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【福祉の『ヤバい』テクノロジー!】発達障害・知的障害のある方へのスマホサービスは何を考え開発されたのか?インタビューしてきました

2015年04月24日(金)

福祉×テクノロジーの連載記事も3本目となりました。今回は、障害者向けのアシスト機能が付いたスマホサービス「アシストスマホ」を提供されている、ソフトバンクへお話を伺ってきました。

このスマホサービスは、1年前に発売された発達障害と知的障害のある方向けに提供されている、日常生活と仕事のどちらでも利用できる端末です。機能としては、障害のあるユーザー本人が、電車通勤中に遅延が発生して会社への到着が遅れる場合、会社へ報告のメールを数回画面をタップすれば送信できたり、指定した時間にエリアに到着しているか、GPS機能を使ってご家族が居場所を知ることができます。

このスマートフォンがどういった課程を経て開発され、どういった思いが込められているのか、どうぞご覧下さい。

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左からCSR企画部企画課の木村幸絵さん、プロダクト・サービス本部 プロダクトマネジメント統括部 プロダクトマネジメント部 PDM課の村山貴一郎さん、プロダクト・サービス本部 プラットフォーム企画統括部 アプリケーションプラットフォーム部 アプリケーションPF課の工藤景司さん


御社で障害者向け事業としてアシスト機能付きスマホが開発された経緯を教えて下さい。
戦略商品企画課・村山さん(以下村山さん):2年ほど前に、高齢者向け・シニア向けの端末を出していて、シニア向け要件に工夫を加えれば障害のある方にも活用できるのではないか?という案が開発チームから出てきたんですね。それから、テストアプリを2,3個開発して実証実験してみようというのが始まったきっかけです。

このスマホを実際に使われている方はどういった人が多いでしょうか?
村山さん:実際にデータを取っているわけではないので把握はしていないんですが、セミナーやイベントにいらっしゃる人達を見ると、就労を前に支援施設や支援学校に通われている方がボリュームゾーンかと思います。すでに働いている、生活スタイルが固まっている方は、習慣を変えてまでは使わないというご意見もあったので、「これから就労期に入られる方」でしょうか。

例えば、通勤に心配がある場合、携帯などの通信機器を使って、ご家族側と勤め先側の2方向から「安全に通勤できているか」を確認するというアプローチが必要だったんですが、アシスト機能付きスマホというツールを上手に使えば支援者側の負荷が軽減されます。しかしこの場合は、ご両親がITに強い40代の方々が多いです。設定とかどうしても手間がかかってしまうので。


これからの障害者向け端末はどういった展開を考えてらっしゃるんでしょうか?
村山さん:製品の仕様的には連絡、行動をアシストする機能を極力シンプルに使いやすい形で技術を詰め込めたんですけども、我々のハードルだと思ったのが、端末の設定をする側の心理的ハードルが高いという事実です。自分ではちょっと分からないとか、教えるのが大変だから持つのをためらわれる。そういった心理的ハードルをどれだけ軽減できるかという部分を突き詰めて誰が触っても簡単に教えられ、使いこなせる端末を作っていきたいですね。

あとは、今までは限定した販路で販売していたんです。
アシスト機能付きスマホをいきなり全店舗で扱った場合に、スタッフが説明できないという事が起こりうるので、折角ご来店いただいたのにご迷惑をおかけすることを避けるために、就労支援施設や特例子会社などに代理店になっていただき販売していたのですが、今年は販路を拡大していこうと考えています。


開発されるにあたって、想定ユーザーさんとのやりとりは?
村山さん:相当やりとりしていました。学校や支援施設に通われている方や、そのご両親様に何組もお会いして、アンケートや実地試験に時間をかけて行っていましたね。

開発は大変でしたでしょうね。
村山さん:そうですね。実際我々が開発したものって、よくある機能を「簡素化」しただけなんですよね。だけど、『何を提供するか』っていうは一番悩んだところです。
機能の「名称」の付け方も考えた部分です。我々が普段付ける名称だと「アシストナビ」とか、少し格好つけたものになりがちなんですが、それだと使用ユーザーさんへ伝わらないという問題が出てきたんです。ですので、機能の名前を支援者の方が専用ウェブサイトで遠隔で変えられるようになっています。

アイコンのパターンも150種類ほど入っています。自閉症や自閉傾向のある方の場合ですと、特定のものにのこだわりが強いケースがあります。
例えば登録した番号にかける電話機能を、人型のアイコンで、名前が「お母さん」となっていると、「これは”お母さん”じゃないから使わない」といった拒絶を示す場合もあるそうです。ですので、UI(ユーザーインターフェイス。コンピューターの操作感)に関しては名前だけでなくアイコンや実際の写真を登録できるなど、遠隔で自由に設定することが可能となっています。


開発されているときに一番苦労された点はなんでしょうか?
村山さん:一番苦労したのは、社会貢献だけでやれる規模の開発費ではなかったので、どうやってプロジェクトを進めていこうかというのは苦慮しました。

アプリケーションPF課・工藤さん:ソフトバンクでは、障害のある方へ向けたサービスに対しても事業性やユーザーの得られる価値を正しく見極め提供していくというのが基本的な考え方です。
1年前には、ゲームで学べる手話辞典というアプリもリリースさせていただいているのですが、まだまだ認知が低いということもあり、ソフトバンクの活動をまとめたハートフルアシストというページを先日開設しました。

社会貢献という側面もあり、ビジネスとして成立させなければいけないというのは難しいところですね。
村山さん:支援施設やご家族のお話を聞いていると、福祉関係のサービスは無償で提供されている場合が多く、それに慣れてしまっているということがあるそうなんです。しかし、良いものに関しては、自分たちでお金を払ってでも欲しいというユーザー様やご家族の方も少なくありません。
こういった声が企業に届けば、支援機器開発にもっと多くの企業が参入し、良い者はたくさん出てくると思います。ドコモやauも一緒に競い合えば、より暮らしは便利になるはずです。

工藤さん:最近では、視覚障害の方でもスマートフォンを使われている方が増えてきています。画面を触ればどこにどんなアプリがあるのかを読み上げてくれたりする機能があります。だから家族同士でも教えているという方もいます。
それと、若い人ですと、皆と同じ物を使いたいとか、LINEでコミュニケーション取りたいという要望も多いです。ですので、アシスト機能付きスマホという独自のプロジェクトを立ち上げるか、スマートフォンに今ある機能を展開していくか、という議論は社内であります。


御社のCSRでは、障害者向け業務の割合はどれくらいとなっているんでしょうか?
CSR企画部企画課・木村さん:あらゆる業務が複雑に絡み合っているので明確に割合をお伝えすることはできないのですが、弊社CSRでは1/4をそれらの業務としています。


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障害者向けスマートフォンを企画された方に直接、話をお伺いしてきたのですが、新しくサービスを開発する上での理想と現実を聞くことができました。こうやって開発してくれる方々がいるおかげで、サービスを利用できるというのは忘れてはいけませんね。


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