「ネット型非行」を防止するサイバーパトロール
2015年08月04日(火)
- 投稿者:web担当
- カテゴリ:Connect-“多様性”の現場から
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WebライターのKです。
先月7月は「青少年の非行・被害防止全国強調月間」でした。内閣府によれば、刑法犯少年の検挙人員は11年連続で減少しているものの、その一方で青少年がインターネット利用にかかわる非行に陥ったり、犯罪に巻き込まれたりする事例が頻発していると言います。
「この2、3年で、中学生は6割近く、高校生は9割以上がスマートフォンを所持するようになりました。無料のグループ通話が可能になり、画像や動画をたやすくアップできるようになって、“ネット型非行”が広がっています」と語るのは、千葉県の「柏市少年補導センター」所長の宮武孝之さんです。
柏市少年補導センター所長の宮武孝之さん。柏市内の中学校の教頭を経て、現職に。最近「ネット型非行」に関しての講演を依頼されることが増えてきました。
「ネット型非行」とはSNSなど で人間関係が広がり、本人たちが無自覚なままにネット上の不適切な有害情報を共有し、いじめ、性被害、薬物などの問題行動に発展していくものです。例えば、「少年・少女間で互いの裸の画像を交換、その後女児の画像が友だち内にSNSで拡散」「中学生が同級生を暴行している姿を撮影し、動画サイトに面白半分で投稿」「高校生のグループがインターネットで危険ドラッグを購入」などが事例として挙げられます。
柏市少年補導センターは、全国に先駆けて、3年前から「ネット型非行」の取り締まりや啓発を強化し始めました。「ネット型非行」の特徴は、非行傾向のある子どもたちにとどまらず、ネットを利用する子どもたちすべてが犯罪の被害者や加害者になりうる可能性をもっているところにあります。そのことを自覚してもらうために、柏市では現在、市内のすべての小学6年生、中学1、2年生に啓発のための情報教育を行っています。
学校での啓発活動の中で、子どもたちはネットのネガティブな事例に真剣に耳を傾けます。しかし、子どもたち以上に真剣に耳を傾けてもらいたいのは、保護者や教育関係者だと宮武さんは言います。「次から次へと出てくる通信サービスやアプリの進化に、正直大人はついていけません。しかし、子どもたちのネットの世界を知らなければ、子どもたちを見失うことになります。子どもたちが非行を行う場所は、いまや盛り場や路上ではなく、ネット上になっているのです」
現在柏市少年補導センターでは、ネット上の子どもたちを見守る「サイバーパトロール」を実施しています。市内の中学生などがネット上に公開しているプロフィールをリスト化して把握。そこで不適切な書き込みや画像がないか、自殺をほのめかす訴えや恐喝などの犯罪行為が行われていないかなどをチェックしています。問題のある事例を発見すると学校と連絡を取りながら指導に当たるようにしています。
柏市少年補導センターがサイバーパトロールに使用する記録簿。子どもたちのネット上の公開情報を項目ごとに整理しています。
「子どもたちのプライバシーの問題は、当然あると思います。しかし、ネットを子どもたちの解放区と考えるのは間違いです。そこでは、いい意味でも悪い意味でも子どもたちの欲望が肥大化します。さらに、社会性の備わっていない未熟な子どもであっても、裏社会と簡単につながることができる危うさをもっています。そんな子どもたちを見守り、指導するのは大人の責務だと思っています。柏市の子どもたちには、少年補導センターがサイバーパトロールを行っていることは、あえて伝えてあります」
宮武さんは、「ネット型非行」に大変強い危機感をもっています。ネット上でのトラブルが、ときに殺人にまで発展することは、今年2月の神奈川県川崎市の中学生刺殺事件、6月の広島県呉市の少女遺体遺棄事件などでも知られるところです。しかし、ネット上の子どもたちの逸脱行為を誰が監視し、取り締まり、指導していくのか、いまのところ社会のコンセンサスははかられていません。新たな秩序づくりが早急に求められています。
柏市少年補導センターでは、サイバーパトロールを実施する一方で、子どもたちの相談にのる「やまびこ電話相談」も実施し、いじめや性被害などで苦しむ子どもたちの悩みごとに対応しています。チラシのイラストは地元の漫画家志望の青年に依頼しました。
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