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【出演者インタビュー】安原美佐子さん「紛争によって障害者になり、劣悪な環境の中で国に帰れない人たちがいる」

2016年08月01日(月)

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『シリア難民であり障害者である私たち』
にご出演された安原美佐子さんにメッセージをいただきました。


 

 

《安原美佐子さんプロフィール》
自立生活センター職員。当事者の立場からシリア難民障害者のリーダー育成に取り組む。



――ヨルダンでのピアカウンセリングでは、どのようなことをされているのですか。

 

障害者同士で集まって、自分の障害についてどう思っているのかとか、今はどうなの?しんどいことはない?というようなことを聞き合う活動をしています。実際、私がヨルダンに行って聞きたかったのは、障害を負ったことをどう思っているの?ということです。私はもともと障害を持って生まれてきたけど、戦争で障害を負った人たちは、いきなり人生が変わってしまうわけですよね。その状況を本当に受け止められているのかということを親身になって聞いています。そうやってお互いに支え合いながら、でも生きているっていいよねとか、しんどいけど生きていたらいいことあるよな、というように、地道に内面を変えていくというか、内面を見出していく活動をしています。

――その活動によってどのようなことを期待していますか。

 

自分の経験で言うと、私は障害を持っていることを始めは不幸だと思っていました。でも、そうは言っても毎日を歩んでいかないといけないわけで。そのなかで「ほんまは嫌やねん」とか、「小さいと言われるのが悔しいねん」という思いを聞いてもらえる場所、出せる場所というのは、すごく清々しかったんです。だから、ピアカウンセリングを通して目の前の人が「困っている」とか「しんどい」という思いを少しずつ出しながら心に変化が見られると、ここにいてよかったなと思いますね。私自身も障害を前向きに考えられるようになるまでには時間がかかったし、いろんな人に支えてもらったからそう考えられるようになったので、ピアカウンセリングを通して支え合いを続ける意味というのは必ずあると思っています。

 

――シリア難民の支援を始ようと思ったきっかけはあるのでしょうか。

 

JICAの人から支援活動をしてみないかと声をかけていただいたんです。それまでは難民に会うとか、戦争で障害を負った人に会う機会がなくて、そういう人にもピアカウンセリングは効果あるのだろうかとすごく興味を持ちました。行ってみるとやっぱり文化が違うので、日本人はなかなか自己主張をしないけど、向こうの人たちは結構言ってくるんですよ。そういう文化や表現の違いがわかるとおもしろいですね。行ってよかったと思っています。

 

――難民キャンプにも行かれたのですか。

 

難民キャンプには行っていないですが、行ってみたいですね。私がヨルダンのアンマンで出会った方々は、ある意味、選抜された人たちなので、比較的落ち着いている人が多いんです。でも、きっと難民キャンプにはひとりで苦しんでいる人とか、障害を負って精神的にも荒れている人がいると思うんですよね。

 

――現地での障害者の立場はどうですか。

 

私たちは介護者を連れていたり、わりと良い車いすに乗っていたりするので、驚かれます。それで私が「国の社会保障のなかにそういう制度があるんだよ」と言うと、ひとりの男性が「僕たちはその政府によって障害者にさせられたんだ」と怒りだしたんです。そのときは大きな衝撃を受けました。でも、彼らにもいつかシリアに戻りたいという気持ちはあるし、シリアが復興していくなかで障害者というのはパイオニアになれる存在だと思うんですよ。多くの障害者がいるわけですから、そういう人たちが復興していくなかで意見を言ったり、社会保障を求めていったりすることで、いい方向へ変わっていくはず。先はまだまだ長い道のりかもしれないけど、彼らの国へ戻りたいという夢を実現する一役を担えたらうれしいですね。

 

――現状は、支援がなかなか行き届いていないのでしょうか。

 

今はお金持ちの人が少し支援してくれているだけなので、必ず支援を受けられるわけじゃなく、運に左右されてしまうんです。それと今思い出したのが、ピアカウンセリングに来られるのはだいたい一般の市民の方たちなんですけど、なかには政府軍や反政府軍の人もいるんです。もちろん本人たちはそれを黙っているんですけど、本当は戦っていた間柄なのに、障害者という同じ立場になり、今はお互いに話合っているんです。すごいことだなと感じました。

 

――番組を通して視聴者の方にはどのようなことを感じてほしいですか。

 

難民の障害者と出会うことはなかなかないし、そういう話はあまりニュースにも出てきません。でも、紛争によって障害者になって、劣悪な環境の中でなかなか国に帰れない人がいる。そして、そういう状況でも必死に生きている人がいる。だから、私も正解はよくわからないけど、でもやっぱり考え続けることが大切だし、みなさんも他人事だと思わずに、紛争って何だろうとかとか、生きるってなんだろうということに興味関心を持ってもらえたらいいなと思います。

コメント

難民の中にも障害者の方がいらっしゃる、というのは考えてみれば当たり前の事ですが、自分にとっては盲点でした。テレビでは難民の方々が、世界の様々な国へ必死で逃れる姿が比較的多く映り、その印象が強かったからだと思います。

(番組は見れていないのですが)安原さんが自分にとって貴重な事実をお教え下さり、今後、難民問題を考えるにあたって新しい軸ができた事に感謝します。

投稿:Jeremiah 2017年09月10日(日曜日) 00時49分