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Road to Rio 特別編「2020年8月25日の私たちへ」

2015年08月28日(金)

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キャスターの山田賢治です。東京パラリンピックまで、あと5年。
そこで今回は、2020年、開幕の日を迎えた“未来の私たち”へ、「手紙」を送ってみます。
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2020年8月25日、いよいよ東京パラリンピックの開幕ですね。どのように迎えていますか?


暑さも心配しています。今年の東京は、8月上旬にかけて、35度以上の猛暑日を8日間連続で記録しました。選手もお客さんも熱中症にならないか心配しています。また、体温調節機能を失い発汗できない選手への配慮も求められますよね。少しでも過ごしやすい日が続くことを願っています。


来年はリオパラリンピックという大舞台がありますが、並行して“東京”を見据えた動きも始まりました。今年の8月25日、東京・お台場では、パラリンピックカウントダウンイベントが行われました。


20150828_001.JPG車いすバスケットボールのデモンストレーション。一般の人も参加し、その難しさや楽しさを感じていました。



20150828_002.JPG車いすバスケットボール日本代表の香西宏昭選手とNBLの中村友也選手(サイバーダインつくばロボッツ)による1 on 1。香西選手、高さは及びませんが、素早い動きから抜いてシュートするシーンも。競技を初めて見る観客からは、ボールさばきやチェアワークにどよめきが。


20150828_003.JPG多くのメディアがニュースで紹介しました。私が関わり始めた4年前と比べると、これでも驚きの数!“東京効果”でしょう!


今、新国立競技場の整備計画が白紙になり、総工費の上限をどうするか、など議論が行われています。どんな競技場が完成しましたか?パラリンピックに向けて、選手はもちろん、観客の中にも車いすの人が大勢東京に詰めかけるでしょう。車いす席の確保や競技場のバリアフリーの整備はされていますよね?


ホテルの客室や空港リムジンバスのバリアフリーは?鉄道車両のフリースペースは?多機能トイレは十分確保されていますか?これらすべて、当事者の声を聞いて反映していますか…?
選手村の宿泊施設は、選手たちのことを考えた造りになっていますか。“東京”の宿泊施設は、大会後住宅に転用される予定になっています。去年、韓国仁川で行われたアジアパラリンピックの選手村も同様でした。そこで起きた大きな問題は“エレベーター”。住宅への転用ありきだったのでエレベーターが小さかったのです。その結果、車いすの選手が一度にたくさん降りられない、またエレベーター待ちの選手が続出、という理由で、試合会場にギリギリで到着したというケースもありました。同じ轍を踏まないでほしいのですが。



20150828_004.JPG東京オリンピック・パラリンピック選手村予定地(中央区晴海)。まだ何もない…


アクセシビリティはどうですか?
今、“東京”の参考にしようとしているのは、2012年のロンドンオリンピック・パラリンピックです。
開催期間中活躍したのが、チケット購入者に提供した「経路検索システム」。購入者の90%にあたる249万人が使ったので、混雑予測の確度が高かったようです。車いすユーザーにとっても便利!検索データを集め、1時間単位で、人の動きを予測。混雑が予想される場所では、迂回路が提示されたそうです。また、エレベーターの場所や乗換の少ないルートなども調べられ、会場までアクセスできるルートを計画することができたそうです。


また、5年後はどんな情報技術が普及していますか?ロンドンの5年前、2007年には、まだスマホや、フェイスブックやツイッターといったSNSが広がっていませんでした。でも、こうしたデバイスやサービスは2012年にかけて急激に利用者が増え、前段の「経路検索システム」の利用など大いに活躍しました。果たして、“東京”のときはどんなデバイスが発売され、サービスが出ているのか、楽しみです。個人的には、その技術についていけているか、心配ですが…。


20150828_005.JPG今年8月に行われた「日本の福祉のまちづくり学会」。東京オリンピック・パラリンピックに向けての競技場・交通・情報提供について討論が行われました



競技の方に視点を変えます。
パラスポーツの競技団体からは、東京に向けて、現時点で“危機感を感じている”という声がよく聞かれます。運営スタッフが少ない、しかもボランティアがほとんど。自身の仕事との両立で関わっている方が多いので、今後どこまで仕事量が増えるのか、不安だそうです。また団体への予算は増えるのですが、使える用途が限られていて思うように使えなかったり、経費の処理だったりと、負担感が大きくなるのでは…という声も。さらに、自国開催で“メダル”を獲らねば!という意識は強いのですが、「選手の育成や発掘が思うように進んでいない、見込めない」という悲痛な声も…。


選手の発掘については、去年から「日本障がい者スポーツ協会日本パラリンピック委員会(JPC)」主催で、東京と“関西”で開かれています。今年11月には、東京パラでのメダル獲得を増やすべく、選手の身体能力や適性を見極めて競技の変更を促す選考会が初めて開かれます。こうした試みでメダルを狙えそうな選手は出てきていますか?



20150828_006.jpg今年8月の選手発掘事業(東京・北区)。参加する子ども一人一人の表情は楽しそうで、真剣そのものでした。



5年前の現在、まだまだ東京パラリンピックへの関心度は低い状態です。内閣府が今年6月に行った初めての世論調査で、「関心がある」が70.3%(五輪は81.9%)、「観戦に行きたい」は36.4%(五輪は51.2%)にとどまりました。競技をもっと知ってもらえるように、ファンをたくさん作れるように、我々メディアもがんばらないと!「どの競技場も満席にしたい。」パラスポーツを取材してきた、私自身の強い願いでもあります。


今、国内でのパラスポーツの大会では、空席が目立ちます。声援を送る人がいても、大部分が関係者という状況です。今、ほとんどの大会は入場無料ですが、パラリンピック本番では有料となる訳ですから、一般の人にもっと「生で見たい」と思えるよう、魅力を伝えなければなりません。実際、チケットの売れ行きはどうですか?杞憂に終わっていたらいいのですか。


パラリンピックは、社会を変える力があります。障害って何だろう、と考えさせられます。障害のある人の行動や意欲を阻害しているのは、その人の障害そのものでなく、「“不可能だ”というレッテル貼り」や「過剰な配慮」など、社会の側にあると言われています。日本ブラインドサッカー協会も、競技を通して「障がい者と健常者が当たり前に混ざりあう社会を実現する」というビジョンを掲げています。そんな社会が、東京パラをきっかけに生まれて、後世に引き継がれる“レガシー”となってほしい。


また、来年も現状報告します。リオパラリンピック開幕直前ですね。
少しでもいい報告ができれば(^^)。

 

山田 賢治

 

コメント

山田さん、お疲れ様です。5年後の私たちへ、希望と夢が叶っている思いがします。少なくとも競技場が大勢の観客で一杯になって、選手の皆様の活躍に感動しているでしょうね!これからも、ハートネットTVの役割を信じて応援して行きたいと思います。選手の皆様、お怪我の無いように頑張って下さい。山田さんの一生懸命な取材も楽しみにしています。「ガンバレニッポン」そ

投稿:清満 2015年08月31日(月曜日) 22時41分