難病カフェ 第4回 難病患者のイメージを明るくしたい
2017年03月03日(金)
- 投稿者:web担当
- カテゴリ:Connect-“多様性”の現場から
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▼ みんながアミーゴになるために
▼ 難病患者らしいユニークなカルタが続々
▼ 若い世代のための明るい居場所づくり
前回のブログ:第3回 難病をオープンにして暮らせる社会を
Webライターの木下です。
第4回は茨城県の「難病カフェ アミーゴ」の活動についてです。
茨城県で「難病カフェ アミーゴ」を企画したのは、多発性硬化症患者の桑野あゆみさんと、クローン病患者の吉川祐一さん。「アミーゴ」とはスペイン語で「友達」という意味です。難病患者や家族が気楽に集えるように、難病川柳大会、カラオケ大会、今年の一文字習字大会など、飛び込みでも参加自由の楽しいイベントを企画し、新しい仲間たちに出会いの場を提供しています。
代表の桑野あゆみさん(左)と副代表の吉川祐一さん(右)
二人が難病カフェを始めたのは、同じ病気の仲間による患者会とは別に、病気以外の生活上の悩みや日々の思いなどを語り合える場所がほしかったからです。お二人とも自分の疾患の患者会を運営する立場でもありますが、病気の種別を超えることで、より多くの仲間が得やすくなるという期待があります。
今回は、1月22日に開催された難病カフェを取材させていただきました。会場は水戸市福祉ボランティア会館。月ごとに水戸市とつくば市が交互に会場になります。会は、昨年の5月から毎月欠かさず開催され、今回で9回目となります。その日の活動はカルタづくり。自分たちの日ごろの思いをカルタにして、共有しようという試みです。参加者が好きなひらがなを順に選んで、読み札を作り、その文言に合わせた絵札を創作します。毎回このような打ち解けやすいワークショップで参加者の気持ちをほぐします。
カルタづくりは、みなさん初めてでしたが、次から次へと手が上がって、当事者ならではの体験や気持ちが反映された、ユニークなカルタが続々でき上がりました。難病のことはどれほど仲の良い友達でも理解してもらうことは難しいと言います。それだけに、ふだんの心の中のつぶやきが言葉となってあふれます。
「あ あっ!!保険証忘れた」
「か カーテンを開けて相部屋交流」
「く 薬でお腹いっぱいになる」
「そ 空見上げ、つらいときでも前向きに」
「た ただいまと病院の前でつぶやいてしまう」
「て できること減ったり増えたり」
「ぬ 塗り薬一人でぬるのが大変だ」
「わ 笑うとひびくオペの傷」
絵札に関しては、桑野さんの娘さんたちも強力な助っ人として活躍してくれました。
当初参加者は十数人でしたが、新聞などで紹介されると30人以上が詰めかけ、定員オーバーになってしまう月もありました。「誰ともつながれず、寂しい思いをしている若い人が意外と多くいて、病気の種別にかかわらず、共通の悩みがあることに気づかされました」と桑野さん。
古くからある多くの患者会は、初期の運営メンバーがそのまま繰り上がって、高齢化が目立つようになっています。そのために若い世代の参加が減っています。さらに、若い人たちは病気に関する情報はインターネットで容易に入手できるために、患者会に参加する動機が薄れています。しかし、求めているのは、情報交換だけではなく、むしろ気持ちの交流です。お医者さんを講師として招いて、病気に関する勉強会を開くような会だけでは、若い人たちは満足しません。そこで病気の種別をとっぱらい、遊びの要素を取り入れた、現在のようなカフェ形式になりました。
「ここに参加する人は、勉強や議論をしたいわけではないと思うのです。心を柔らかくして、グチを言い合えるような相手を探しにきているのです。だから、できるだけ楽しく、誰もが参加できるような活動メニューを、毎回知恵を絞ってみんなで準備します。ふだんは話しづらいことでも、ここなら話せる、そんなスペースを作りたいと思っています」と吉川さん。
「難病っていうと、とても重々しいものと思ってしまうじゃないですか。でも、そのイメージのせいで企業が雇用してくれなくなったり、一般の人たちに偏見をもたれたりしてしまうと思うのです。特別なことは何もしてくれなくていいのです。それよりも難病があってもみんなふつうの人間なのだと社会が気づいてくれたら、それが一番ありがたいです」と桑野さん。
2月の難病カフェでは、このカルタを使った、カルタ大会を開催します。
カルタづくりが終わった後には、サイコロを振ってその目に合わせて定められた話題について話すフリートークの時間となりました。「子どもの頃になりたかったのは」「最近感動したことは」「自宅ではどんな雑煮を食べますか」「年末年始の思い出」「もし治ったら一番最初にしたいこと」など、たわいないけれど、本人のキャラクターを知るのにふさわしい問いが並べられていました。難病患者の話題は病気のことに限らない。そんな当たり前のことが新鮮に感じられました。ちなみに代表の桑野さんが小さい頃になりたかったのは、地域で乳酸飲料を配るおばさんだそうです。
木下 真
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