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福祉を何も知らない男が現場取材で感じたこと(後編)

2014年12月27日(土)

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前編は東京都中央区にあるマイホーム新川さんの概要をざっとご紹介させていただきました。


「福祉を何も知らない男」というキーワードで特別養護老人ホームで見てきたことを生でお届けする後編は、昼食を終えた後のマイホーム新川の様子から。
 

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午後は利用者の方々のアクティビティとして椅子に座ったまま遊べるタオルサッカーが行われてました。イスをゴールに見立て、ボールをゴールまで運べば勝ちという遊びです。あかチームとみどりチームに分かれ遊んでいる様は、ただ見ているだけの僕でも楽しめる娯楽でした。あと少しで入るのに!とかスポーツ観戦してる気分に。

高齢者の方でも手だけで遊べるのは、体全体を使うわけではないのでほどよい運動効果があるようにも思えました。

タオルサッカーの後は音楽を聴きながら合唱の時間。

音楽というのは不思議なもので、聞いているだけでこちらの心が和みます。それに、ご高齢の方が利用の大半を占めているということもあり、終始喧騒の陰も見当たりません。東京の慌ただしい生活とは違う空気が流れているように感じました。

こういったアクティビティが施設主導で用意されており、習字をしたり、焼き物を作る等、毎日違う時間を過ごすことができます。



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アクティビティの隣ではリハビリ用具が置いてあり、どなたでも利用できるようになっています。この日はそこまで使用している人はおらず、一人二人ほどの方が体を動かされていました。

これまで、年齢を重ねることによる身体機能の衰えということについて認識が甘かったんだと思いますが、福祉施設におけるリハビリがどのような効果を生み出すのか、いまいちピンと来なかったんです。ですが、間近で一歩ずつ進む歩行訓練を見るとそういった意識も変わります。今からでも将来を見据えて取り組むべきことはしておこうと感じました。



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最後に、係長を務める渡辺さんのお話を。この日、30分ほど時間をもらい、1対1で在宅サービスセンターの仕事についてお聞きさせていただきました。


マイホーム新川がオープンしてから20年余り、ここで働き続けている渡辺さんは、「あまり考えないこと」がこの仕事を続けられる秘訣だと話します。僕のような福祉とは遠い人間からすると、どうしてもきつい面が多いのではないか…という印象が強かったんですが、帰りの送迎の道中、渡辺さんに張り付きっぱなしで何か答えてもらえないかと耳を立てていましたが、「考えないからいいんです」の 一つだけでした。

話を聞いている感じだと、この務めてきた20年間で身につけたことが「考えない」ことなのかと聞こえる発言です。 額面通りでない、意味を感じました。


この日の利用では、外部の僕がカメラを持って見学していたということもあってか、目立ったトラブルは見られなかったのですが、渡辺さんは日々この仕事のポジティブ・ネガティブな面 をどちら とも経験するそうです。

ポジティブな面は、日本の戦争を体験した世代の「生き様」に触れられることと言います。戦争を経験した人の底知れぬ強さは他の世代には見られないし、自分にはそういった要素は無い、と。

ネガティブな面は、人の色々な顔を見てしまうこと。


前回の記事で触れたとおり、施設には幅広い年齢の方が利用します。50歳の人にしてみれば、自分の親と変わらない年齢の人と共に同じ時間を過ごすことになり、その逆もしかり。職員の方は20代から30代です。これだけの人が同じ場所にいるということは社会の縮図が形成されているようなものです。それは一筋縄でいくわけもありません。

それに加え、介護報酬の引き下げというニュースもあります。こういった介護事業者の現場にはダイレクトに響いてくるでしょう。


今回の企画を通して、これまで触れることが無かった世界に触れ、黒白はっきりさせるのが難しい世界だと思いました。そして、日本にはこびる福祉のイメージはご想像の通りでしょう。深い世界です。上述の「考えない」ことが最大の「考える」ことであって、利用者の皆さんを一番理解しているのかもしれません。

また、自分の中で起きた一番の変化は、「お金を払ってでも福祉施設に来るべきだ」と思ったことでした。確実に視野が広がり、見てないものについて見てるような想像を膨らませてたことが恥ずかしいです。


これからの超高齢社会、日本全体で福祉に対する見方が少しでも変わることを願います。
 

 

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