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Road to Rio vol.19 「"新たな自分"を追い求めて ~パワーリフティング~」

2015年01月29日(木)

ハートネットTVキャスターの山田賢治です。
 

1月29日“チエノバ”の「Road to Rio」で紹介した「全日本障害者パワーリフティング選手権大会」。番組の中では紹介しきれなかった大会の様子をリポートしますので、こちらもぜひお読みください!

パワーリフティングは、主に足に障害のある選手が出場します。体重別で階級が別れていて、障害の程度や種類は関係ありません。各選手、置かれた状態の中で、自分の限界に挑みました。

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選手にとって、バーベルを上げるときが“勝負”。見ているこちらまで力が入ります!


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大堂秀樹選手と。「観客が多いほど燃えます!」

196キロの日本記録を持つ第一人者、大堂秀樹選手(88キロ級)。交通事故による脊髄損傷で、胸から下は麻ひして感覚がなく、足で踏ん張る力や腹筋は使えません。「胸」と「腕」の筋力が生命線です。この日は、前の週に膀胱炎を患って発熱し、十分な練習はできなかったということで(麻ひしているので、排尿がうまくいかず膀胱炎になりやすいそうです)、記録は180キロに終わりました。数日練習できないだけでも、筋力も体重もすぐに落ちるとのことで、この競技、まさに「継続は力なり」。日々の鍛錬の積み重ねが大事なことを痛感します。


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小林浩美選手。小さな体のどこからパワーが出るのでしょうか。

日本の数少ない女子選手の1人、45キロ級の小林浩美選手。大会では65キロを成功させました。小林選手は、末端の神経から麻痺が進み、筋力が衰える難病、シャルコー・マリー・トゥース病を患い、パワーリフティングを始める前、寝たきりのときもあり、歩くのもままならなかったといいます。そこからパワーリフティングに出会い、トレーニングがリハビリにもなって、医師からは「医学の世界ではあり得ない」という回復ぶりで国際大会にも出場する選手に成長しました(去年のアジアパラで銅メダル)。
大会では、自分の体の状態と向き合いながらの戦いです。小林さんは手の親指の付け根の筋肉が効かないために、放っておくと外に開いてしまうのでバーを持つことができません。そこで、控えの場所では、親指が開かないように何度も内側に押さえていました。



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宇城元選手は、障害のために背中が伸びにくく、ウォーミングアップでは、ロール型のクッションで体を反らせる動きをじっくり行っていました。80キロ級で186キロを上げ、日本新記録樹立!


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車いす生活のために足は細いが、鍛え上げた上半身。“パラリンピックの父”とされるグッドマン博士の言葉“失ったものを数えるな。残された機能を最大限に活かせ”の精神そのものです。

 

大会を通して感じたのは、“判定の厳しさ”。バーベルの「上げ下げ」や「止め」など、一連の動きに厳密さが求められます。「上げ下げ」が地面と水平か、一定の速度か、また、「しっかり止めたか」など、素人が見ると「これは成功だ」と思った試技でも、審判により「失敗」の判定が下されたことが数多くありました。当然、障害者だからといって甘い判定にはならない。“少しの動きのブレ”も許されません。こうした厳しいルールの中で成功を目指すことは、選手にとって大きな壁であり、でもその先に感じる喜びや自信は、自分をさらに奮い立たせる原動力になるのではないでしょうか。


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観客席から選手に大きな拍手と声援が。選手を鼓舞し、力を与えます。



リオ行きを決めるためには、7月のアジア大会に参加し、さらに年間を通して行われる国際大会で1キロでも記録を伸ばし、世界ランキングを少しでも上げることが求められます。

1回1回の挑戦に自分の全身全霊をぶつける競技、“パワーリフティング”。
自分で自分を追い込んで鍛え、“これまでの己”を超える。
そして“新たな己”を塗り替えていくことが、リオへとつながっていく。
パラリンピックの大舞台で“成功”したときの笑顔を楽しみに、これからも注目していこうと思っています。


リオ・ピョンチャン・そして東京へ。
すべてのパラリンピックを盛り上げるために、ハートネットTVは取材を続けていきます。

コメント

パラリンピックでパワーリフティングを初めて観戦しました。持ち上げられるのか?持ち上げられないのか?見ているこちらはこれだけの単純なことしかわかりませんが、持ち上がった時の感動が凄く、また見る機会があったら観戦したいと思う競技でした。日本の選手のみなさんの活躍を期待しています!

投稿:sega 2015年07月01日(水曜日) 10時31分

山田さん、お疲れ様です。テレビを見ながらいつも胸が熱くなります。障害者の皆様の頑張っている姿に本当に勇気を頂いております。もう少しテレビの放送があってもいいと思いますが、いかがなものでしょうか?国枝選手の活躍している姿などが見られなかったことが残念です。障害者の皆様の活躍を楽しみにしています。お怪我のない様に頑張って下さい。いつも応援しています。

投稿:清満 2015年01月31日(土曜日) 00時35分