【障害者陸上 世界選手権】競技9日目の様子は?(10/30) #Doha2015
2015年10月31日(土)
- 投稿者:web担当
- カテゴリ:Road to Rio 2016
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大会9日目、今日は日本チーム2つ目の金メダルが出ました!5000mT20(知的障害)の中川選手です!!!力強い走りでした。詳細はこの記事の一番最後にお伝えします。
今日は夕方4時から競技開始ということでお昼過ぎに会場入り。なんだかメディアセンターでみんながそわそわしています。その理由はなんと、我々メディアが参加できる「メディアレース」が行われるからなんです。
NHKチームは予選2組。4x100mを走るのですが、そのうち第2走と第4走の選手はT11(視覚障害)のようにガイドと目隠しをしたランナーが走ります。私は2走で目隠しをして、ガイド役の同僚Uさんと一緒に走らせていただきました。写真は、越智 貴雄さんに撮っていただきました。
実際のレースと全く同じ要領で行われるので、緊張感もさながら、バトンも本物です 。いつもファインダーの向こうに見ている世界を実際に体験するというのは非常に貴重な機会。観客の声援が嬉しかったり、スタートが近づくと緊張して口の中が乾いてきたり、暑さで体がだるく感じたり・・・。選手はこれをもっと痛烈に感じているのですね。
でも何より目が見えない状態で走るということの恐怖を知りました。右左がわからないだけではなく、走り続けると上下の感覚もまひしてきます。その中でガイドの声とつないだ手だけが頼りなのです。事前の練習の結果、声については、助走を始める時とバトンをもらった時の合図と、「あとどれくらいの距離を走るのか」を伝えてもらうと安心できるという結論に達しました。
ぎゅっと繋いだ手を信じて走りましたが、やはり「見えない恐怖」ゆえにどこかスピードを抑えてしまう自分がいました。ライバルチームの声がすぐそばに聞こえたので、抜かれたくない一心で走りましたが、正直“恐怖”がなければ本当はもっと走れたのに…という感覚でした。
結果はというとIPC・国際パラリンピック委員会チームには負けたもののブラジルチームを抑えて2位。でもタイムで予選1組目の2位チームに叶わなかったため決勝進出にはなりませんでした。表彰台も経験してみたかったんですけどね。残念。
今日はゴールライン付近のスタンドが賑やかです。
最初のレース、T47(切断・機能障害/立位)100m決勝に辻 沙絵選手が出場することもあって日本チームの姿もありました。
一番右が辻選手
昨日は13秒17の自己ベストを出し、自信にあふれた笑顔でインタビューに答えてくださった辻選手だったのですが、今日は目に涙を浮かべて「悔しいです」と話していました。自分を応援してくれる多くの人たちに、本当は自己ベストを出して報いたかったと。
涙はそのレースへの強いこだわりのあかしの一つだと思います。陸上を始めてまだ7か月ということと、国際大会も初めてという辻選手が自分のレースを振り返る時に使う言葉からは、アスリートとしての意識の高さが感じ取れます。リオへ、そして東京に向けて、この悔しさを力に変えていってほしいですね。※辻選手のレースと、インタビュー動画はこちらのページから。
次は、大西 瞳選手・前川 楓選手のT42(切断・機能障害/立位)100m決勝
右側より、前川選手と大西選手
レースを終えた二人と。左:前川選手は17秒84で7位、右:大西選手は18秒05で8位入賞でした。おめでとうございます!
※インタビュー動画はこちらから。
こちらはT42で世界記録を出して優勝したイタリアのMartina CAIRONI選手。大西選手も14.61のタイムには驚愕していましたが、世界のレベルを目の当たりにすることで刺激にもなったようです。※レースの様子はこちらから。
トレーニングトラックの向こうに沈む夕日を望むのも、あと一回。
今日のオリベイラ選手はオフ仕様。ブラジルメディアに囲まれていました。私にも声をかけてくださいました。
その頃ちょうど始まった1500mT11(視覚障害)のブラジルOdair SANTOS選手に声援を送るオリベイラ選手。声援の甲斐あってか4分08秒48のシーズンベストで優勝でした。※レースの様子はこちらから。
こちらは同じ決勝に出ていた、谷口 真大選手(右)と、ガイドの池澤 暁さん。
メディカルチームが駆け寄ったので心配しましたが、咳込みながらもなんとかインタビューエリアまで来ていただけました。
その模様はこちらのインタビュー動画にて。
こちらは1500m・T37(脳性まひ/立位)決勝の井草 貴文選手(真ん中 1番)
井草選手、終わった後は安田 享平ヘッドコーチと反省点などについて話している様子でした。※試合とインタビューはこちらの動画から。
今日は客席スタンドの一番上で大井選手を発見。今日は応援にやってきたそうです。(大ベテランの貫禄が…)
女子砲丸投げの藤田 真理子選手もご一緒でした。
ちなみに会場スタンドの一番上は、一周ぐるりと通路が繋がった作りになっていて、車椅子でも自由に動くことができます。スタジアムの外には大きなエレベーターがたくさん設置されていて、これを使ってスタンドの一番上まで一気に上がることができるのです。
VIP用の玄関。こちらも車椅子でも入って行きやすい、フラットなバリアフリー仕様になっているようです。
今日の越智さんは、おとなしくフォトプラットフォームと呼ばれる写真撮影用の台のところにいました。ちなみに半ズボンでした。(前日は…?こちらのコラムにて)
続いては400m・T51(頸髄損傷・脊髄損傷・切断・機能障害/車いす)のレース。T51のクラスの選手は、足だけではなく両手にも重い障害があり、選手それぞれが技や工夫を積み重ねて記録を狙っている…日本にいるプロデューサーが一番注目しているレースです。
左:平山健悟選手は1分43秒20でした。
井上聡選手は1分28秒34のアジア新記録で決勝進出です!
明日の決勝でベストを尽くせますように。
スタート前の上与那原 寛和選手。400m・T52(頸髄損傷・脊髄損傷・切断・機能障害/車いす)の予選です。スタート地点でもチームメートからの声援を受けて笑顔。余裕の表情だなあと思っていたら、レース結果はシーズンベストの1分02秒74で予選1組をトップ通過!
でもこれに驚いているのではまだ早かったのです!続く佐藤 友祈選手も予選2組をトップ通過!しかも上与那原選手を1秒以上も上回る1分01秒16というタイムでした。2位以下をどんどん引き離していった感があったので、余裕もあったのではと尋ねると「余裕はなかったです」と笑われてしまいました。
※お二人のインタビューはこちらから。
この2人の選手、明日の決勝が本当に楽しみですね!日本時間の31(土)24:20から。
こちらはフィールド競技の選手がトラックにはみ出してくる時に黄色の旗を揚げてくれるオフィシャルの方。会場に流れてきたYMCAの音楽に乗せて密かに踊っていたワンシーン(“Y”のシーン?)をパシャリ。
こちらが写真を撮るポジションなどに誘導してくれるボランティアの方。実はこの後彼らの機転の効いた行動が私の1日を救ってくれることになるとは…!
そして本日最後のレース、5000mT20(知的障害)決勝、中川 大輔選手の登場です。
中川選手(一番左)のレース序盤。最初は自分のペースを守りながらスロー気味の出だし。
その後3位以下が遅れだした後、アメリカのMichael BRANNIGANの後ろにぴったりと付けていきます。
その後残り4周あたりのところから、仕掛けていきました。
そして最後は独走状態に。
日の丸を持った応援団。中川選手を見守っています。
中川選手、1位でゴール!!15分39秒43のタイムでした。※レースのダイジェストはこちらのページをクリック!
レース後の中川選手。ゴールラインで倒れこむかとおもいきや、しっかりとした足取りでチームメートの方を向いて喜びを表現していたため、海外メディアも「彼はまったく疲れを知らないかのようだ!」と驚いていました。私がインタビューをしている後ろにチームメートの皆さんが大勢集まっていて、写真を撮り始めると中川選手に一斉に「笑顔!!」と叫んだので、頑張って笑顔を作ってくださった中川選手でした。
※インタビュー動画はこちらから。
中川選手の金メダル獲得を受けて、日本知的障がい者陸上競技連盟の河合正治監督にお聞きいたしました。
ー知的障害のアスリートがレースに勝つための課題、「壁」となるのは何でしょうか?特に、5000mのような長距離の場合についてお教え下さい。
レースのイメージを作る、想像することが最大の課題です。障害の特性上、イメージをすることが困難な選手が多いです。いつ、どこで、誰が、どのように、なにをするということをトレースすることです。選手によっては、いつ、何をするの2つだけの指示になります。
このことが知的障害(自閉症を含む)のアスリートの最大の課題であると思います。
ー中川選手について、リオ、東京に向けて、どう期待をされていますか?
リオについては5000mという種目が実施されません。ですので1500mでリオパラリンピックを目指します。
東京に向けては、5000mの種目実施に向けての運動と、5000mを軸にスピードを養成して東京を狙います。
ー河合監督、お忙しい中ありがとうございました!
チームメートの皆さんも嬉しそうですね。
お母様と。
歓喜のどさくさに紛れてIPCのビデオを作るのに要請された日本チーム女性陣の皆さん。いい笑顔!
そして表彰式。実は表彰式の時間が早まったのを知らなかった私はメディアセンターで作業をしていました。そのとき突然電話を持ったボランティアの人がやってきて、その電話に出ると、さきほどの写真のボランティアの方からで、「今すぐ来い!」と 言われました。慌ててカメラを持って表彰台の前までの400mくらいを猛ダッシュ。メディアレースより本気で走った(?)おかげで間に合いました…。それにしても持つべきものはわざわざ電話してくれる友達ですね。
表彰式での中川選手。
本当に嬉しそうなチームの皆さん。
何度も万歳をしていました!
日の丸、真ん中で揚がった!
外国人カメラマンが隣で「メダルが見えないんだよね・・・」とつぶやいいたので、「メダル見せてくださ〜い!!!」と大声で叫んだ私。選手たちがメダルを掲げてくれました。カメラマンたちからは「アリガト〜!」と言われました。
お母さまに花を渡しに走っていこうとして、係の人に止められた中川選手でした・笑。
でも最後にはちゃんとお母様に花束が渡ったようでした。
どんな気持ちですかという私の問いかけに「よかったです!」と微笑んでくれた中川選手のお母様。金メダリストに花束をプレゼントされるなんて、どれだけ誇らしいことでしょう。
中川選手、本当におめでとうございます!
大会もあと1日を残すのみ。私がここドーハで経験させていただいたすべての素晴らしいものを切り取ってお伝えしたい。残された1日で選手たちの、そして大会に関わる多くの人の最高の瞬間をしっかりと取材したいと思います。それでは、また明日!
(文・写真 鈴木祐子)
◆全日本人選手の出場スケジュール、試合結果は ⇒日本人選手スケジュール
◆今大会の見どころは ⇒日本人選手、大会の展望は?
◆関連サイト
Road to Rio(競技編)パラリンピックを理解して楽しもう!~陸上競技~
Road to Rio vol.33 「ドーハ、そしてリオへ ~日本パラ陸上競技選手権大会~」
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