本文へジャンプ

【変わる障害者雇用】第9回 当事者から生きる知恵を学ぶ「リカバリーカフェ」

2015年08月20日(木)

WebライターのKです。

 

8月16日、東京都の国分寺市で開催された精神障害の当事者が参加する「リカバリーカフェ」にお邪魔しました。主催は精神障害者の社会参加や就労を応援する「リカバリーキャラバン隊」。参加者は、就労している精神障害の方々が中心で、仕事や生活上の悩みについてお茶を飲みながら、気楽に話し合います。
 

 

20150820_001_R.JPG

「リカバリーカフェ」のコーディネーターの中原さとみさん。

 

司会役は、桜ヶ丘記念病院の精神保健福祉士で、リカバリーキャラバン隊事務局長でもある中原さとみさん。「精神障害がありながらも充実した人生を送られている方たちの体験は貴重な社会資源。その体験を共有し、伝達していくことで、当事者はもちろんのこと、社会全体が大きな財産を得ることになる」と言います。カフェには、当事者だけではなく、関心のある人は誰でも自由に参加することができます。

 

 

20150820_002_R.JPG

 

リカバリーカフェは公民館の和室で毎月1回開かれる小さな会合で、今回の参加者は20人ほどでした。精神障害の内容は、統合失調症、双極性障害、うつ病、PTSDとさまざまですが、病気がありながらも幸せな生活を取り戻したいという思いは共通しています。

 

「職場で仕事が遅いと言われる」という悩みには、「速度を無理に速めようとするよりも、逆に気持ちを落ち着けて、ミスや無駄をなくす方が結果的に仕事のスピードは上がります」という答えが返ってきました。「どうやって体力をつけたらいいのか」という問いかけには、「自分は水泳で体力を回復させました」「体の力みが体力を奪っていることもあるので、ストレッチでこわばりを取るのがいい」「薬を減らすことを試みる」「仕事の体力は同じ環境で自分を保つことなので、運動の体力とは異なる工夫が必要」など、さまざまな答えが返ってきて、みんな同じような悩みをもっていることがわかります。
 

 

20150820_003_R.JPG


参加者の年齢も、現在の仕事もさまざまです。参加者のひとりの関村友一さんは、神奈川県横須賀市で社会保険労務士の仕事をしています。慶應義塾大学在学中に統合失調症を発症し、一時は入院も余儀なくされましたが、30歳を過ぎた頃に自分に合う薬が処方されるようになり、通常の暮らしができるまでに回復しました。年金問題に積極的に取り組んでいると自己紹介をすると、「障害年金のことを教えてほしい」と、さっそく参加者から相談を受けました。

 

東京都稲城市の岡本さやかさんは、元郵便局員でPTSDの他、生まれつきの視覚障害もあります。リカバリーキャラバン隊の設立時からのメンバーで、他の障害者の支援をすることに生きがいを見出し、全国を旅するのがうれしいと言います。「いくら遅咲きの桜でも、咲かない桜の花はない」という父親の言葉を大切にしています。


今回初めて参加したという男性は、「お医者さんは病気の相談には乗ってくれますが、仕事をどうやって見つけたらいいのか、生活していく上での困りごとにはあまりアドバイスをしてくれません。だから、こういう場所は大変貴重だと思って、やってきました」と話していました。

 

今回、取材者として感じたのは、精神障害の方たちは、投薬の副作用との折り合いをつけるのに苦労しているということでした。「ぼーっとしてしまう」「ろれつが回らなくなる」「のどが渇く」「手が震える」。それは精神障害そのものの症状ではないのですが、事業主に誤解を与えてしまうこともあるだろうと思いました。ある参加者の女性は、さまざまな症状に関しての誤解を避けるために、「私の取り扱い説明書」というものを作って、あらかじめ渡しておくという就労の知恵を披露してくれました。

 

ここに参加している人たちは、大きな挫折を味わい、一度は幸せな人生をあきらめかけた経験をもつ人たちです。しかし、いまは病気になる前と同じような人生を取り戻したいと思っています。手にしたい幸せは、「子どもから“お母さん”と呼ばれること」だったり、「働いたお金で家族と外食を楽しむこと」だったり、「朝起きて会社に通勤する」ことだったり、「テレビドラマにわくわくする」ことだったり、「電車の窓から見る景色をいいなと思う」ことだったりという、誰もが当たり前に味わうささやかな幸せです。

 

最後に、事務局長の中原さんは、「社会とのつながりを保つということが、人を前向きに元気にしてくれます。みんないろいろな生きる知恵を身につけて、人生について深く考えていますから、ここで学ぶものは、障害のあるなしに関わらず、たくさんあると思っています」と話してくれました。

 

【関連記事】

 

コメント

はじめまして。私は高次脳機能障害52歳男性です。病気を発症して11年になります。この11年記憶が余りありません。すぐに忘れる、わからなくなります。暴言を吐く、暴力を振るう、3社辞めました。長く継続出来ません。すみません。また書きます。

投稿:シオちゃん 2018年01月23日(火曜日) 07時37分

私もリカバリーカフェに参加した事があります。オープンで働いていて、その悩みを聞いてもらってよかったです。合理的配慮の求め方というセミナーにも参加しました。病気になると孤立しがちで就労に関する情報が入ってきませんが、こうゆう場があると情報交換ができていいです。

投稿:PAKA 2015年08月22日(土曜日) 19時04分