障害者問題と思わずに広く関心持って考えてほしいし、番組に対する反響というのも聞きたいですね。

コメント

私は、介護3で特老に入っています。
診察や入浴の回数がへりました。
従来受けていた診察も出来なくました。

投稿:まこちゃん 2016年06月25日(土曜日) 04時49分

藤井さん、昨日の放送拝見いたしました。障害者総合支援法における65歳優先規定は、4月1日に施行された障害者差別解消法や、国会で審議される障害者総合支援法の3年後の見直しにおいても、とても重要な項目だと思います。福祉サービスはシームレスなサービスが基本だと思いますが、障害者が65歳になったとたん、個人負担が急に生じることは、説明が難しいのではないでしょうか?財源問題だけで説明するにはとても厳しいと思います。すべての人が安心して暮らして行く社会を作るために障害のある人の立場に立って考えて行かなければならないと思います。

投稿:K.Y 2016年04月07日(木曜日) 16時28分