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【出演者インタビュー】大川弥生さん「『することがない』状態は震災後から改善しているとは限らない」

2015年09月01日(火)

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9月3日放送(9月10日再放送)
シリーズ誰もが助かるために
第3回 “生活不活発病”を防げ
ご出演の大川弥生さんにメッセージをいただきました。


《大川弥生さんプロフィール》
産業技術総合研究所 医学博士


――東日本大震災の被災地では、震災前は元気だったのに歩くことや身のまわりの動作が難しくなり、寝たきりや車いす生活にすらなった高齢者が増えています。その最大の原因は“生活不活発病”。大川さんはその対策に長く取り組まれていますが、今回の番組ではどのようなことを伝えたいですか。

生活不活発病というのは、文字通り生活が不活発なことによって心身のあらゆる機能が低下することを言います。災害によって起きる問題というのは時間が経てば薄れていく感じがするかもしれませんが、この生活不活発病は今後も新たに発生する危険性が高く、今起きている人もより進行していく可能性があります。ですから、“すでに起きてしまったこと”というよりも、“新たな発生や進行を予防する必要性があるんだ”と考えていただきたいと思います。


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――なぜ今後も発生する可能性が高いのでしょうか。

生活不活発病が起こる理由として、「することがない」というのが一番多いんです。その「することがない」状態は、震災後から改善しているとは限りません。むしろ進んでいる場合もあります。だからこそ新たに起きる可能性があるのです。そして、災害だとどうしても避難所や仮設住宅、災害公営住宅の方に注意が行きがちですが、津波や地震の被害がなかった地域でも生活が大きく変わった人は多くいるわけですから、きちんとした対応をしないと新たに発生しますし、進行するということになります。

――これまでの災害対策のなかで、生活不活発病については対策が不十分だったのでしょうか。

厚生労働省は2004年の新潟中越地震以降、大災害時には生活不活発病の予防喚起を事務連絡として通知していましたが、十分に活かされていなかったのは事実でしょうね。ただ、大事なのは、これは災害時だけの問題ではなく、平常時でも高齢者や障害のある方は生活不活発病になりやすいということ。そして、それを防ぐために、改善するために、どういう対策を立てるべきなのかということが十分に認識されていなかったということ。だからこそ被災地でこれだけ多くの方に発生しているのだと思います。ですから、平常時から生活不活発病のことを知って、どういうふうに対応すべきかということを理解していただくことが重要です。

――VTRでは、新たな土地に移り住んだお年寄りにも“役割を持ってもらう”ため、「居場所ハウス」という交流の場を作るような取り組みもありましたが、どのようにご覧になりましたか。

対策としてあのような場所を作ることも一案ですが、もともと被災地の方々は、お仕事があったり、家や地域の中での楽しみや役割があったり、とても活発な方が多かったんですね。そういうことをもう一度思い出して、普通の生活のなかで役割を持ってもらう、楽しみを持っていただくような地域づくりというのを考えていただければなと思います。平常時のような「することがある」生活を作ることが大切ですね。

――VTRであったように、「すること」がなくなり生活不活発病になると、本当にわずかな期間で寝たきりになってしまう場合もあるのですね。

本当にすぐですよ。ただ問題なのは、専門家が関与していながらあのようになってしまっているということ。だから、専門家にももっと知識を持ってほしい。あのようになるのは自然経過だと思っていただいては困る。専門家に生活不活発病の対策を聞くと、毎日車いすに乗せていますとか、リハビリを2時間していますなどとおっしゃるのですが、ではそれ以外の時間は何をなさっているんですかと伺うと、この人は何を聞くんだ?みたいな顔になるんです。でも、大事なのは一日の生活の仕方なんですね。だから、ぜひこの機会に広く定着するといいなと思っています。

――視聴者の方にはどのようなことを伝えたいですか。

まずは生活不活発病という病気があることを知っていただきたい。そして、それはなぜ防がなければいけないのかと言うと、充実した楽しい人生を送るためには“生活不活発病になんかにはなっていられない”から。予防・改善の原則は、平常時でも災害時でも充実した楽しい人生を送って自然に体や頭を動かすこと。目的と予防・改善の方法が同じなのです。社会や家庭での役割、楽しみの重要性は当たり前ですが、意外と忘れ去られがちなので、生活不活発病を考えることでそれをもう一度認識していただけたらなと思います。

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