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【出演者インタビュー】鈴木和樹さん「利根川心中事件。このような悲劇が二度と起こらないためには」

2016年02月23日(火)

20160210_suzuki.jpg2月24日放送(3月2日再放送)
届かなかった支援
―利根川心中事件をめぐって―
ご出演の鈴木和樹さんにメッセージをいただきました。

 

《鈴木和樹さん プロフィール》
NPO POPOLO事務局長


――去年11月、埼玉県深谷市で親子三人を乗せた車が利根川に突っ込み無理心中を図りました。70代の母親は長年認知症。心中を企てた三女は介護のため仕事を辞め、生活に困窮していました。なぜ困窮した人たちは助けを求める声を上げられないのか、なぜ行政や社会は人々の困窮に気づけないのか、番組で議論していきましたが、収録を通してどのようなことを考えましたか。

この事件は家族の介護の限界、生活困窮の問題、地域で支えることの難しさ、本当にさまざまな要素が包括されているので、誰でも当事者になりうる可能性があるし、特別な事例ではないと思います。早い段階で助けてと言えなかった、周りも気づけなかった、行政も動けなかった……そういう「できなかった」が織り交ぜられながら起きてしまったのかなと感じています。行政は待っているだけじゃなくてもっと動くべきだったし、町内会の人や友だちは「受け付けない雰囲気があった」という言葉がありましたけど、それじゃあどうしたらいいだろうかともう一歩行くべきだったし、当事者の彼女にも追いつめられているなかでプライドもあったでしょうし、信用できる誰かというのがいなかったのかもしれない。でも、そのような状況になったら誰しもがそうする可能性はあるので、決して他人事ではありません。



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――鈴木さんのNPOでは、その「信用できる誰か」というのを見つけるための活動もされているのですか。

そうですね。僕たちは支援が終了して、自立できた後も定期的に電話をかけたり、はがきを送ったりしています。はがきを送ると結構返事が帰ってくるんですよ。今僕はこういう感じで生活していますとか、実は仕事を辞めちゃって悩んでいるからまた相談にのってほしいとか。そうすることで、言いづらかった「また助けて」という言葉が言いやすくなるんです。そうやって相談に来たあとのフォローや再孤立、再貧困にさせないような仕組みはいつも考えています。ぶつ切りじゃなくて、ゆるやかにつながった連携を作っていくことが大事なのかなと思っています。

――「見えない貧困」に対しては、どういうアプローチが必要でしょうか。

誰が困っていて、誰が困っていないのかというのは僕たちにもわからないので、とにかく誰でも来やすく、誰でも相談できるような仕掛けはいつも心がけています。たとえば炊き出しをしたときは、困っている人だけじゃなく、誰でもウェルカムで配ったり、インターネットカフェなど若い人が行くところにチラシを置いてもらったり、民生委員さんやスクールソーシャルワーカーさんなどの現場に近い方たちに「苦しそうな雰囲気を感じたら気軽に話しかけるツールとしてうちの食べ物を使っていいから」と言ったり(NPO POPOLOではフードバンク事業も行っている)。そういう取り組みを続けるうちに、実は困っていないような人が困っていたとか、困っているだろうと思ったけど大丈夫そうだというのが見えてくる可能性もあるし、とにかく接触回数を増やすことは意識しています。それは私たちだけではできないので、地域の方たちと一緒に取り組んでいることです。

――今でも「生活保護を受給することは恥ずかしい」という風潮があり、貧困に苦しむ人もいるというお話もありましたが、そのような方にはどのように言葉をかけていますか。

私たちがいつも気をつけているのは、本人の意思を大切にすることです。たとえば生活保護を受けたくないというのであれば、それならどうすればこの問題を解決できるかな?という話から始めるんですね。そこでいろんなことを話し合って、生活保護に頼らなければ難しいなと本人がわかるようになるまで一緒に考える。理解してもらえれば一緒に申請に行こうとなりますから。本人に抵抗があるのに無理に引っ張っていくよりも、それが必要だとわかってもらえることが大事なのかなと思います。

――このような悲しい事件が起こらないために、一般の人にはどのようなことができるのでしょうか。

自分の周りの人の困りごとを少し背負う、そして、その困っている人は悩みが解決したら、また別の近くの人の「困った」を少し背負って応援する。そういう循環をしていくことで困っている人というのはだいぶ減ってくるし、早い段階で気がつくことができるんじゃないかと思います。僕はこれを「社会的コストの分散」と言っているんですけど、たとえばパワハラを受けて不当解雇されてしまった友達がいた場合、「雇用保険はすぐもらえたの?」「いや、自己都合退職にさせられてしまったんだ」という話になったとします。そこで知識があれば、「ハローワークでこういうふうに言ったほうがいいよ」と言えて、本来の都合で辞められる可能性があったかもしれない。生活保護にしても、「私なんかじゃもらえない」と言ったときに、知識のある人がいれば「そんなことはないよ」と言ってあげられる。そうやって自分の近くの人とお互いに知識をシェアし合うことが大切です。やっぱり何かをしようとすると一人では限界があるし、行政やNPO、地域だけでも難しい。行政はお金は出せるけど公平性の観点があるし、限界にきている。地域は顔が見える関係で深くは入れるけど、ノウハウがない。NPOはノウハウを持っているけど知られていないから、一部の人しかケアできない。それらを重ねて合わせ、分散してコストを背負っていく支援のあり方が理想的ですし、生活困窮者自立支援制度がうまくいくかどうかというのはそこにかかっていると思います。

 

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