Road to Rio vol.48 様々な人が関わり合う世の中へ(前編)~"切断ヴィーナス"が切り拓く未来~
2015年11月12日(木)
- 投稿者:web担当
- カテゴリ:Road to Rio 2016
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11月7・8日は2つのイベントがありました。
7日・土曜日は、東京体育館にて開催された「MOSHI MOSHI NIPPON FESTIVAL 2015 in TOKYO(通称:もしフェス)」に行ってきました。
日本のKAWAII、クール、そしてポップな“魅力”がつまったこのフェスティバルは、2015年にロンドン、パリ、バンコク、サンフランシスコなど世界8都市を巡回し、東京に凱旋してきました。今回はそのフェスティバルに“切断ヴィーナス”として出演されるみなさんを取材しました。
2日目のオープニングは、三戸なつめさんなど人気モデルさんたちが登場。
そしてでんぱ組.incの登場。
「でんぱ組姐さん…」と思わず心の中で思ってしまうほど、プロフェッショナルなステージでした。
いわゆる“ヲタ芸”でしょうか?動きが速すぎてカメラが追いつきません。そして…
切断ヴィーナスとは…
普段義足で生活している女性たちが、個性的な願いをかなえる義足や衣裳を身に付け、魅力的に“変身”している状態です。KAWAII、クール、ポップ…ここからは、従来の義足や障害者の概念を打ち壊し、溶かし、乗り越える…彼女たちの魅力を是非感じてください。
サラ・レイナーセン選手(アメリカ)は、何度も世界記録を打ち出している世界的に著名な障害者アスリートのひとりです。右手のトーチがとても象徴的ですね。サラ選手はリオデジャネイロパラリンピックで初めて競技採用されるトライアスロンでリオ出場を目指しています。
阿部未佳さんは、2018年のピョンチャン冬季パラリンピック出場を目指すスノーボーダーです。赤獅子をイメージされているのでしょうか?
須川まきこさんはアーティスト。
ステッキ?と義足のコントラスト!まるで魔法使いのようですね!
阿部さんと須川さんはハートネットTVのブレイクスルーにもご出演いただきました。番組書き起こしをこちらからご覧いただけます。⇒ブレイクスルー File.11 義足のヴィーナスたち
村上清加さんは、以前のハートネットTVのオープニングにも出ていただいていたアスリート。ドーハの世界陸上にも出場し、リオパラリンピックを目指しています。義足をぐいっと持つ姿がカワイイですね!
ヴィーナスたちは、思い思いのイメージでショーを楽しまれたのではないでしょうか?
思いっきりポップな衣裳なので、角度によっては義足が見えにくい場合もありますが…まあそれは、ご愛嬌ということで!
そして、このショーの主宰・企画を行ったのは…
そう、カメラマンの越智貴雄さんです。ドーハの時には「今日の越智さん」という写真を毎日掲載していましたが、越智さんは2000年から国内外のパラリンピックスポーツの撮影取材に携わっており、アスリートたちの魅力を写真という形で幅広く伝えていらっしゃいます。
ショーについて、越智さんにお話しを伺いました。
切断ヴィーナスの”カワイイ”を目指して
今回のイベント、どうでした? たくさん反応があって凄かったです!(村上)清加さんがクルクルっとした時や、しゃがむ時も「すっごくカワイイ!」みたいな反応があって。ちゃんとポップカルチャーっていうのかな、カワイイカルチャーとして受け入れられてる。だから「もしもしにっぽん」凄いですよ。この感じをちゃんと見越して出演オファーしてくれている訳ですから。 もしフェスさんから、オファーがあったんですね。 そう。一流の人達しかここには出られないぐらいなので。でんぱ組さんもそうだし、ゴールデンボンバーさんも、あちらからオファーが。 凄いですね!準備はどれぐらい前からされてたのですか? 一か月ぐらい前からですかね。衣装だけ外注しちゃったんですけど、“カワイイ”と“スポーツ”を融合させて欲しい、という感じでお願いしちゃって。ちょっと出すぎたところもあったんですけど、カワイイからまあいいかな、って(笑)。
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越智さん、ちょっと興奮気味でした!
そしてもうひとり。切断を魅力的に“支える”義足を作っていらっしゃる、臼井二美男さんです。以前ハートネットTVにもご出演いただいた臼井さんは義足ディレクターとしてこちらのイベントをプロデュースされました。
手前が臼井さんです。言葉のひとつひとつがどこか哲学的でつい、正面の写真を撮ることを忘れてしまいました…
垣根を、魔法のように飛び越えていく
今日のイベントはどうでしたか? 思ったよりファッションが凄くて、良かった。近くで見ると凄いなあと。やっぱり客席から見ると凄く映えてて良いですね。あれぐらい、クールジャパンというか……なかなか、日本人の感覚というのも少し変わってきている感じがして、とても面白いかな。 日本人の感覚…どのように変わったと感じられました? 障害を隠すためのファッションショーとかじゃなく、障害というのを感じさせないで、なおかつ、モデルさんの個性に「もっと花を盛った」、みたいな。 今まで無かった発想が、花開いている。多分世界的に無いかな、この感覚は。世界になかった感覚を日本から発信できるのは良いことですよね。若い人が入ってきやすいというか、いろんな意味で、同時に色んなものを受け入れちゃう。「足のない障害」とか、美しさとか可愛さとか頑張りとか、全部MIXで気がついたら自分が認めてる、というのは凄いことです。垣根を魔法のように飛び越えていく、そんな発想。 今までの切断ヴィーナスのファッションショーですと、「切断ヴィーナスのファッションショーです」という中でやっていたと思うのですが、今回は「もしフェス」の中で、お客さんの雰囲気とか感じられ方が違うと思います。その辺りはどのように感じられましたか? 今の日本の、世界から注目される日本のかわいらしさというか。今の日本人が持っている、文化も入っていると思うんですよ。そこにちゃんとマッチングしているから、“切断ヴィーナス”が負けてないというか。新しいファッションの在り方が生まれたような。 障害がある、というのをこんな形で、美しさとか可愛さを表現できるのを、現実に今日見ることができた。デザイナーさんとか、モデルさんの心意気まで、そういうもの“全て”の密度が濃くて、凝縮されていて、その思いも良かったですね。 ただ「障害を認めてくれ」じゃなくて、気がついたら「認めさせちゃってやるぜ」っていう、それの嫌味もなくてね。多分今までない、魔法の感覚がします。 村上さんの義足をメンテナンスしている臼井さん。でも、なにか素敵な日常を過ごすことができる魔法をかけているようにも見えます。
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今年の8月、パラリンピック選手発掘事業にいらした臼井さん(一番右)。
切断ヴィーナスの取材にいらしていた日テレ(真相報道バンキシャ!)の竹内花奈ディレクターにもお話を聞いてみました。
中央が竹内ディレクター。後ろの音声さんもこちらを見ていたのですね!
伝えたい思いとは?
今回、どういうところに注目されていましたか? “切断ヴィーナス”の方々にいろいろ話を聞くと、「普段街中では気づかないかもしれないけれど、障害者の方もいるんだよと伝えたい」という本人達の思いがあったので、是非伝えたいと思いました。 ショーはどんなふうに感じられましたか? 私も実際に、そんなに元々気にしたことは無かったんですけれども、「普通に接してほしい」という声が多くて、直接「いろいろ聞いてください!」って言ってくれて。最初、彼女たちに聞きづらい部分があったんですけど、そうやって言っていただけると直接すぐ聞けて。無意識に壁を置いていたんだな、というのを凄く感じました。 カワイイ文化と“障害”の部分が混ざり合ってると、接しやすいですか? そうですね。カワイイっていう部分と、ファッションと、障害と、で接しやすいです。 ちょっと難しい質問かもしれませんが…もしご自分が、義足とか義手をつける、となったら、どんなものを使ってみたいと思いますか? でもやっぱり、今日みたいに、凄いかわいくアレンジができるんだな、と思ったので……ちょっとなってみないと分からないですけど、かっこいいモノをつけたいな、とすごく感じました。 ありがとうございます。最後に、今回のショーをメディアとして伝えられると思うのですが、どういった思いを一番に伝えますか? 彼女たちが障害者であっても、“普通”の人と同じでありたいという部分を、思いを、同じ年代の方とかに伝えていきたい、というところですね。 |
最後は、ショーに出ていた村上清加さんに伺いました!
ミュージカルの「CATS」のようなメイクで、最初誰だかわからないくらい…女性にとってのお化粧は本当に“魔法”ですね。
私たちは、楽しく生きている。
どうでしたか?感想は。 感想は…すごい着込んだので、すごい暑かったんですけど、それを熱気に変えて。かなり盛り上がりました、自分の中でも。 お客さんの反応はどうでしたか? 結構お客さん見えたんですけど、「いいぞー!」みたい親指立ててくれる外国の方とかいて、あと「おーい」って手振ってくれたりもしたので、反応してくれてすごくうれしかったです。 今までの切断ヴィーナスのショーですと、「切断ヴィーナスのショーがある」とわかって集まってくれたお客さんで、今回は「もしフェス」というイベント目的で、お客さんの層が違っていたと思いますが、そのあたりはどんなふうに感じられましたか? 楽屋でもアイドルの方が横にいたりして、そういう部分でも前と違った感じがありました。私たちがステージに上がる前も「ワー!」「キャー!」となっていたので、それをトーンダウンさせないように。私たちがみんなで盛り上げれば、お客さんもそのまま盛り上がったまま見てくれて次にもつながるかな、って思ったので、精一杯自分たちが出来ることをやりたいと思っていました。私は最後だったので、みんなの出番を大画面で見ていたんですけど、もう全然、多分クールダウンしてないかなりの盛り上がりで、かっこよかったので…私も頑張っていくぞ!っていう気持になりました。
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最後に。
実は、私は興奮だけではない、ちょっと違う思いがありました。
取材カメラの位置がアリーナの後ろだったこともあり、お客さんは思い思い踊っていたり、場所取りをしていたり…そして“目当てのアイドル”のステージが終わると帰って行く人は、少なからずいました。また、切断ヴィーナスのショーに盛り上がっていた人のところへインタビューに行こうと思ったら、その方は“アイドル待ち”でライブが始まるとより激しく踊り始めたので…邪魔しちゃいけないな、と。
ここにいる人に、もっと彼女たちを見てほしかったのに。
村上さんがおっしゃっていた 「自分も麻痺している」という言葉を改めて感じましたが、同時にまだまだ可能性があると気づきました。
それは、彼女たちが新たな場に出たことで「面白い」と思ってくれる人とつながることができているからです。そして次はその人たちも交えてイベントを新たな形で行い、つながる、創る、つながる、創る…と、どんどん新しい発想を織り交ぜて大きな化学反応を起こしていけば、きっと何かを溶かすような素敵で強力な“魔法”が生まれると思います。
今は、「頑張る」ことが多くなっているかもしれませんが、その未来を信じて。
“でんぱ組姐さん”もきっと、いろんなことを乗り越えて今ここにいるのですよね?
そんなことを思いながら、大分の車いすマラソンへ向かいました。
後編に続く⇒様々な人が関わり合う世の中へ(後編)~"大分車いすマラソン"が切り拓いてきた道~
コメント
このショーについて、企画意図には全面的に賛成で大拡散したいのですが、一方で知れば知るほどショックが大きくなります。
臼井さんがおっしゃっていたのですが、高齢者、子ども。。。
越智さんのおっしゃるような『一流しか出られない』イベントというのは、『義足者だって一流になれる』という意義は大きいと思いますが、これが一般化すれば、今度は『一流になれなかった』人は”障がい者である上に二流三流でしかない”との二重の屈辱を受けるようになるのではと心配になります。でもそれをあの熱気の中では・・・
投稿:マーボナス 2016年05月10日(火曜日) 14時23分