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Road to Rio vol.51 「一球入魂! ~パラ卓球選手権大会~」

2015年11月27日(金)

こんばんは、キャスターの山田賢治です。


先日大阪で開かれた、パラ卓球の国内大会を取材しました。結果が直接リオ出場権につながる大会ではありませんが、今後の国際大会派遣の指標となる、選手にとっては大事な試合です。球の乾いた音とともに、スマッシュが決まったときの声、選手に向けた拍手など、様々な音が会場に響き渡っていました。


20151127_yamaken001.JPG「国際クラス別パラ卓球選手権大会」の会場は、大阪市舞洲(まいしま)障がい者スポーツセンター。32のテーブルで熱戦が繰り広げられました。



20151127_yamaken002.JPG車いすの選手は、クラス1~5。数字が小さいほど、卓球をする上での動きが制限され(障害の程度は比較的重い)、数字が大きいほど動ける範囲は広い。



20151127_yamaken003.JPGクラス6~10は立位で、同じく、数字が大きいほど障害の程度は比較的軽い。この他、今大会にはカテゴリーはありませんでしたが、クラス11は知的障害の選手。


パラ卓球のルールは、基本的に一般の卓球と同じです。ただ、車いすの選手は動ける範囲が狭いので、サービスでエンドラインを正規に通過したボール以外はノーカウントとなります。また、障害によりトスが困難な選手の場合は、一度自分のコートにボールを落としてからサービスすることが認められています。

卓球競技でのリオパラリンピックの切符は、来年1月1日時点の世界ランキングで決まります。国際大会に出場し、その結果で得られるポイントでランキングが決定。現時点で有望なのは、今大会もそれぞれのクラスのシングルスで優勝した2人の選手です。




別所 キミヱ 選手(クラス5)

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アテネ、北京、ロンドンと3大会連続でパラリンピック出場。11月1日現在、世界ランキング7位(32人中)の別所選手。12月で68歳を迎え、「ようやってるな自分、と思いますよ」とこれまでを振り返っています。
 

競技を始めたのは45歳。40歳を過ぎて骨に腫瘍ができる「仙骨巨細胞腫」という病に罹患し、大量の輸血が必要な手術を受けました。車いす生活となって卓球と出会い、そこからめきめきと力をつけ、今、世界で戦っている別所選手。絶対に負けないのは、“練習量”だと力を込めて言います。「これは誰にも負けない。極限まで自分を鍛える。そのあとで、自分を信じることができるんです」。
 

別所選手が属するクラス5は、足の切断の選手が多いため、体幹機能が残っている場合が多いそうです。世界のレベルはどんどん上がっていて、しかも20、30歳代の選手が多い!そこで「テクニックだけではなく、フィジカルも鍛えていかないと。負けたくないんです!」と、卓球漬けの日々です。
 

普段は、主に地元の兵庫県姫路市のクラブチームで練習していますが、日常生活でも身体を動かすことに余念がありません。バランスボールに乗りながらコーヒーを飲んだり、運転するときには、太ももにゴムを巻いて外に開く動きで内転筋を鍛えたり…。また、“見る力”を維持しようと迷路の本を購入し、スタートからを目で追ってゴールする練習、などなど無駄な時間を作らないようにしているそうです。この大会では次の試合まで時間があっても、常に上半身を動かしていました。



20151127_yamaken005.JPG車いすの場合、動ける範囲が狭いので、ネット際や左右に大きく振られたボールにどう対応するかも勝敗を分ける重要なポイントになります。座面を高くすると届きやすいですが、一方で安定度が落ちます。どの高さにするかによって、プレーが大きく変わるそうです。クッションの厚さで調節するのですが、「5ミリでもプレーが変わります。どの高さにするか、かなり重要です(別所選手)」。


20151127_yamaken006.JPG“クッションとも一緒に戦う”という気持ちで、「よく抱きかかえています」と話す別所選手。「負けない」という言葉も書かれています。


最近よく聞いているのが、クラシック曲の「威風堂々」。自分もそうありたいと願い、繰り返し聞いているそうです。曲調は卓球のイメージと重なり、試合中でも展開によって、“ここは自分を落ち着かせよう”、“さあ攻めていこう”、“ここはラリーで粘っていこう”と、その曲の部分が頭の中で流れるそうです。


戦うモチベーションをさらに高めるため、「心を鬼にしていきます」と力強く語ってくれた別所選手。競技に対するストイックさに、心打たれました。
リオでプレーする「威風堂々」の姿をぜひ見たい! 応援しましょう!




岩渕 幸洋 選手(クラス9)


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早稲田大学3年生。大学の卓球部で切磋琢磨している、実力上昇中の選手です。今や、世界で戦う“日本男子のエース”と言っていいでしょう。11月1日現在、世界ランキング11位(88人中)。今年1月1日は20位でしたが、国際大会の優勝などで今年、大いに躍進しました。今の目標は、リオでのメダル獲得です。



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岩渕選手は両足とも、足が内側に曲がる、「先天性内反足」です。そのため、装具で固定していて足首が曲がらないため、踏ん張りがあまり効かず、大きな動きはできません。
その中で、岩渕選手が確率したプレースタイルは、「台の近いところで早いタイミングで打ち込む」というものです。持ち味は、力強いフォアハンド。台に近づいてのカウンター、バックのラバーを駆使してのナックルボールなど、幅広い攻撃で相手を翻弄します。


その海外の相手は、ほとんどが162センチの岩渕選手よりも体格の大きい選手。さらに、膝より下または片方の腕など障害の箇所もそれぞれ異なるため、プレースタイルも独自のものです。
「体力的に劣っても、頭を使って戦術で勝てる」。岩渕選手は相手の弱点を研究するため、国際大会で上位の選手のプレーを録画。大学のチームメイトに見せて、そのスタイルを真似てもらい練習することもしているそうです。



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相手コートに注ぐ、厳しくまっすぐな視線



「東京パラリンピックでももちろん活躍したい」と話す岩渕選手。
これからの卓球界を引っ張ってほしい存在です!期待しましょう!


2人の他にも、大会ではベスト4に入った中学生もいるなど、今後が楽しみな選手も数多くいました。これからも取材を続けていきます!

コメント

現在、リハビリ入院中、退院して、早く卓球したいな❗

投稿:toriton 2017年11月17日(金曜日) 23時59分

お疲れ様です、選手の皆さんの一生懸命な努力に感動します。頑張っておられる姿に勇気も頂いています。会場で応援する機会があればと思うばかりで申し訳ないです。皆様のご活躍をお祈りしています。山田さんもお身体に気をつけて取材も頑張って下さい。ヤマケンボイス楽しみにしています。

投稿:清満 2015年11月30日(月曜日) 08時34分