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Road to Rio vol.22 「"一球入魂"で勝利をつかめ! ~ボッチャ~」

2015年03月19日(木)

ハートネットTVキャスターの山田賢治です。
 

みなさん、「ボッチャ」というパラリンピックの競技を知っていますか。
なかなか馴染みがないと思いますが、世界50か国で行われている人気競技です。ヨーロッパで生まれ、重度の脳性麻痺の人たち、もしくは同程度の四肢の重度機能障害者のために考案されたスポーツです。身体の制御力、精神力、さらには先の先まで読む戦術が求められます。

ボッチャとは⇒こちらをクリック
 

先月、日本ボッチャ選手権大会を取材しました。
ロンドンパラリンピックの時に番組で特集しましたが、生で見るのは初めてでした。

◆過去の番組より:2012年6月26日放送 「シリーズ パラリンピックへの挑戦 一投に懸ける―ボッチャ 団体戦チーム―」
 

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今年で16回目。会場は千葉ポートアリーナ。静まり返ったコートの中に、選手たちの緊張感があふれていました。

大会では、1対1で戦う個人戦が行われました(他にもボッチャには団体戦があります)。障害の程度によりクラスが分かれていて、同じクラスの選手どうしが対戦します。カーリングやビリヤードとルールが似ているボッチャ。ジャックボール(目標球)と呼ばれる白いボールに、赤・青のそれぞれ6球ずつのボールを投げたり、転がしたり、他のボールに当てたりして、いかに近づけるかを競います。すべてのボールを投げた時点で、よりジャックボールに近づけた方のチームに得点が入ります。


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日本の第一人者、廣瀬隆喜選手。脳性麻痺のために、また普段パソコンを使った仕事のために、ボールを投げる左腕の筋肉がこわばってしまうそうです。大会前、マッサージで筋肉をほぐすなど身体のケアもとても重要、と話していました。


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白いジャックボールに、赤と青どちらのボールが一番近くに寄せたか、審判が測定器具を使って、厳密に測ります。
 


競技の第一印象は、“繊細!”。“ちょっとのずれ”が勝敗に大きく関わります。投げたり転がしたりする角度、ボールの強さや回転、使うボールの硬さ…。さらには、会場の湿度や床の材質によって、ボールの転がり方も異なります。「考える」部分もあれば、経験に基づく「感覚」に頼る部分もあります。個人戦は、すべて選手一人で判断し、プレーしなくてはなりません。

ボッチャでは、障害が重くボールを投げることができなくても、自分の意思を競技アシスタント(介助者)に伝え、身体で少しでも動く部分を活かし、木製のスロープ(ランプ)を使ってボールを転がすクラスがあります。


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ヘッドギアを使い、ボールにひっかけて離し転がす。この前に、転がしたいボールの強さを考え、選手が競技アシスタントにランプの高さを指示する。その後、投じたい方向の角度を細かく伝える。


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口でくわえた棒を使う選手。他にも、アゴや手の指などで、転がす“最後の一押し”をする選手もいます。


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アジアパラ銀メダル、日本期待の20歳、奈良淳平選手(中央)。リオ、東京に向けて「1球1球の精度を上げたい。自分との戦いです」。


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小学4年から競技を始めた奈良選手。「自分にもできるスポーツがあるのか」と衝撃を受けたといいます。「ボッチャを始めて10年。競技を通していろんな人と出会うことができ、世界が変わった。ボッチャに感謝している」と、熱く話してくれました(左は競技アシスタントの新井大基さん)。

 

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競技アシスタントはコートに背を向けて座り、「車いすを安定させる」「選手にボールを渡す」「ランプの角度を調整する」ことはできますが、選手に対し競技に有利となる情報を与えたり、合図を送ったりすることは、違反。攻防がどうなっているか、振り返ってコートを見ることはできません。


日本は今、若い力が台頭してきて、去年は世界選手権でベスト8、アジアパラで銀メダルを獲得するなど、着実に世界と戦う力をつけています。来年のリオパラリンピックに向けて、今年は大事な国際大会が続きます。東京パラに向けて、競技のことをもっと多くの人に知ってもらうためにも、リオで活躍する選手たちの姿を紹介できれば、と強く願っています。


リオ・ピョンチャン・そして東京へ。
すべてのパラリンピックを盛り上げるために、ハートネットTVは取材を続けていきます。

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