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不登校の子どもをめぐる基礎情報 第5回「学校のオアシス:養護教諭と保健室」

2015年12月11日(金)

WebライターのKです。

学校には登校しても、教室には入っていけない不登校状態にある子どもの「心のオアシス」となっているのが保健室です。今回は、保健室で児童生徒を支援する養護教諭についての基礎情報をお届けします。
 

 
 養護教諭と保健室

子どもの心身の健康管理や保健指導を担当するのが養護教諭です。保健室を訪れる理由は体調不良やケガが主ですが、1980年代以降は心の問題やはっきりとした理由もなく、保健室を訪れる子どもも多くなっています。現在保健室は、医療的な応急措置を行う場所としてだけではなく、子どもたちの居場所としても活用されています。

各学校にひとりはいる保健の先生
養護教諭は、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーとは異なり、各学校に常勤する正規の教員です。9割近い小中学校は、各学校にひとりの単独配置で、一部の大規模校では複数配置されています。

子どもたちにとっての養護教諭
養護教諭もスクールカウンセラー同様に、子どもの学業成績の評価は行わないので、子どもたちには親しみやすい存在です。体調不良やケガをしたときに頼ることになるので、子どもたちは養護教諭に対して、教科の先生とは異なった愛着をもっています。

スクールカウンセラーは毎日学校にいるわけではないし、カウンセリングを大ごとだと考えて避ける子どももいるので、世間話のようにして養護の先生に悩みを相談する子どももいます。養護教諭は本格的な心の悩みは専門家であるスクールカウンセラーに任せていますが、たわいないおしゃべりを通じて、いじめや虐待の兆候を感じ取ったときには、担任と連絡を取り合い、対応します。

 

保健室の利用状況
1校あたりの1日平均の利用者数は小学校25.8人、中学校24.7人。小中学校ともに、女子の利用が男子を上回っています。保健室利用の理由の上位は、小中学校とも「ケガの手当て」と「体調不良」。健康相談の内容としては、小中学校とも「身体症状」「友達との友人関係」がもっとも高く、次いで「漠然とした悩み」「家族との人間関係」が続きます。中学校においては、数は多くありませんが、自傷行為に関する相談もあります。

保健室登校について
「保健室登校」とは、学校にいる間、常時保健室にいるか、特定の授業は受講できても、主として保健室にいる状態を指します。なお、保健室に隣接する相談室などの別室にいても、養護教諭が主に対応している場合は「保健室登校」と言います。

保健室登校を登校と認めるかは、学校長が判断します。小学校で約3割、中学校では約4割の学校に保健室登校の子どもがいるとされています。

保健室登校には、「保健室にくることが多くなった子どもがそのまま教室に行けなくなり、保健室登校となるケース」「不登校だった子どもが再登校する際のステップとして保健室登校するケース」とがあります。いずれにしても、仲の良い友達や学校との関係を切りたくはないが、顔を合わせたくない友達や教師がいたり、集団の圧力を感じる教室にはいきたくないという板挟み状態にあります。

保健室登校が開始される時期は、小学校も中学校も新学期の始まりと夏休み明けが多く、9月~10月がピークになります。保健室登校から教室に復帰する子どもは、小学校では約半数、中学校では約3割です。小中学校とも、教室復帰には約2か月かかっています。

※参照:平成23年度「保健室の利用状況に関する調査報告書」(公益財団法人日本学校保健会)


 

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コメント

 保健室登校と個別級(特別支援級)。
 息子は中学生で個別級に通う自閉っ子ですが、彼が小学校の個別級に通っていた時、ある1人の保護者VS学校という猛烈な戦いが発生しました。要は、保健室登校の子供たちが、個別級に所属を移さずに(普通級に籍を置いたまま)個別級で勉強をしたりするので、①先生1人あたりの子供の数が増え、自分の子供がケアされていない。②頭のクリアな(この言い方が気に障る方は申し訳ありません)保健室登校の子供たちに、おとなしい個別級の子供たちが萎縮して、保健室登校の子供たちによって個別級がリードされているのはおかしい。③個別級の独自に発生する費用を支払わずに、個別の行事に参加するのは不公平だ。とのことでした。
 確かに、普通級に籍を残したままでは、個別級の生徒が増えた扱いにはなりませんので、本来もう1人位先生が増えていいはずだったのに、増えませんでした。それを考えれば、先生の目が常時届かなくなる子が出ていたのは事実です。
 でも、私は、その母親の言うように悪いことばかりではなかったと思います。個別級でポツンとプリント学習をしていた息子は、同じ学年の保健室登校の子が2人来るようになって、3人で図書館で調べ物学習をしたり、算数の問題を誰が一番早く解けるか競争したり。。。普通級では人数が多すぎて中学年までしかついていけなかった息子には良い刺激でした。
 保健室登校の子供たちにも教育を受ける権利はあります。個別級として先生を増やせないのであれば、その時間に空いている先生を1人サポートで増やすとかでもいいので、普通級は入れないけど個別なら入れるのであれば、来ればいいと思います。
 寧ろ、学校にいる間、四六時中自分の子供を見ていてくれないと困る、という親の方が、おかしいと思います。個別とはいっても、そこまで手取り足取りではありません。だったら、エジソンの母親のように、あなたが家で見ればいいでしょ、と思います。

投稿:naoquinha 2016年04月25日(月曜日) 14時48分