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障害のある子どもたちに"遊びの環境"を!~「遊びのテーマパーク×仮装大作戦」取材記・前編

2015年01月14日(水)

WebライターのKです。

昨年末にFacebookでご紹介したユニークなイベント「遊びのテーマパーク×仮装大作戦」について改めてご紹介します。

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このイベントは、重度の障害のある子どもたちに「遊びの環境」を与えることを目的とするNPO法人パテスによって企画されたもので、身体の自由がきかない子どもたちに、特別に開発された遊具を使って身体の動きをともなう遊びを満喫してもらおうというものです。

会場となったのは東京都大田区の産業会館。1600㎡の大展示場には、いくつもの遊戯スペースが設けられ、その周囲にはバーチャルな遊びのためのシミュレーション装置や仮装のためのファッションブースなどが並べられ、さらにクレープ屋さんやお弁当屋さんも店を広げ、お祭り広場のようなにぎわいが演出されていました。
 


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会場に集ったスタッフや保護者の方たちは、子どもたちに少しでも笑顔になってもらおうと、思い思いの仮装に身を包んでいました。天才バカボンのパパやゲゲゲの鬼太郎の目玉のお父さんなどのアニメキャラクターに扮したり、トナカイやアヒルの被り物をつけたりした大人たちが、子どもたちのサポートに走り回っていました。

参加人数は2日間で約500人。首都圏を中心に全国から肢体不自由の子どもとその家族が集まりました。


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主催団体である「パテス(Patess)」は、会の正式名称「遊びと環境支援協会」の英文名“PlayfulandtheEnvironmentalSupportSociety”の頭文字を取って命名されました。この英文名に含まれる“プレイフル”という言葉は、会の活動を象徴するキーワードです。障害によって体の自由がきかない子どもたちは、身体機能を少しでも改善させるために、治療や訓練にあけくれます。そこには子どもたちがわくわくするような遊びの要素が欠落しています。そのことが障害のある子どもたちの心の発達を遅らせ、身体機能の向上を妨げているのではないか、そのような問題意識をもった理学療法士や作業療法士、小児科医や看護師、特別支援学校の教員などがパテスの活動を支えています。


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会場の中央に設置されていたのは、アメリカで開発されたスパイダーという遊具。一人で立つことのできない体を周囲のかご枠につないだ何本ものばねで支えて、子どもが飛び跳ねて遊ぶものです。身体の自由がきかない子どもは、転倒などの恐ろしさからどうしても体に不自然な力を入れてしまいます。しかし、姿勢を保つ筋肉や神経組織を発達させるには、体から意識的な力みを排して、リラックスした状態を作り出すことが不可欠です。子どもたちは、スパイダーのばねによって転ぶ心配がなくなり、かつ体のバランスを微調整することでぴょんぴょんと跳ね回ることができるようになります。その楽しさがいつもの不安を解消します。声を出して笑っている娘の姿を見ていた母親は「うちの特別支援学校にもこれほしい。絶対校長に直訴する!」と一緒に来た父親に訴えていました。
 


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ベビーロコという「乳幼児向けの電動車いす」
(滋賀県立大学と重症心身障害児者施設のびわこ学園が共同開発)



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座る姿勢が取れない子どものための「立居型の電動車いす」
(滋賀県立大学と重症心身障害児者施設のびわこ学園が共同開発)

パテスの会場には、たくさんの電動車いすが揃えてあって、子どもたちは夢中で乗り回していました。実は、電動車いすに関しては、厚生労働省は「小学校高学年以上の使用が望ましい」としていて、乳幼児や低学年の児童が乗る電動車いすは福祉機器の支援対象とはしていません。そのために多くの子どもたちは、電動車いすに乗るのは初めての体験なのです。
「周囲の大人に身をゆだねるのではなく、自分の意思で移動を可能にするのは子どもたちにとって大きな喜びであり、運動機能の回復にもプラスの効果をもたらします」
パテスの代表理事でびわこ学園の理学療法士の高塩純一さんは、幼い子どもたちが電動車いすに乗る意義を、そう語ります。
実は、走り回っていたのは会場に準備された電動車いすだけではなく、本人が乗ってきた車いすにモーターとレバーを付けて、即席の電動車いすに仕立てられたものもありました。これも子どもたちにとってはうれしいサプライズでした。


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「本当はふだんからこういう楽しい遊びをもっとやらせたいと思うのだけれど、一般の子どもたちの遊び場では、どうしても安全を考えて控えてしまいます。でも、これらの遊具は障害のある子どもたちを意識したものですし、ここにはお医者さんや専門のスタッフがいるので安心です。今日は息子と張り切ってきました!」。東京都足立区からやってきた父親は、スワンの着ぐるみ姿で、このイベントへの意気込みを示していました。


パテスの代表理事の高塩純一さんによれば、このように遊びを通じて子どもの主体性を育てる活動をしている仲間は、全国に増えてきていると言います。しかし、それぞれが地域の中で限られた活動を展開しているだけで、全国的な運動にまでは広がっていません。このイベントを通じて、ネットワークを広げ、情報を交換し、パテスを肢体不自由の子どもたちのための遊びのプラットホームにしていきたいと語っていました。


障害のある子どもたちに"遊びの環境"を!~「遊びのテーマパーク×仮装大作戦」取材記・後編、はこちらから。

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