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"赤ちゃん縁組"を知っていますか?:子ども虐待防止世界会議の取材から

2014年09月21日(日)

こんにちは。番組ディレクターです。
9月14日~17日まで、名古屋で行われた『子ども虐待防止世界会議』の取材に行ってきました。現在、私が取材を進めている「新生児特別養子縁組」、通称"赤ちゃん縁組"に関わる興味深い研究発表が行われると聞いたからです。

今、日本では「親が育てられない」という理由で乳児院で暮らす赤ちゃん(0歳~2歳)の数は3千人にも上ります。その内およそ700人は「親と全く交流がない」と報告されています。こうした中、そうした親が育てられない赤ちゃんを乳児院などの《施設》ではなく、なるべく早い時期から《家庭》で育てる「新生児特別養子縁組」が大きな注目を集めています。

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名古屋で行われた『子ども虐待防止世界会議』。
秋篠宮妃紀子さまと次女の佳子さまも参加された。

 


「特別養子縁組」とは、子どもの福祉を目的とする民法の制度です(民法817条)。

貧困など経済的理由、10代の妊娠、性暴力被害による妊娠など様々な事情から産みの親のもとで育てることが難しいとされた6歳未満の子を対象に、育ての親(養親)のもとで育てるために戸籍上も親子(実親)としての関係を作る仕組みです。家庭裁判所が認めれば成立し、戸籍上も「実子」と同じ扱いになります。これを「0歳の新生児の時期」から始めるのが、"赤ちゃん縁組"です。
※「新生児特別養子縁組(通称・赤ちゃん縁組)」についての詳しい情報は、日本財団の『ハッピーゆりかごプロジェクト』のホームページをご覧下さい。

今回、子ども虐待防止世界会議で、ネイサン・A・フォックス教授(米国・メリーランド大学)が発表した内容は「赤ちゃんの成長にとって《親》や《親に代わる特定の存在(養親、里親など)》の大切さ」について、ルーマニアでの長期に渡る研究から科学的に明らかにしたという点で画期的なものでした。


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ルーマニアでの研究結果を発表するフォックス教授。
「子どもの発達」についての専門家。

フォックス教授は、2000年にルーマニア政府の協力を得て、施設で暮らす136人の乳幼児を無作為に選び、半数を「施設に残る通常ケアのグループ」、残りの半数を「里親の家庭に託すグループ」とに分けました。更に第3のグループとして「施設への入所経験がなく、一般家庭で暮らすグループ」を選び、それぞれのグループの身体能力や言語能力、脳の機能、愛着の形成など10の項目を14年もの長期に渡って調べてきました。すると《2歳よりも前に里子になった子ども》の方が、《2歳よりも後に里子になった子ども》に比べて、言語能力、脳派の活動状況、養親に安定した愛着を示すか否かなどの点で良好な結果が出たそうです。フォックス教授は、こうした結果から「脳の発達によって重要な時期(感受期)は、生まれてから2歳ぐらいまでである。この時期に、どのような環境で過ごすが、子どものその後の成長や人格形成に大きな影響をもたらす」と述べています。乳幼児が施設で育つことによる発達への影響については、これまでも多くの研究が発表が行われてきましたが、今回のような大規模な調査によって科学的に実証されたのは初めだと言います。
※なお、「感受期が2歳ぐらいまで」という調査結果はルーマニアの136人の子どもたちのデータの加重平均から導き出されたもので、個人差があります。

 ひるがえって日本では、厚生労働省は2011年に自治体に示した『里親委託ガイドライン』の中で「新生児特別養子縁組」について"有用である"と推奨しているものの、積極的に取り組んでいる自治体は愛知県などごく一部の地域に限られています。番組ディレクターとしては、今後、一人でも多くの子どもたちが「家庭的な環境で育つこと」ができるよう、ルーマニアの事例だけでなく他国の先進研究事例についても調べていきたいと思います。乳幼児期から施設で育った当事者や里親制度や新生児特別養子縁組で育った当事者の方々の声を取材していけたらと考えています。このテーマにご関心のある方は、下記の「コメント欄」や「メールフォーム」を通じて、ご意見やご質問をお送りいただけたらと思います。


日本財団・ハッピーゆりかごプロジェクトのホームページ(NHKのサイトを離れます)

ネイサン・A・フォックス教授(米国・メリーランド大学)のプレゼン資料(※公開が終了になりました)



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