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Road to Rio vol.79 ルールは"健常者スポーツ"と変わらない。~アーチェリー~

2016年05月02日(月)

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アーチェリーの最大の特徴は、「健常者と同じ試合内容」ということかもしれません。

(ただし、視覚障害部門には独自の配慮があります)


002_130906122621982_120830_144033_mh_4700_LR.jpg両腕を欠損しているアメリカのマット・スタッツマン選手も、健常者と同様のルールで試合を行います。彼はロンドンパラリンピックの銀メダリストです。



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4月17日(日)。その日は台風並みの低気圧の影響で、とても風が強い日でした。
今まで実際の試合を見たことのなかった「アーチェリー」という競技を学びに、第36回近畿・第7回東海 身体障害者アーチェリー選手権大会に伺いました。



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会場は大阪・浜寺公園アーチェリー練習場の屋根。上のネットや選手の髪が真横になびくほどの、強い風。



004_001_DSCN4069.JPGアーチェリーの種目は使う弓によって、大きく2つに分かれます。こちらは一般的なかたちの「リカーブ」。的までの距離は70m、的の大きさは122cmです。日本では「弓=弓道」のイメージが強いからでしょうか?リカーブが人気です。

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こちらは「コンパウンド」。弓の先端に滑車がついているため、リカーブの半分くらいの力で弓を引くことができます。


004_003_IMG_0208.JPGコンパウンドは的までの距離は50m、的の大きさは80cmです。張力が強いため、ストレートに矢が飛びます。アメリカやヨーロッパでは競技人口が多いそうです。


004_004_IMG_1159.JPGまた、コンパウンドはリカーブより狙いを定めやすい形状となっています。前方にはこのようなスコープ、後方の弦にはのぞき穴のような「ピープサイト」を取り付けられるようになっており、自分の目との“3点セット”で効率的に的を狙えるため、競技点数が高くなるのが特徴です。


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アーチェリーは「動いてはいけないスポーツ」。

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弦を鼻・唇・あごにつけ、「自分の定位置」を探り、一瞬を狙います。

 

 

アーチェリーは「繰り返しのスポーツ」。

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基本の姿勢から繰り返し、繰り返し、矢を放ちます。

試合は1人72射で、的は10点満点。合計で720点になります。

今回の大会は、1エンド6射×6回の1ラウンドを午前と午後の1回ずつ行いました。


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弓を引く手に握られている「リリーサー」の使用も健常者と一緒。アーチェリー用具を扱う専門店では50種類もそろえているところも。


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競技者は、採点、矢取りを自分で行うため、1エンドが終わると皆で的に向かいます。これも健常者と一緒。

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013_IMG_0877.JPG2ラウンド目に入るころには、風が穏やかになっていました。



014_IMG_0885.JPG014_IMG_1249.JPG015_IMG_1150.JPGパラリンピックの起源は1948年7月29日、ロンドンオリンピック開幕日にロンドン郊外のストーク・マンデビル病院内で行われたアーチェリー大会とされています。出場者はいずれもイギリス軍の退役軍人の車いす患者、男女合わせて16人の方々のリハビリとして行われました。


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こちら上山友裕選手(三菱電機所属)はもともとラグビーの選手。“男社会”の中にいたため、「アーチェリーという競技は女性と一緒にできるスポーツなのですごいな」と思ったそうです。

競技を始めたきっかけは、「美人の先輩に褒められて」とのことでした。笑


022_IMG_1566.JPGそして社会人になって突然、下肢が動かなくなります。原因は不明と診断されました。


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肩甲骨をまっすぐにのばしたまま、静かに弓を引く。

背中と呼吸、一瞬の間をさぐり時を射止める。

「風は、一瞬止むときがあるんです」と、上山選手。

 

72回、決してぶれてはいけない。

そこに「障害」は存在しない。



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上山選手は現在、6月にチェコで行われる最終選考会に向けて猛練習中です。

 

リカーブ男子の出場枠は残り3つ。

日本から、リカーブの男子選手がリオパラリンピックに出場できるのは1名と言われています。静かな、だけれど熾烈な戦いをぜひ勝ち抜いてほしいですね。


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大会が終わった後も、練習をされていました。

 

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夕方、帰るころには風は止んでいました。

 

上山選手がおっしゃっていました。

「アーチェリーは『静のスポーツ』。それがわかってもらえるだけでも、競技を見る方の楽しみ方が違ってくると思います」

 

 

力まず、体と心をひとつにし続けてひたすら的を狙う。

ロンドンパラリンピックで金メダルをとったイランのZahra Nemati選手は、今回リオでは「オリンピック」と「パラリンピック」に出場するとのニュースも入ってきました。

 

 

アーチェリーの前には、“障害”は存在していないのかもしれません。


040_IMG_1675.JPG 大会に参加した選手、役員の皆さん。最前列に介助犬も!

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