本文へジャンプ

不登校の子どもをめぐる基礎情報 第1回「定義から考える」

2015年11月09日(月)

WebライターのKです。

“チエノバ”でレギュラー出演している荻上チキさんが、福祉の今を切りとる“チキノめ”!今月から全国で12万人を超える「不登校」の児童生徒がいる現状について、当事者の声を踏まえた調査を進めていきます。その調査に先立って、まずはブログで不登校に関する基礎情報について、お伝えしていくことにいたします。

 

 ■不登校の児童生徒の数について


不登校の児童生徒数が、この2年間で約1万人増加したことが、文部科学省の学校基本調査により明らかになりました。長期欠席の基準が50日から30日に改められた1991年頃から「不登校」は急激に上昇し、2001年度に13万8千人のピークを迎え、その後12万人~13万人を推移し、2007年度以降減少していましたが、再び上昇に転じています。

現在の不登校の児童生徒数は、全国で12万3千人。児童生徒の総数は1001万人で、不登校の子どもの割合は全児童生徒総数の1.21%に当たります。内訳は、小学校は2万6千人(0.39%)、中学校は9万7千人(2.76%)。300人の学校規模ならば、小学校では1人、中学校では8人が不登校になる計算です。学年が上昇するに連れて増えていきますが、小学校から中学校に上がる中学1年生のときに3倍近く急激に増加します。

不登校の児童生徒の割合は都道府県によって多少異なりますが、地域の違いを超えて、全国の学校に同じように見られます。20年近く10万人以上で高止まりを続けていることから、私たちは不登校を特異な現象とは思わなくなっていますが、学校単位で考えれば、学校に数名、学級にひとりなど、その数は限られています。不登校の子は数が少ないだけに目立ち、不登校であることがすぐに周囲に知られてしまいます。長期にわたって不登校を継続する子どもたちから、「周りの目がこわい」「校門に立つと足がすくむ」「自分だけがなぜ不登校に」など、精神的に自分を追いつめるような言葉が聞かれるのは、学校で同じ思いをする人間が少なく、孤立しやすいことにも原因があると考えられます。


20151110_001.PNG

平成26年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(文部科学省)より


 



<参考2>  学年別不登校児童生徒数のグラフ

20151110_002.PNG

平成26年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(文部科学省)より


 

 ■不登校の定義について


文部科学省は、学校基本調査において「理由別長期欠席者」という項目を設けています。さらに、その項目を「病気」「経済的理由」「不登校」「その他」の4種類に分けています。不登校は長期欠席の理由のひとつで、「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるため年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」と定義されています。


一般的に不登校とは、学校に行けない子どもと考えられることが多いですが、その基準が30日間であることから、正確に言えば、「学校に行けない子ども」と「学校を休みがちな子ども」を合わせた数になります。不登校12万3千人のうち、180日以上学校に行かない子どもは1万~2万人と推測されていて、ほとんどは登校と欠席を繰り返す子どもたちです。30日間の欠席は断続的でも継続的でも同じようにカウントされますので、月に3日間だけの欠席でも10か月続けば不登校と判断されます。年間160日登校したとしても、30日間以上の欠席があれば不登校となります。

一方、遅刻や早退を頻繁に繰り返し、実態としては学校不適応の状態にあっても、一日のうち一度は教室や保健室に顔を出すなどして、日数が足りていれば、不登校にはカウントされません。また、教育委員会が設置運営する教育支援センター(適応指導教室)やフリースクールへなどへの通学が校長の判断により出席扱いになれば、不登校とはなりません。さらに医師の診断書があれば「病気」とされますので、実態は不登校であったとしても、不登校とはみなされないケースもあります。 

文部科学省国立教育政策研究所の「不登校・長期欠席を減らそうとしている教育委員会に役立つ施策に関するQ&A」では、学校基本調査の不登校の定義に加えて、「欠席日数+保健室等登校日数+(遅刻早退日数÷2)」という基準を設け、30日以上は「不登校相当」、15日以上30日未満を「準不登校」としています。学校基本調査の定義にこだわることなく、不登校傾向にあるより多くの子どもたちをすべて支援できるように、実態に即したとらえ方をすることを提案しています。

 

※理由別長期欠席者の4項目(文部科学省)

「病 気」:心身の故障やケガなどで入院、通院、自宅療養のため長期欠席した者。自宅療養については、原則として、医師の指示や診断書の有無で判断されるが、本人の周囲の者が適切と判断した場合も含む。
「経済的理由」: 家計が苦しく教育費が出せない、本人が働いて家計を助けているなどの理由で、長期欠席した者。 
「不登校」 :「病気」や「経済的理由」以外の何かしらの理由で、登校しない(できない)ことにより欠席した者。
「その他」:「病気」「経済的理由」「不登校」のいずれにも該当しない理由により長期欠席した者。(例:保護者の教育への考え方や無理解・無関心など家庭の事情。外国での長期滞在、国内外への旅行等。「病気」と「不登校」など、欠席理由が2つ以上あり、主たる理由が特定できない)




▼関連ブログ 不登校の子どもをめぐる基礎情報
 第2回「外部の居場所:教育支援センターとフリースクール」
 第3回「心の支援者:スクールカウンセラー」
 第4回「専門機関との仲介者:スクールソーシャルワーカー」
 第5回「学校のオアシス:養護教諭と保健室」
 第6回「進学先としての通信制高校」


▼関連番組
   2015年9月24日放送 チキノめ「不登校の子どもたちは今」
 【出演者インタビュー】荻上チキさん「"回復するためにはどうすればいいのか"という目線を大切に」

 

コメント

私はもうすぐで高校3年生になります。
中学2年生の終わり頃に、暴言や睨み、無視、悪口を言われたりされたりし、心がとても苦しくなり、時々休んでは登校を繰り返し、3年生になった時には不登校でした。毎日親に泣きながら学校に行ってと言われるのは本当に苦痛で苦しかったです。副担任が別室の子を見たりする先生で、私は別室登校をするようになりました。周りの声がとても怖くて、いつも生徒の声が聞こえると別室に置かれていたソファの後ろに隠れて耳を塞いでいた自分を思い出します。辛くて病みに病みまくっていたので、今でも自殺願望はのきません。不登校だから楽をしている。そんなことありません。不登校でも家の状態で、追い出されたり殴られたり暴言を言われたりと、本当に家も学校も居場所がなく泣いてばかりでした。でも不登校期間があったおかげで、同い年の子より、精神年齢が上だとよく言われます。過去の自分に感謝してます。

投稿:つあ 2016年02月01日(月曜日) 02時33分

私は中学校の2年の3学期から卒業するまでいじめられて保健室登校や職員室登校をしてきたんですが、母は何にも知ろうともしてくれませんでした。
授業などは、空いている先生が教えてくれたり体育は皆とは無理だから先生とバトミントンや卓球をしたりしました。
時には友達のお母さんが学校に出向いてくださり勉強を見てくれたり
給食を一緒に食べてくれたりしました。
私は先生にも恵まれていました。
先生に恵まれなかったら保健室登校や職員室登校はしてませんでした。

投稿:ラザニア 2016年01月28日(木曜日) 23時46分

私の娘は 現在中学生2年生ですが 発達障害が有り
他人とのコミュニケーションが苦手で
不登校が続いています。

スクールカウンセラーとの面談
適応教室訪問アドバイザーの協力を受け
適応教室への通室を考えています。

しかし 本人に通う意思がなければ
そこも 難しいでしょう…。

兎に角 教育現場から離れてしまわない様に
毎日 綱渡り状態です。

フリースクールや適応教室への通室も
義務教育家庭を修了すると言う法案が成立しようと
していますが まだまだ 壁が有ります。

不登校の原因は個々に違いますが
本当に辛いのは子供達です。家庭調査を含め
もっと 理解を深める必要が有ると思います。

不登校の子供を抱える家庭が教育現場に求める
声をもっと拾って頂きたいと思います。

投稿:mi-ko 2015年11月13日(金曜日) 13時17分