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発達性協調運動障害の子どもたち【前編】

2015年09月28日(月)

WebライターのKです。

「極端な不器用さ」に悩む発達性協調運動障害(DCD)のお子さんの療育の様子を取材するために、兵庫県立リハビリテ―ション中央病院「子どもの睡眠と発達医療センター」の小児リハビリテーション室にやってきました。

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小児科医の中井昭夫さんと作業療法士の若林秀昭さん。



午後1時から作業療法を受けるのは、小学2年生のT君です。手先の細かい作業をしたり、ボール遊びをしたり、トランポリンで跳ねたり、今日は鉄棒の逆上がりにも挑戦しています。「学校に来るよりも、楽しい」と笑うT君。お母さんに障害に気づいたきっかけから、現在に至るまでを振り返っていただきました。
 

【母親の話】
最初に気がついたのは、1歳のときでした。玄関のたった1段の段差を降りるのに、一度座ってお尻を床についてから降りるのを見て、「ふつうの子とちょっと違うな」と感じていました。その後も階段は苦手で、必ず手すりにつかまって、おそるおそる降りていました。エスカレーターは、乗るのも降りるのも、タイミングをはかりかねて大騒ぎです。人が見ると、何気ない行為であっても、うちの子どもは真剣そのもの、すごい努力をしているのです。

 

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T君のお母さんは、お風呂で洗面器の水をどうしてもうまく頭にかけられない息子の様子が愛おしくて、漫画にしていました。


 

4歳のとき、たまたまラジオ体操をしている様子を見ていたら、真似しようと思ってできないぐらい手足の動きがばらばらで、そのときに受診を決意しました。
最初の病院では小児科から小児整形に回され、「別に問題ないです。お母さんの心配しすぎじゃないですか?」と言われてしまいました。数年前までは、発達の専門医師であっても「発達性協調運動障害(DCD)」という診断名を知らない先生がほとんどでした。どうしたらわかってもらえるのか、本当に悩みました。後に、私はたまたま知り合いの医師から、その診断名を教えてもらったので、自ら医師に告げるようにしました。それでも、「それって何ですか?」と言われてきました。

いろいろな医療機関を受診して、最後に訪れた兵庫県立リハビリテ―ション中央病院「子どもの睡眠と発達医療センター」の初診のときに、小西行郎センター長に、「これはDCDですね」と即座に言われました。やっと自分から言わなくても、DCDを知っている先生と出会えたと、心からうれしかったことを覚えています。そして、現在は、その後赴任された、DCDの専門家である中井先生に診ていただけるようになりました。初めて受診することを決意してから、すでに1年半。幼児期からの療育が重要ですから、この長い空白の時間については、いまでも本当に悔しく思っています。

 

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小児科医の中井昭夫さん。発達性協調運動障害の啓発や研究を進めたいと考えています。



中井さんによると、日本の小児科医の間で発達性協調運動障害の認知が本当に高まるようになったのは、2013年の第110回日本小児精神神経学会のメインテーマを「子どもの不器用さとその心理的影響~発達性協調運動障害を中心に~」にしたことがきっかけだったと言います。ほんの2年前のことです。
T君は発達性協調運動障害以外には、発達に関して何の問題もありません。「日本ではそのような子どもが受診から療育までつながることはまだまだ少ないです。子どもが不器用、運動音痴という理由だけで医療機関を受診する保護者は、ほとんどいないからです」と中井さんは言います。

不器用さや運動ができないことを大人は軽く見ているかもしれませんが、本人にとっては大変きついプレッシャーになります。運動の優劣や不器用さはいわゆる教科と違って、子どもが見ても明らかです。体育で悪い見本として他の子どもの前にさらされ、自尊心を深く傷つけられる子どももいます。T君の母親が病院に連れてきたのは、自分の子どもには、そのような二次的なコンプレックスをはねのけてほしかったからです。
「ここは子どもたちにできないことを強いる場ではなく、スモールステップを踏んで、できることで終わり、達成感を味わって帰ってもらう場です」と、子どもたちの療育を担当する作業療法士の若林さんは話します。「気持ちの上で、運動の得意な子どもに負けてほしくないと思っています」と、子どもたちにエールを送ります。

Webライターの私が母親と話し込んでいると、T君がうれしそうに「いま逆上がりできたよ。見てた!」と満面の笑顔で母親のところに近づいてきました。1年生のときには、体育の縄跳びの授業に行きたくないと、玄関で泣き崩れていたT君ですが、いまはクラスの友だちからも応援されることが多くなったと言います。

 

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苦手な子どもの多い鉄棒の逆上がり。補助ベルトをつけて難易度を緩和します。そして、最後は補助ベルトなしでもできるようにします。

発達性協調運動障害の子どもたち【後篇】、に続きます。

 

▼関連ブログ
  「不器用な子どもたち」に理解と支援を
 

コメント

はじめまして私は、発達性協調性運動障害を持つ4歳の孫の祖母です。家の孫も発達障害は、有るもののグレー状態ですとしか言って貰えず、あっちこち病院で検査してもらい3歳に成ってからやっとはっきりした障害名が解りました発達支援施設では、○ ○ちゃんは何でもできる子だからと何度も言われ本当は、出来ないのに出来ると言われることが不安につながり保育園処か支援施設にも通所出来なくなりました。今は毛呂町にある光の家でリハビリを受けごく一部ですが出来なかった事が出来るように成って来てます。埼玉県に住んで居るのですが児童相談所にも行って相談所して検査して貰ったのですが見つけて貰えず、不器用さと不安が強く保育園にも行けないもうすぐ五歳になるのですがおトイレも声かけしてあげないと自分で行けない自分に自信が持てずなかなか前向きな行動が取れない状態です孫の母親も知的障害と重度解離障害を持っていて適切な子育てが出来ないのでやむおえず祖母である私がしています。世間的には母親でなく祖母が子育てをしている事に冷たい目で見られることも有ります。孫と同じような障害を持つ子供が生活しやすい環境が早くできれば良いなと思います。孫の他にも同じような障害で頑張っている起こさんとお母さんがいることを知りはげみに成りました。ありがとうございます。

投稿:かかかしゃん 2017年03月28日(火曜日) 11時35分