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命に線引きする時代を考える 中編

2016年02月18日(木)

WebライターのKです。

日本の重症心身障害児者の数は年々増加し、現在約4万3000人と推計されています。施設から地域へという現在の障害者福祉の流れの中で、施設が人数の増加に見合うように増設されることは少なく、現在約2万4000人が在宅生活を送っています。

びわこ学園法人事務局の松本哲さんは、「医療の高度化によって重症児者の数は年々増えていますが、既存の施設はそれまでの入所者が高齢化し、新たに受け入れる余地はないのが現状です」と話します。滋賀県では施設やグループホームへの入所待ちは80~90人に及び、超重度であっても入所できない人は、自宅で医療的ケアを受けながら通所施設を利用するか、他県の受け入れ余地のある施設に入所していると言います。


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びわこ学園法人事務局・松本哲さん

 

滋賀県内の現状は、そのまま全国に重なります。横浜市から来ていた療育医療センターの職員は、横浜市の施設はどこも満床状態で、800人を超える入所待ちがあり、新たな施設を立ち上げることになったと話していました。

びわこ学園では、「施設から地域へ」という考え方は尊重しつつも、支援のシステムも整備しないままに、地域に任せようとすれば、家族に大きな介護負担がかかることになることを懸念しています。創設時から地域との連携を重んじてきたびわこ学園では、施設か地域かの2者択一ではなく、施設の専門性を地域に還元し、双方の力を活かしながら社会全体で支える仕組みづくりを拡げていくべきだと考えています。

びわこ学園で実施された第35回実践研究発表会では、地域との連携を視野に入れた三つの分科会が実施されました。各テーマは、第一分科会「医療ニーズの高い利用者のいのちと暮らしを支える」、第二分科会「生活をゆたかに ~日中活動支援」、第三分科会「びわこ学園における専門的支援」。びわこ学園には、福祉医療センター以外に、びわこ学園障害者支援センター、知的障害児者地域生活支援センターなど、地域で暮らす人の生活支援や相談支援を行うための拠点もあり、そこでの実践の様子などが報告されました。


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びわこ学園の相談支援員・増野隼人さんの第三分科会での報告。

 

地域で暮らす重症児者を支えるのには、本人を中心に据えて考えることが大切だと言います。例えば、胃ろうや気管切開などによって医療度が高くなったとしても、本人の身体的苦痛が軽減され、家族とのコミュニケーションが増した例が、第一分科会では報告されました。本人の心身が安定に向かうことは、家族の心理的負担の軽減にもつながり、「ふつうの暮らし」に必要な「生活」「余暇」「いきがい」を求める余裕も出てきます。

第二分科会では、暮らしに大切な要素としての日中活動への支援が報告されました。地域のイベントなどに参加することで、本人だけでなく家族の生活にも広がりが生まれ、地域の人々の障害者への理解も進みます。

第三分科会では、家族や保育園への相談支援について報告されました。専門家が介入しながらも、家庭における子育ての喜びや親子の関係づくりを奪うことのないように、保育園や教育機関での友達づくりや行事への参加を大切にしながら、互いの立場を尊重するバランスよい支援のあり方が報告されました。

重症児者の増加は、喫緊に対応が求められる課題ではありますが、関係機関や地域との連携によって、状況を改善していくことが可能であることが具体的な事例でさまざまに示されました。児玉さんの講演会で紹介されたように、重症児者の存在そのものを問題視するような社会の流れが生まれてこようとしているだけに、社会の負担の側面だけではなく、支援のノウハウをもつ社会の豊かさについても改めて目を向けるべきだと思いました。


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横浜療育医療センターの職員のみなさん。
医療福祉センターの新たな開設に向けて、
びわこ学園の試みを参考にしたいと会に参加しました。

  

後編では、びわこ学園の視察の様子をご紹介しますので、続けてお読みください。



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