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Road to Rio vol.7 "金"のタマゴ ~パラ水泳女子高生トリオ~

2014年08月07日(木)

ハートネットTVキャスターの山田賢治です。
 

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7月20日、21日と大阪で「ジャパンパラ水泳競技大会」が開かれました。予選から決勝へと調子を上げ、タイムを縮めた選手も多く、2つのアジア新記録が!出したのは、高校生の選手たちです。将来性十分の、リオパラリン“金”のタマゴ、女子高生トリオを紹介しましょう。


池 愛里(いけ あいり)選手

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何と言っても、魅力は177センチを超える身長(本人いわく「まだ成長中」)。しかも、東京の高校に通う1年生です。
長い手足を生かした、しなやかなフォーム。他の選手をグイグイと引き離す泳ぎで、今回、50m自由形で、自らの記録を塗り替えアジア新記録を樹立(世界記録とは2秒差)しました。50m、100m自由形、100m背泳ぎのアジア記録所持者です。

 


小学3年生のときに、左大腿に悪性腫瘍(小児がん)を発症し、手術。その影響で左足首から先は麻痺していて思うように動きません。そのリハビリのために水泳を始め、中学1年から本格的に練習を始めました。まだ5年も経っていません。
荒削りながらも、その素質は抜群!!峰村史世コーチは、「ワンストロークが大きいのが魅力。池選手の障害クラスは世界のレベルが上がっていて、競争が激しく、今のタイムだとまだ世界で戦えない。世界でトップを競える選手になってほしい」と、期待を込めています。
身長が伸びる秘訣は、「よく食べ、よく寝る」。12時間寝る日も。「練習は楽しくないが…、ベストが出たときはうれしい」。インタビュー中、常に微笑みながら話してくれました。


鎌田 美希(かまだ みき)選手

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400m自由形でアジア新記録を樹立した、奈良の高校2年生です。第一印象は、“力強い!”。肩の付近の筋肉が盛り上がり、泳ぎもダイナミックです。というのも、鎌田選手は、生まれながらに両足の膝下が欠損していて、上半身主導で泳いでいるからです。長距離が得意で、後半バテないのが持ち味。「もっと前半から勝負していくこと」を課題として挙げ、ウェイトトレーニングで体幹も鍛えています。
アジア記録については、「あまり意識していない。世界と比べたらまだまだ」と、目標はあくまでも“世界”と言い切る鎌田選手。競技は、小学3年生から。生まれたときから水が好きで、家族から「水に入れても笑っていた」と聞かされたそうです。小さい頃から勉強でもスポーツでも、“負けず嫌い”。ぜひその競争意識で、世界の頂点を狙ってほしい!



一ノ瀬 メイ(いちのせ めい)選手
 
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めっちゃ明るい、京都の高校3年生。父はイギリス人、母は日本人です。去年秋のアジアパラユースで3種目を制し、この大会でも大会新を連発。タイムがグングン伸びている注目の選手です。種目によっては、この1年でタイムを8秒も縮めたという一ノ瀬選手。右腕の肘から先を欠損していて、住んでいる家の近くにプールがあったことがきっかけで、9歳から本格的に練習を始めました。キックが得意ですが、その力を上半身の動きが打ち消していたそうで、それが、泳ぎ込みで連動できるようになり、タイムが上がってきたそうです。一番“世界に近い”種目は50m自由形。100m平泳ぎ、200m個人メドレーでも世界に挑みます。
「腕がなくてよかった。水泳とも出会えていなかったし、こうやって仲間とも出会えていなかった」と、まっすぐ見つめて話してくれた一ノ瀬選手。あふれる笑顔の中にも、自らの障害への向き合い方や飽くなき向上心に、世界に立ち向かえる精神的な“芯の強さ”がうかがえました。


3人とも仲良し。ともに「クラスは違うがいい刺激。高め合っていきたい。リレーでもメダルを目指したい」と話しています。10月のアジアパラ出場も決定しました。まずは、アジアで頂点!その先には、リオ、そして東京が待っている!!


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8月上旬、女子選手中心の長野合宿も取材。1日に10,000メートルのハードな泳ぎ込み


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ロンドンパラリンピック競泳日本代表ヘッドコーチの峰村史世コーチ。「選手に障害があっても、秘めた能力をどこまで引き出せるか」。温かさと厳しさあふれる指導。


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峰村コーチの言葉を熱心に聞き入る、池選手(右)、一ノ瀬選手(左)




リオ・ピョンチャン・そして東京へ。
すべてのパラリンピックを盛り上げるために、ハートネットTVは取材を続けていきます!