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Road to Rio vol.35 「自分を見つめ、世界の大舞台へ ~陸上 強化合宿~」

2015年08月13日(木)

ハートネットTVキャスターの山田賢治です。

猛暑日が続いていた東京を離れ、北海道深川市へ!
今月7日、陸上の短距離と跳躍部門の選手(立位)の強化合宿を取材しました。


20150812_yamaken001.jpg深川市陸上競技場。最高気温は30度にも届かず、合宿には絶好のコンディション!
 


20150812_yamaken002.jpgパラ陸上だけでなく、実業団や学生といった多くの夏季合宿が行われています。
 


20150812_yamaken003.jpg休憩も入れながら、メリハリのある練習。技術的な相談から雑談まで、和気あいあいと話す選手たち。陸上は個人競技でありながら、チーム競技だと強く感じました。

 


リーダー的な存在が、山本 篤 選手。今、日本パラ陸上界を引っ張っている選手です。いち早くトラックに出て練習するだけでなく、義足をどう活かす走りをしたらいいか、積極的に他の選手にもアドバイスをしていました。用具の出し入れも率先して行い、若い選手があわてて手伝う姿も…。


20150812_yamaken004.jpg山本篤選手(33)。クラスはT42(大腿切断など)。走り幅跳び、100m、200mが専門。北京パラリンピック走り幅跳び銀メダル、2013世界選手権走り幅跳び金メダル、2014アジアパラリンピック100m、走り幅跳びで2冠。


最近、調子を上げている山本選手。先月行われた日本選手権では、走り幅跳び(6m36cm)と200m(26秒00)で、自身の持つ記録を破るアジア新記録を出しました。その後、ロンドンで行われたIPC(国際パラリンピック委員会)陸上グランプリファイナルで、走り幅跳び銀メダル、200mで銅メダルを獲得しました。

「6月の海外の戦いは調子がよくなかったが、そこで修正し、7月に入り、いい流れができました。特に、ロンドンでは、走り幅跳びのライバル、ダニエル選手に勝てたことがうれしい。ここのところ勝てていなかったので、負け癖をつけたくありませんでした。」


山本選手のクラスの世界記録は、今年6月にデンマークのダニエル選手が記録した6m53cm。22歳という若い選手の記録に、「自分も、助走、跳躍、着地すべてがはまれば越えられる」と自信を見せています。
今、山本選手は、板バネを長くした新しい義足に代えようとしています。最近の大会では、これまで使っていた義足と2つのタイプを使いながら戦っていましたが、9月の国内大会と10月の世界選手権では新タイプで!と調整を続けています。山本選手自身、義肢装具士の資格を持ち、「自分なりに改良するので義足のメーカーの保証はないが、金属加工技術に優れている埼玉の企業と協力してオリジナルの義足で挑みたい」。

100mの目標は12秒5。200mは25秒5。いずれもリオのメダルラインと設定しています。
念願のリオ金メダルを目指し、まずは世界選手権でリオ出場権を獲得してほしい!


20150812_yamaken005.jpg山本選手と。この写真はテイク2。「笑顔で!」と周りから言われ、この写真(笑)。


同じく、義足のスプリンター、高桑 早生(さき) 選手。今年、社会人になった23歳です。先月のIPCグランプリファイナルでは、国際大会初のメダル。走り幅跳びで銅メダルを獲りました。「記録はよくありませんでしたが、大舞台で結果が出てうれしい。」と笑顔でした。


20150812_yamaken006.jpg高桑早生選手。左は高野大樹コーチ。クラスはT44(片下腿切断など)。専門は100m、200m、走り幅跳び。ロンドンパラリンピック100m7位、200m7位。2014アジアパラリンピック100m3位。


一番こだわっているのは100m。世界と戦える13秒5を目標にしています。去年義足を、多くのトップ選手が使っているアイスランドのメーカーのものに代えました。「ブレードのたわみ方が違うんです。踏み込んで力を与えた分、大きく返してくる感じです」。その上で、体幹を鍛え、軸のぶれない走りを目指しています。


20150812_yamaken007.jpgスタートからいかに義足を踏み込みスピードに乗れるか。繰り返し、練習。(真ん中が高桑選手。左、山本選手。右、辻選手)


20150812_yamaken008.jpg日本女子もリレー種目の出場を狙って練習。辻沙絵選手から高桑選手へ。


「陸上は好きで楽しい。これも大事ですが、今年就職して仕事にもなりました。結果を出すという責任を感じ、プレッシャーもありますが、多くの人と出会うことで視野が広がって競技への向き合い方が変わりました。」

自分の考えをしっかりと話す高桑選手。リオ、そして東京で女子スプリント選手の中心になってほしい、そんな気持ちを強くしました。



山本選手、高桑選手とともに、先月のロンドンでの国際大会でメダルを獲得した多川 知希 選手。「普段なかなか経験できない数万人が見つめる大舞台で3位に入れたことは自信になりました。集中できました」と、調子を上げています。

20150812_yamaken009.jpg多川知希選手(29)。専門は100m。クラスはT47(片前腕切断など)。ロンドンパラリンピック100m5位、4×100mリレー4位。2015IPC陸上グランプリファイナル100m銅メダル。

多川選手は、右腕に義手をつけています。ロンドンパラリンピックの前に、それまでより30g軽い義手を使い始め、今に至っています。素材はカーボンとマグネシウムで同じですが、部品の数を減らし軽くしたそうです。“たった30g”と思ってしまいますが、選手にとっては感覚の上で大きな差。決して、左腕と同じ重さにするのではなく、あくまで走ってみての、左右のバランス感覚の問題だそうです。


20150812_yamaken010.jpgスタート練習。この写真、左から佐藤圭太選手、多川選手、芦田創選手。海外の選手の中には義手をつけない選手もいますが、義手をつけることで、両方の手を揃えてスタートでき、バランスが崩れにくいそうです。


20150812_yamaken011.jpgスタートの動きの映像をチェックする選手たち。一番左が多川選手。


また、こんな話も。
「腕が欠損している選手は、“腕がない”というところだけしか注目されませんが、実はそれによって、体の左右のバランスが違うんです」。多川選手の場合、腕の欠損は右。普段、左腕を振る力の方が強いので、まっすぐ歩く(走る)ために、腹筋は右側の方が強くなるそうです。また、股関節は左の方がかたく、足が出にくいためにケガをしやすいとのこと。「弱い箇所の部分的な筋トレということではなく、左右両方、均等に鍛えていくことが大事です。腕立て伏せも義手をつけて行っています。」。

多川選手の目標は、パラリンピックでメダルが見えてくる10秒台。去年自己ベスト11秒16を出し、「まだまだやれます。がんばります」とリオに向けて意気込みは十分です。


20150812_yamaken012.jpg4×100mリレーでは長らく第1走者。「リードして次につなげるのが自分の役目です」



今回の合宿に参加した、唯一の視覚障害の選手、佐藤 智美 選手。専門は100mです。
先月の日本選手権では、後半スピードに乗り、13秒20の日本新記録(自己ベスト)を出しました。


20150812_yamaken013.jpg佐藤智美選手(25)。クラスはT13。2013世界選手権100m5位。視力は右がゼロ。左は「0.07くらいで、ボヤッと見える程度」。


佐藤選手は、「トラックの白線は辛うじて、なんとなくわかる程度」だといいます。ただ、ラインを見て走ろうとすると目線が下になり、体のバランスが崩れてスピードが落ちるので、普段から「まっすぐ走ることを“体で覚える”」よう意識しているそうです。


20150812_yamaken014.jpg加藤秀治コーチから腕の振りのアドバイスをもらう佐藤選手。


しかし、見えない中で“まっすぐ走る”というのは、想像してみてもなかなか難しいものです。人間の体の筋肉は、利き腕や利き足もあり、左右のバランスが違います。「軸がぶれないよう体幹を鍛える。そして左右均等にトレーニングすることが大事です(佐藤選手)」。
また佐藤選手は、「“足を上げて”と言われても、どこまで上げればいいのか。“足を前に下ろして”と言われても、前ってどこ?と考えてしまう。なかなかイメージできないのです」と視覚に障害があるがゆえの難しさを話します。「走り方は自分で見えないので、周りに見てもらってアドバイスをもらうことが大きな力になります」。

“主観”と“客観”のせめぎ合いを繰り返しながら、一歩一歩世界の大舞台に挑もうとしています。
今年の世界ランキングでは、10位に入ろうかという順位。アジアランキングでは1位の佐藤選手。目標の12秒台を出し、リオのメダルを引き寄せてほしい!

これからも注目の陸上選手を紹介していきます!


◆関連ブログ
Road to Rio vol.33 「ドーハ、そしてリオへ ~日本パラ陸上競技選手権大会~」
Road to Rio vol.12 「世界記録を通過点に ~陸上 加藤由希子選手~」
Road to Rio vol.2 "夏冬通してのメダルを目指して"~車いすマラソン・久保恒造選手~

 

リオ・ピョンチャン・そして東京へ。
すべてのパラリンピックを盛り上げるために、ハートネットTVは取材を続けていきます。

コメント

暑過ぎる中、取材お疲れ様でした。選手の皆様の頑張っている姿に勇気を頂きます。山田さんのお陰でパラリンピックの事が色々と分かり、応援する楽しさが湧いて来ます。選手の皆様のご活躍をお祈り致しますと共に、山田さんもお身体に気を付けパラリンピックの取材も頑張って下さい。いつも応援しております。

投稿:清満 2015年08月15日(土曜日) 11時37分