不登校の子どもをめぐる基礎情報 第3回「心の支援者:スクールカウンセラー」
2015年12月07日(月)
WebライターのKです。
今回は、不登校の児童生徒に対して、「学校内」で相談業務にあたるスクールカウンセラーをめぐる基礎情報をお届けします。
■スクールカウンセラー |
不登校の児童生徒の多くは、心の悩みを抱えています。「理由のない漠然とした不安」を抱えていたり、「何もやる気がしないという無気力状態」であったり、「友達との気持ちのすれ違い」に苦しんでいたり、「学業の不振」にあせっていたりします。そのような子どもの内面の問題に対応するための「心の専門家」として、1995年から学校に配置されるようになったのがスクールカウンセラーです。学校において学業成績の評価などを行わず、学校の活動にも直接には参加しない第3者的な存在であることが、子どもたちの相談しやすさにつながっています。
○7つの職務:学校全体の「心の専門家」
児童生徒のカウンセリングにとどまらず、子どもの「心の専門家」として教職員や保護者など周辺への研修やアドバイスも行います。
①児童生徒への相談・助言
②教職員へのコンサルテーション(助言・協議・相談)
③教育相談や児童生徒理解に関する研修
④相談者への心理的見立て(アセスメント)と対応
⑤保護者や関係機関との連携
⑥ストレスマネジメント等の予防的対応
⑦学校危機対応における心のケア
○8割以上が臨床心理士の資格をもった非正規職員
児童生徒の臨床心理に関して高度な専門的知識・経験を有するものとされ、現在8割以上のものが臨床心理士の有資格者です。現在スクールカウンセラーは非常勤の職員で、正規の職員ではありません。多くの者が他に本職をもち、兼務していますが、文部科学省は今後正規の職員とするための法整備を進めていく方針です。また、有資格者でなくとも、高等教育を受け、児童生徒の相談業務の経験があり、都道府県や指定都市が認めた者も「準スクールカウンセラー」として採用されています。
○全校配置をめざしているが、現在は地域格差が
2014年度には小学校では1万3800校、中学校では1万校の配置が計画されました。国庫補助率3分の1の事業で、地方自治体の財政事情に合わせた運営が行われています。東京都のように公立学校全校配置が実現した地域もありますが、巡回や拠点校方式にとどまっている自治体もあります。勤務時間も1日3~8時間など格差があるのが実情です。文部科学省は、今後ひとりのカウンセラーが複数校を担当する形で常勤化を進め、勤務形態を統一し、地域格差をなくして全校配置をめざします。
○スクールカウンセラーへの期待は大きい
「不登校に関する実態調査 平成18年度の不登校生徒に関する追跡調査報告書」が、2014年に公表されました。その調査によれば、中学3年生のときに主に受けていた支援は、「学校にいる相談員(スクールカウンセラー等)」34.0%、「学校の先生」29.5%、「病院・診療所」24.1%、「養護教諭」23.6%、「教育支援センター(適応指導教室)」19.7%、「何も利用しなかった」22.5%とあり、スクールカウンセラーなどの相談員の比重はもっとも高くなっています。
また、文部科学省の平成26年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」によれば、再登校できるようになるのに効果のあった取り組みとして、「スクールカウンセラー等による専門的な指導」は複数回答で41.2%と上位に位置づけられています。
(文部科学省 初等中等局教育局 資料)
▼関連ブログ
不登校の子どもをめぐる基礎情報 第1回「定義から考える」
不登校の子どもをめぐる基礎情報 第2回「外部の居場所:教育支援センターとフリースクール」
不登校の子どもをめぐる基礎情報 第4回「専門機関との仲介者:スクールソーシャルワーカー」
不登校の子どもをめぐる基礎情報 第5回「学校のオアシス:養護教諭と保健室」
不登校の子どもをめぐる基礎情報 第6回「進学先としての通信制高校」
▼関連番組
【出演者インタビュー】荻上チキさん「"回復するためにはどうすればいいのか"という目線を大切に」
コメント
※コメントはありません