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【出演者感想】湯浅 誠さん「人が伸びるのを邪魔するのではなく、支える教育に」

2013年05月20日(月)

シリーズ 貧困拡大社会
大学は出たけれど…―急増する奨学金の滞納
にご出演の湯浅 誠さんにお話を伺いました。

 

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――収録の感想を教えて下さい。

改めて、日本という国は教育を重視していないなということを認識しましたね。教育を受けられる権利について軽視しているなって思いました。

 

――日本の社会はこれからどうしていくべきだと思いますか。

ひとつは、人として成長したいという気持ちを持っている人を応援する姿勢を社会が持つことだと思います。そして、もうひとつは、そういう気持ちを持つ子は収入の高い家にもいますが、収入の低い家庭にもいるので、収入の低い家の子が諦めなくてもいいようにしなくてはいけないんだということ。
国としては、この2つのことを実現できるようにするための予算や体制を整備していくことが必要なんじゃないでしょうか。

 

――本日の収録の中で“信用”というキーワードを出されていましたけど、
それはどんな意味を込めて?

番組中で投資という言葉が出ましたよね。
確かに投資にはリスクがあるんです。
だから投資というのだと思うんですけれども、
では何に対して投資をするのか、リスクを冒すのか、といったときに、
日本という国は、いろいろあって最後に人が来ちゃうようなところが
あると思うんですが、私はむしろ最初が人ではないかという気がしています。
人こそが投資の対象。その前提となる人に対する信用というものが、
今の社会は弱くなってきてしまっているんじゃないかと思います。

 

――家もあって大学も行けて、今回の内容一般的に報道されている貧困とは
少し違っていると思われるかもしれませんが、
湯浅さんは「共通していることはある」とおっしゃっていましたね。


大学に行けている時点でそこそこ恵まれているじゃないかという意見は
あるかもしれません。
しかし言い換えれば、そういうところで大きな債務を負って、
返せなくてブラックリストに載るといった生活苦を負っている人の事例が
増えているということは従来中間層と呼ばれてきた人たちにも、
生活のリスクがかなり差し迫ったところにきているということなんですね。
大学に行ける層も含めて、今はそうしたリスクがくっついてきている。

 

――今回の放送で、特に視聴者にどんなところを見て欲しいですか?

今日の収録では、かつての奨学金貸付審議会の座長さんが、
「甘やかしちゃいかんのだ」ということを言っていましたよね。
私は、その結果がどうなっているか、というところを見て欲しいと思います。
今、能力を発揮できる状態で働いている人になったのか、
それとも、意欲をそがれた状態で働かざるを得なくなったのか。
少なくともVTRに出てきた大学の非常勤の先生は、後者だったように思います。
生活費も不足していて、学会に行くことも控える。
研究がおろそかになりますよね。そして学生はその先生から教わる。
学生たちも良くない影響を受けるでしょう。
結果的に、みんなを損させることにつながる。

苦労は買ってでもするんだとか、ハングリー精神がなきゃ立派に育たない、
とはよく言われますが、実際のところはそれがどういう帰結を生むかというのを
見て欲しいですね。

私は、今後の教育は、人が伸びるのを邪魔するのではなく、
支える方に向かうべきだと思います。
ただ現実には日本はまだまだ、教育の公的支出の割合が
(国際的に見て)最低ラインであるのを
いかに脱却するかという次元ですけれども。
でもそこからでもまずは始めないといけない。

 

《湯浅 誠さんプロフィール》
社会運動家/反貧困ネットワーク事務局長。
生活困窮者など国内の貧困問題に関する活動に力を入れている。

コメント

私は、日本育英会の奨学金をもらいながら大学に通いました。その当時は、ある特定の職業に就けば返却する必要がありませんでした。そして、その職業に私は就きました。

組織が「日本学生支援機構」と変わり、その実態を少しは知っていたつもりでしたが、今日の番組をみて、厳しい現実を目の当たりにし、何かしなければ、という気持ちになりました。まずは、「間違っているのではないか」という声を上げること、それを広げることから始めたいと思います。

「グローバル化」が叫ばれている中、最も「グローバル化」が遅れているのが、「人を育てる」ということであると、実感しました。

投稿:とらひろ 2013年05月22日(水曜日) 21時10分