――その遅さのしわ寄せが障害者たちに行ってしまうのかもしれませんね。

そう。もっと単純なアイデアっていっぱいあると思うんですよ。たとえば要支援者の名簿をすべての自治体が作るように法律が変わりましたけど、その名簿はちゃんと全国にコピーがあるの？って。ないとダメだと思うんです。だって名簿があるところが流されてしまった場合、何もできなくなるじゃないですか。そこまでちゃんと考えているのかなとか、ほかにも、なんで名簿を作ったときにひとり一人に障害の重さを聞かないのかなとか、いろいろ疑問はあります。そういう小さなことまでなぜ考えないのか不思議なんですよね。日本はいつも何かが起きてから動くんです。そうじゃなくて、もしかしたらこうなるかもしれないという最悪の想定とともに生きるべきですよ。あなただって明日車に轢かれて障害を負うかもしれないじゃない。本当に何が起こるかわからないから、全員が本気で関心を寄せないとダメ。

――関心という意味では、LiLiCoさんが声を大にして「おかしい」と話していたのが、視覚に障害のある夫婦が避難所で物を運んでいるとき、周りの人は誰も手伝ってくれなかったという話でした。

おかしいですよね。なぜ隣の人、見かけた人が助けないのかって。もちろん障害があることがわかりにくい方もいますよ。でも、動きでわかる場合も多いと思うんです。間違えたっていいじゃないですか。妊婦さんですか？　ただ太っているだけですってたまにありますよ。慣れているから大丈夫と言われるかもしれないけど、非常事態が起こったときは助け合うことが一番。そういう小さなことがすべてなのに、なんで知らんぷりするのかなって。最近は大都市だとマンション暮らしの方が多くて、隣に誰が住んでいるかわからない人も多いじゃないですか。でも、もしかしたら隣に寝たきりのおばあちゃんがいるかもしれないし、障害を持っている方がいるかもしれないですよね。なんだかコミュニケーションの大切さがどんどん失われていますよ。私が日本に来てからの28年間だけでもわかる。最近、みんな思いやりが足りない。なんでもっと周りの人のことを気にかけないのかなって。それは時代のせいにはしたくないです。

――まずは身近な人からでいいから、声をかけたり、思いやりを持ったりしてほしいと。

そうですよ。私、スウェーデンには年に2回くらいしか帰らないけど、マンションのエレベーターですれ違ったら「こんにちわ」って声をかけ合いますよ。次の人のためにドアも開けるし。そこが日本は薄れてきているんですよ。おもてなしだと騒いでいる場合じゃない。それよりも思いやりを身に着けなさい。この前、六本木の交差点でカップルの男の人が倒れていて、女の人はなかなか起こせなくて、パニックになっていたんです。私、声をかけて救急車を呼びましたけど、そのときに周りにはいっぱい人が歩いていたんですよ。私が駆けつけるまで誰も声をかけないし、タクシーの運転手さんは倒れている男の人を避けて走っていったんです。いやいや、車から降りて声をかけようよって。だから、障害を持っている方だけじゃなくて、日常からもっとみんなに思いやりを持ってほしい。私がなんで日本に来たかというと、もちろん芸能界に入りたいというのはありましたけど、それ以上に日本人の優しいところが好きだったんです。そのころに戻ってほしいと思いますね。東日本大震災から5年が経って、被害や対策のことをいろいろと考えさせられますが、そこだけじゃなくて、やっぱりほかの人を思いやる気持ちはとても大事だよっていうことを改めて伝えたいですね。