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熊本地震 第3回 福祉避難所を活用する

2016年06月07日(火)


20160608_001.jpgWebライターのKです。

これまでの震災と同様に、今回の熊本地震でも、発達障害の子どものいる家族が避難所に入れず、車中泊を続けたり、車いすの男性が、足の踏み場もない避難所に入れず、危険な自宅にとどまったり、避難所での大人のおむつ替えは周囲の迷惑になるからと、介護施設の入所者が倒壊の危険のある施設に戻るなどの事態が見られました。また、要支援者を代わりに見てくれる人がいないために、世話する家族が食料や支援物資を受けとる列に並べないなどの問題も起きました。要支援者に特別に配慮した「福祉避難所」は、今回も切実に求められました。

「福祉避難所」は、阪神・淡路大震災を総括した「災害援助研究会」(厚生労働省 平成7年)で、その必要性が初めて報告されました。公式に福祉避難所が開設されたのは、平成19年の能登地震のときで、同年に発生した新潟県中越沖地震では9か所が開設されました。一定の成果が認められましたが、その後は自治体によって取り組みに差が生じ、全国的には整備が十分進まない中で、東日本大震災が起きました。この震災で高齢者を中心に多くの震災関連死が起きたことを受けて、福祉避難所の重要性が再認識され、平成25年には「災害対策基本法」が改定され、「福祉避難所の指定」「生活相談員の配置」などが義務づけられ、その要件も定められました。

NHK福祉番組班では、福祉避難所に関する自治体へのアンケート調査(2015年12月~2016年1月)を実施しました。対象は首都直下地震の緊急対策区域および南海トラフ地震防災対策推進地域に指定された市区町村923自治体で、熊本県の市町村は含まれていません。しかし、集計結果からは、多くの市町村に共通する福祉避難所の活用に関する課題が見えてきます。

「福祉避難所を指定しているか(1か所以上)」には93%の自治体がイエスと回答しています。多くの市町村で福祉避難所が指定されている実態が明らかになりましたが、一方で要支援者のニーズと合っているのかという問いには、72%が合っていないと答えています。

当事者や関係者が話し合いを始めている自治体は全体の3割にとどまっていて、多くの自治体では要支援者の声を聞くことができていないことや、収容人数の問題などさまざまな課題があることがうかがえます。

また、アンケートでは一般の指定避難所の合理的配慮についても質問しました。「対応職員の配置を決めているのか」という問いには82%が、「配慮スペースを決めているか」では69%が、「視覚・聴覚障害への情報保障を決めているか」という問いには95%が「決めていない」という結果でした。

指定避難所に人員が配置されず、情報伝達などに関する合理的配慮もなされていないということは、要支援者がいることを意識する人間も、配慮できる人間もいない可能性が高くなります。福祉避難所を有効に活用するためには、実は、指定避難所に緊急避難する段階から要支援者を福祉避難所へとつなぐ配慮が必要になりますが、アンケートからはそのような連携ができていないことがうかがえます。

NHKでは、全国の災害時に支援を必要とする在宅暮らしの障害当事者にもアンケートを実施しています(2015年12月~2016年2月)。「避難所に行きますか?」という問いに、行くと答えた人が53%いましたが、「福祉避難所の場所を知っていますか?」という問いに対しては、75%が知らないと答えています。自治体アンケートでは、当事者との話し合いや情報共有ができていないとされていましたが、それは当事者アンケートとも符合しています。

  「災害と障害者」に関する自治体アンケート
  
「障害者と防災」に関する当事者アンケート

熊本市では5月12日現在、70の福祉避難所が開設され、347人の要支援者が避難生活を送っています。震災前には、福祉避難所176か所と協定を結び、1700人の収容を想定していましたが、開設数は4割、避難者は2割にとどまっています。

福祉避難所の活用が進まなかった理由について、市の健康福祉政策課の担当者は、「まだ振り返る時期にはない」としながらも、「被災が想定以上に広域だった」ことが多くの混乱を呼んだとしています。


激甚災害の直後に、すみやかに要支援者を福祉避難所に導くことは容易ではありません。「もともと避難場所の場所を知らされていない」「指定された避難所は遠くて行けなかった」という声も聞かれました。熊本市の「手をつなぐ育成会」によれば、「最初から避難所に行くことなど考えていない」という知的障害者の保護者も多くいるようです。育成会の会員である保護者の8割は高齢者で、周囲に迷惑をかけないことに長年気を遣ってきただけに、自然とそのような考えになると言います



福祉避難所に指定されている高齢者施設に避難できたケースでも課題は生じました。高齢者施設は平時においても入所者や利用者の世話だけで手いっぱいで、人員に余裕があるわけではありません。数名の要支援者とその家族が新たに避難してくるだけでも、対応は厳しくなりました。さらにその職員自身も被災している場合、自分自身の子どもや家族の世話も気にかかります。


緊急時には、揺れが続く中で、水や食料の確保に追われました。着の身着のままで逃げてきた避難者の着替えを用意する必要もありました。断水の中で、感染症が蔓延しないように、衛生面の配慮も求められました。そして、手間暇のかかる食事や排せつの介助。特別養護老人ホームでは「職員が疲弊している。限界だ」という声が聞かれました。また、「医療の専門家は緊急時に組織化されてチームで動いているが、介護の専門家は組織化されていない」と外部からの助力が手薄であることを指摘する職員もいました。 


福祉避難所の役割の大きさは認識されながらも、実際の運用においては、まだ多くの課題が残されているようです。

 

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コメント

熊本学園大学社会福祉学部の学生さん以外はとても復興支援の人手が足りていません。「学生の本分は勉強」ではなく、各大学で3年生ごろから始まる現場実習よりも大切なのが今の福祉避難所や福祉仮設住宅だと思います。
ただし今の福祉系の大学や専門学校では、パソコンのソフトやインターネットで情報を管理出来る技能も身に付けないといけませんし、4年生だけでなく3年生もいわゆる就活で熊本地震の復興支援から離れないといけない学生さんも出ると思われます。
支援活動を支援できる熊本県内の県民同士の相互扶助や共助のような仕組みが不足しているように感じます。

投稿:おかめかめかめ 2016年09月15日(木曜日) 15時37分