美大生と障害者がアートで地域を変えていく 後編
2016年01月08日(金)
- 投稿者:web担当
- カテゴリ:Connect-“多様性”の現場から
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WebライターのKです。
小平市の障害者週間のイベントに関して、作業所の障害者の方にも話をうかがいました。
柳原昭三さんは、1954年生まれの61歳。1974年に東京都小平養護学校高等部を卒業してから、市内の作業所で働くようになりました。柳原さんは、知的な障害はありませんが、脳性まひのせいで手足が不自由で、言語障害もあります。周囲の人々とは、パソコン画面に示す文字や指の動きを文字として相手に読んでもらったりして、コミュニケーションを取っています。
柳原昭三さん。絵画にはそのときの素直な気持ちを言葉で添えます。
柳原さんは、小平市の「障害者週間のつどい実行委員長」をこれまで12年間務めてきました。武蔵野美術大学がかかわる以前から、自分たちの存在をアピールするための場として、アート展を大切に考えてきました。会の運営も細かく見守っていて、今回も学生が制作したカタログの背表紙のタイトルの文字が、「異才たち」ではなく「異彩たち」になっていると、誤植に気づいたのは柳原さんでした。
その柳原さんは、今年の障害者週間のイベントには大満足していると言います。「学生が本当にいろいろなことをやってくれて、うれしかった。今年は外に向かってちゃんとアピールできた。スケジュール通りに計画を進めてくれたのもとてもよかった」と学生たちに感謝しています。
養護学校を出て作業所で働き始めると、自宅と作業所との往復だけの生活になりがちです。作業所は介助になれたスタッフが面倒をみてくれるので居心地が良い場所です。それで気がつくと同じ市内であっても「作業所以外の場所には行けない、行ってはいけない」と思う人も出てきます。しかし、柳原さんは、外部のイベントに積極的に参加し、最近はブログで日々の思いを発信していくなど、作業所の外の世界との交流に熱心です。
実は、柳原さんは、16年前から詩を書くのが好きになり、すでに2冊の詩集を本にしています。その詩集を見せてもらいながら、「アート展や詩集の出版で、どんなことを世に伝えたいのですか」とたずねると、不自由な手で詩集のもくじの中のある1篇の詩を指さしてくれました
柳原さんが示してくれた詩が収められている詩集『ぼくの世界へようこそ 2』
「障害者も普通の人間だよ」
障害者は、特別な人間ではないよ
普通の人間だよ
重度障害者に 生まれて いつも周りには
家族
障害者の仲間
養護学校の先生
施設関係者
しかいないよ
普通にいろんな人と 出会いたい
いろんな人と 友達になりたい
いろんな話をして 楽しい時を過ごしたい
作業所と家の往復
休みの日も家にいて
現実はなかなか いろんな人と
出会うきっかけは ほとんどない
自分は いろんなところに出て
人に出会えることを
楽しみにして 出会っている
嬉しい
僕にとっては 友達は宝物だよ
学生メンバーの丸山絵梨子さん(左)と海宝法子さん(右)
アート展をやる度に若い友達が増えていきます。
大勢の人が集まる場での“人間ウォッチング”が大好きだという柳原さん。自分に優しくしてくれる人に心の中で感謝するだけでなく、「ありがとうを伝えることが大切だ」と思っています。詩や絵画や書はそのための手段のひとつです。「障害者週間のつどい実行委員長」は、また来年、新しい学生たちと知り合うことを楽しみにしています。そして、より多くの市民がアート展に関心をもってくれることを期待しています。
「あさやけ風の作業所」。柳原さんはこの部屋で仕事をしています。
「あさやけ風の作業所」には「CAZE CAFÉ」というオープンテラスの喫茶店があります。作業所のメンバーによる手作りのスコーンやホットケーキなどを販売していて、近くの遊歩道を散歩する人などが立ち寄ります。障害者と地域の人との触れ合いを大切にした運営を心がけています。
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