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【福祉のヤバいテクノロジー】数cmの段差情報があるだけで助かる。バリアフリーマップを作り始めたきっかけはなんなのか?

2015年05月08日(金)

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左から織田洋一さん、栄一君、お話を聞かせてもらった織田友理子さん。

早くリリースされるといいなぁ。

日本国内の非営利団体を対象にした、テクノロジーを活用してより良い社会を作るアイディアを募集した取り組み「Googleインパクトチャレンジ」。その中でグランプリを受賞した「みんなでつくるバリアフリーマップ」の特定非営利活動法人 PADMの織田友理子さんにお話を伺ってきました。

織田さんは22歳で手足の先から筋肉の力が減少していく難病の遠位型ミオパチーを発症。車椅子ユーザーです。インターネットで閲覧できるバリアフリーマップを制作すれば、より多くの車いすユーザーが必要な情報を享受できると言います。
 


バリアフリーマップを作ろうと思ったきっかけはなんだったんでしょうか?
織田友理子さん(以下、織田さん):私は遠位型ミオパチーを20歳の時に推定発症、22歳の時に診断を受けて、今は35歳なんですが、健常者だった時代と障害者の時代のどちらとも経験をしてる身として、健常者と障害者の相互理解が進むようなことができないかなと。障害者生活は不便だなと思う一方で、逆に、良いバリアフリーの取り組みをされている所もたくさんあります。

車椅子生活になってから、情報がすごく重要だな感じます。バリアフリーの情報さえあれば、車椅子での生活は不便ではあるものの、人生を楽しんだりできるんだなと。こういった事は健常者だった時代には知らなかったんです。

ステキなバリアフリー情報を広くいろんな人に知ってもらいたいと思って始めたのが動画でバリアフリー情報を配信する「車椅子ウォーカー(※外部リンク・NHKを離れます)というサイトなんです。「車椅子ウォーカー」は制作会社さんに協力していただいて、去年の1月から公開し始めたものです。

「車椅子ウォーカー」では、新幹線にどう乗るのかとか、飛行機にはどう乗るのかとか、ここで車椅子のままみかん狩り・いちご狩りできますよとか、そういった情報を掲載しています。1件1件自分で手探りで情報を集めて取材をしています。
そうやって活動していく中で、情報って私だけで全部集められるわけではないと改めて気づきました。車椅子の方って自分の生活圏内のバリアフリー情報にすごく詳しいんです。だったらその方達に聞いた方が早いんですよね。それで、そうした現地の情報をそれぞれの車椅子ユーザーが投稿してもらえるサイトを作りたいと思ったんです。

でも、サイト制作の構想をいくつかの業者さんに見積もりをお願いしたら、自分では払えないくらいの金額が出てきてしまって、困ったなと。
そういった活動をしている時にGoogleインパクトチャレンジを見つけて、これがもし通ったら、私だけじゃなくて、車椅子ユーザーとか、福祉やバリアフリーに興味がある人とかに投稿してもらえるサイトが作れるなと思ったんです。


「みんなでつくるバリアフリーマップ」で投稿してもらうものって、どういった情報になるんでしょうか?
織田さん:スマートフォンなどから得られる、映像や写真、位置情報や路面の凹凸データ等の情報を集めたいと考えています。テスト版では映像と写真をマッピングして、投稿してもらうのを想定しています。今は仕様書策定段階です。機能追加は年を追って段階的に計画しています。


テスト版はいつごろリリースされるんでしょうか?
織田さん:今年度末を予定しています。2016年3月までになんとか。

すごく役立ちそうなサービスだと思います。
織田さん:車椅子ユーザーとしては、移動に時間がかかるため、情報がない所にはとてもじゃないと行きたいと思わないので、私の場合だとまずは検索するんです。移動する時に必要なエレベーター情報やお手洗い情報など、事前情報がすごく必要です。検索すると、車椅子ユーザーさんがブログ等に投稿している情報にたどり着けるんです。

でも、車椅子ユーザーが持つ情報をみんなで共有できる場所が十分には存在しないんですよね。移動する時に欠かせないエレベーター情報やお手洗い情報など、事前情報がすごく重要です。だから、色んなお役立ち情報をみんなが投稿できるサイトができて、車椅子ユーザーの情報収集に対する負荷が軽減されればいいなと思っています。情報にたどり着けない、情報が埋もれてしまっている今の現状を変えられたらと思っています。

凹凸情報はどうやって調べることができるのですか?
織田さん:スマートフォンには加速度センサーやジャイロセンサーなどが搭載されていて、これらのセンサーによって走行時の揺れをデータとして取得し、これを解析することで道の凹凸を調べることが出来ます。スマートフォンにはこの他にも色んなセンサーが搭載されていて、多くの人が持っているスマートフォンを活用することで、より多くの情報が集まりやすいと考えています。



ところで、このプロジェクトにはメンバーの方が3名いらっしゃいますが、どうやって集まった人達なんですか?
織田さん:私が声をかけました。

私は“想い”だけは強いんですが、システムの部分が弱いので、前々から繋がりがあった伊藤史人さんという方にお声がけしました。もう一人の方は吉藤オリィさんで、私が一方的に知っている方だったのですが、伊藤さんともお知り合いだったので参加していただきました。伊藤さんは福祉情報工学を専門にしていて技術面に詳しく、吉藤さんは対孤独用分身ロボットの研究をしている方です。


車椅子ユーザーの方って普段生活していても、外ではあまり出会わないような気がします。
織田さん:最近は増えてきた印象がありますね。

6年前に簡易電動車椅子を作ったんですが、その当時は外出しても車椅子ユーザーを見なかったんですけど、最近はよく見かけるようになりました。バリアフリーの建物や公共交通が整ってきたので、外出しやすくなってきていますね。


車椅子の方が外出されるようになってきた時に、どこらへんが便利になってきたと感じられるんでしょうか?
織田さん:昔は乗降数が5000人以上の駅ではないとエレベーターを付けられなかったんですが、3000人に引き下げられたんですね。私の自宅近くの小さい駅ですらエレベーターが付いたんです。

自宅から駅まで行っちゃえば、そこから先は色んな所に行けるんですよね。そういったアクセシブルな環境が整ってきましたね。

何より以前は、お手洗いを探すのが大変だったんですが、今では百貨店やショッピングモールでは必ず車椅子お手洗いが設置されるようになってきたので、外出しやすくなっています。ただ、地方はまだ整ってきていないかもしれないですね。

今、東京は、2020年のパラリンピックへ向けて様々な場所が改修されていっているので、「みんなでつくるバリアフリーマップ」では、皆に役立つ情報をたくさん掲載できればいいなと思っています。それが、ひいては心のバリアフリーに繋がることを願っています。


ありがとうございました。完成したらぜひ教えてください。
 
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事前に織田さんについて調べてインタビューへ臨んだのですが、想像していた以上にとてもエネルギッシュな方だなと思いました。難病を抱えながらも、新たなプロジェクトを立ち上げる意思と、一つ一つ口から発せられる言葉の力強さには、エネルギッシュという印象がぴったりです。「みんなでつくるバリアフリーマップ」は、2020年のオリンピックまでに正式リリースがされれば、本当に多くの人達の役に立つサービスになるでしょうね。

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