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災害時の高齢者・障害者の避難 「2倍の死亡率」を繰り返さないためには?

2018年03月09日(金)

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東日本大震災から7年。実は、この震災で亡くなった人の6割以上が60歳以上の高齢者でした。さらに障害のある人の死亡率は、住民全体の2倍だったことが分かっています。自力で避難が難しい人が逃げ遅れたことが原因の一つだと考えられています。同じことを繰り返さないためにできることはあるのでしょうか。

熊本地震と災害関連死 第3回 病院の転院による被害の拡大

2017年05月29日(月)

熊本地震と災害関連死 第2回 どのような人たちが災害関連死で亡くなったのか

2017年05月26日(金)

【出演者インタビュー】田村正徳さん「提言・熊本地震の教訓から」

2016年07月11日(月)

20160711_tamura.jpg7月13日放送(7月20日再放送)
シリーズ 熊本地震(7)
 赤ちゃんの“命の砦” NICUからの報告
ご出演の田村正徳さんにメッセージをいただきました。


《田村正徳さんプロフィール》
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター長
日本新生児成育医学会 理事
長年、新生児医療や小児在宅医療の普及に尽力。熊本地震後すぐに熊本入りし、熊本市民病院の被災状況や九州地方の病院への影響について調査を行っている。


――今回の地震で“周産期医療の要”となる熊本市民病院が被災した影響についてどのようにお考えですか?


2008年に東京都で妊婦が「NICUの満床」を理由に入院を断られ、死亡するという痛ましい事件が起こりました(墨東病院事件)。この事件を受けて、厚生労働省はNICUベッドの必要数を「出生数1万人当たり20床」から「出生数1万人当たり25~30床」へと引き上げました。その結果、全国のNICUベッド数は2014年春には「出生数1万人当たり30床」と大幅に改善されました。

しかしその一方、NICUで働く「新生児医の数」は横ばいのため、医師の仕事量が増加し、更に医師希望者が減るという悪循環や地域格差が拡大しているという現実があります。そのような前提の下で今回の震災が起こったため、“熊本の赤ちゃん”を受け入れることになった福岡や鹿児島など県外の病院の労働環境の悪化を心配しています。スタッフたちの労働環境の悪化は、赤ちゃんの“命のリスク”を高めることにつながります。そのため、被災した熊本県内の病院だけではなく県外の病院の支援も極めて重要で、熊本市民病院の新生児医やNICU看護師たちを有効に活用していくことが必要だと思います。

熊本地震 第5回 誰も排除しない「インクルーシブ防災」

2016年06月15日(水)

 

20160614_01.jpgWebライターのKです。

昨年3月、仙台市で開かれた国連防災世界会議で、新たな防災の考え方に注目が集まりました。障害者や高齢者などを含む、あらゆる人の命を支える「インクルーシブ防災」という考え方です。

「インクルーシブ防災」を実現するには、私たちの社会に、障害者、難病患者、要介護の高齢者など、特別な配慮を必要とする人たちが、ともに生活していることを知らなければなりません。障害者や高齢者の中には、ふだん入所施設で暮らしていたり、自宅で介助を受けながら生活していて、地域の人とはほとんど顔を合わせることのない人たちもいます。また、聴覚障害者、内部障害者、発達障害者、アレルギーの子ども、日本語の話せない外国人のように、見た目だけでは、支援を必要とする人とはわからない人たちもいます。相互に交流し合いながら、名簿を作成したり、支援者を組織したり、避難訓練などを行うなどして、意識的に避難のあり方を考えていく必要があります。

また、震災は想定通りのことが起きるわけではありません。今回の熊本地震でも、指定されていた福祉避難所が被災で使えなくなったり、建物があっても余震が恐ろしくて中に入れなかったという事態も生じました。仕方なく、住民が自然発生的に集まった場所に成り行きで身を寄せた人も大勢いました。福祉避難所に限らず、どのような避難場所や避難所にも配慮の必要な人がいるということも心得ておく必要があります。

熊本地震 第4回 災害時に配慮が必要な人とは

2016年06月09日(木)


20160610_001.jpgWebライターのKです。

 

災害時には、地域で暮らすどんな人にどのような配慮をしていくべきなのでしょうか。
平成25年に改定された「災害対策基本法」では、「高齢者、障害者、乳幼児その他特に配慮を要する者」を「要配慮者」と定義し、「国や地方公共団体は、災害の発生や拡大を予防し、要配慮者に対する防災上必要な措置を実施しなければならない」と定めています。

具体的には、「起こった事態を理解できない認知症の高齢者」「周囲の状況が把握しづらい視覚障害者」「サイレンや音声の情報が伝わらない聴覚障害者」「移動に限界のある電動車いす利用者」「人工呼吸器などの医療的ケアを必要とする難病患者」「てんかん発作やパニックを起こしやすい知的障害者」「感覚過敏な発達障害者」「すみやかな移動が難しい妊産婦や乳児」「日本語の理解に乏しい外国人」など、さまざまなケースが考えられます。

なお、そのような要配慮者の中でも、緊急避難の際に、自ら避難することが困難であり、円滑かつ迅速に避難するために支援を要する者のことを「避難行動要支援者」とし、市町村長は、その把握に努めるとともに、生命や身体を災害から保護するために必要な措置を取ることが定められています。東日本大震災では障害者の死亡率は全住民の死亡率の2倍上りました。災害で犠牲になる人を一人でも減らすためには、避難支援者や地域の人たちが「避難行動要支援者」の情報を共有することが重要になります。

熊本地震 第3回 福祉避難所を活用する

2016年06月07日(火)


20160608_001.jpgWebライターのKです。

これまでの震災と同様に、今回の熊本地震でも、発達障害の子どものいる家族が避難所に入れず、車中泊を続けたり、車いすの男性が、足の踏み場もない避難所に入れず、危険な自宅にとどまったり、避難所での大人のおむつ替えは周囲の迷惑になるからと、介護施設の入所者が倒壊の危険のある施設に戻るなどの事態が見られました。また、要支援者を代わりに見てくれる人がいないために、世話する家族が食料や支援物資を受けとる列に並べないなどの問題も起きました。要支援者に特別に配慮した「福祉避難所」は、今回も切実に求められました。

「福祉避難所」は、阪神・淡路大震災を総括した「災害援助研究会」(厚生労働省 平成7年)で、その必要性が初めて報告されました。公式に福祉避難所が開設されたのは、平成19年の能登地震のときで、同年に発生した新潟県中越沖地震では9か所が開設されました。一定の成果が認められましたが、その後は自治体によって取り組みに差が生じ、全国的には整備が十分進まない中で、東日本大震災が起きました。この震災で高齢者を中心に多くの震災関連死が起きたことを受けて、福祉避難所の重要性が再認識され、平成25年には「災害対策基本法」が改定され、「福祉避難所の指定」「生活相談員の配置」などが義務づけられ、その要件も定められました。

熊本地震 第2回 どうやって命を守るのか

2016年06月03日(金)

 

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WebライターのKです。

震災関連死を防ぐためには、どのような工夫が必要とされるでしょうか。

今回の熊本地震の大きな特徴は、度重なる余震の多さにあります。倒壊を恐れて避難所の建物内に入らず、車中泊が多いのは、過去の新潟県中越地震のときと共通します。そして、あのときと同様に、今回もエコノミークラス症候群の患者が報告されています。

エコノミークラス症候群は、飛行機や車の中などで長時間同じ姿勢でいると、足の血液の流れが悪くなり、血栓(血の塊)ができて、それが血管を通じて肺の動脈まで運ばれ、気分が悪くなったり、最悪の場合、血管が詰まって亡くなってしまうというものです。高齢者はとくにリスクが高いとされています。

車中泊だけが原因ではなく、避難所でも体を動かさず、座ってばかりいると発症しやすくなります。また、飲み水が不足して脱水状態になったり、トレイの回数を減らすために水分補給を控えたりすることで、血液が濃縮されて、血栓ができやすくなることも知られています。東日本大震災でも、地震の発生から4か月後までに宮城県内の32か所の避難所で検診したところ、足の血管から血栓が発見された人が190人見つかったという報告があります。