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Road to Rio vol.5 大舞台が生み出す"変化のエネルギー"

2014年07月18日(金)

ハートネットTVキャスターの山田賢治です。
 

ソチパラリンピックから4か月。
先日、メダリスト4人への特別賞の贈呈式が開かれた。
久しぶりの再会で、会うのが楽しみだった。この4か月をどう過ごしていたのか。次のステップに向けて動き始めているのか、選手に聞いた。


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左から久保恒造選手(クロスカントリー/バイアスロン)、森井大輝選手(アルペンスキー)、鳥原光憲 日本パラリンピック委員会 委員長、狩野亮選手(アルペンスキー)、鈴木猛史選手(アルペンスキー)



ソチから学び、羽ばたく

バイアスロンの銅メダリスト、久保恒造選手。ソチでのラストレース後の表情が忘れられない。何か、吹っ切ったような清々しい表情。レース後に厳しい表情を見せることが多い選手だけに、大舞台で戦いきったということは容易に想像できた。そうなると、次へのステップに全力投球できるだろう。
久保選手は、今、冬の競技から一線を退き、車いすマラソンで2年後のリオを目指している。その久保選手と4か月ぶりの再会だ。驚いた。体つきが変わっていた。聞くと、体重が4キロ増えたという。胸回りも、ソチパラリンのときは98センチだったが、今は104センチ。ソチの前に着ていた服が、きつくて着られないという。当日着ていたワイシャツの首回りも少しきつそうに見えた。


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久保恒造選手。話し方がとても穏やか。ストイックさはどこから来るのか、想像できない。


心肺機能は冬のノルディックで鍛えられたが、陸上で使う筋肉は短期間で作っていくしかない。今、ウエイトトレーニング重視で腕だけでなく、必要な筋肉全体を増強中。さらに車輪を操るテクニックも身体に染みこませている。でも、練習量だけ上げればいいわけではない、ということを、ソチを目指す過程で学んだ。


2014年1月15日放送 シリーズ ソチパラリンピック(3)
究極の走りへ!最強ロシアに挑む ―ノルディックスキー 久保恒造―

アスリートは、時に「これだけやった」と自分自身を納得させるために、練習量重視になったり、オーバーペースになったりすることがある。久保選手も一時期、練習量が結果に結びつかず、苦しんだことがあったという。しかし、スポーツ科学の専門家にアドバイスをもらい、大きな転機に。「計画的にトレーニングしていく大事さは、ソチへの道のりで養った」と話す久保選手。結果に結びついたという根拠があるから、自信があるから、ぶれない。今、栄養バランス重視の奥さまの料理も後押しし、精神的にも身体的にもさらに大きく成長しようとしている。
リオの出場権は「ギリギリで選考されるのではなく、圧倒的な強さで選ばれたい」と話す。
選考レースは、今年12月から。ソチは通過点。進んできた道のりの方向を変え、リオ、さらには2020年の東京を見据え、懸命に車輪を回す。



金メダル2個での“惨敗”

アルペンスキーで2個の金メダルを獲得した狩野亮選手。輝かしい成績で、帰国後、ハートネットTVだけでなく多くのメディアに登場した。


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狩野亮選手。メダリストへの報奨金が引き上げられ、「パラリンピックがスポーツとして評価された結果だと思う。より一層頑張って、競技力をさらに上げていきたい」


狩野選手とも4か月ぶりだ。挨拶したあと、本格的には始動していないだろうと思いながら、「今、トレーニングは?」と、軽く聞いたところ、意外な答えが返ってきた。
「ソチ直前のトレーニングメニューにすでに引き上げました」。
「えっ、もう?」と思わず聞き返す。すると、こんな答えが。
「実は、ソチは悔しさでいっぱいだったんです。」
「2個も金メダルを獲ったのに?」
「初日の滑降、2日目のスーパーGが金で幸先よかったのですが、そのあとのレースはゴールできないレースもあって悔しさだけが残った。初めてパラリンピックに出場した、8年前のトリノで惨敗したときと同じ気持ちだったんです」

そして、こう話す。
「悔しさが残ったから、逆によかったのかも。」
もしかしたら、「この成績で満足するな」ということかも知れない。ソチでの“惨敗”が、次へのエネルギーにつながっている。
大きな目標は、来年3月、カナダで開かれる世界選手権。ソチでは叶えられなかった「日本勢表彰台独占」をめざし、この夏は南半球のニュージーランドで練習を積む。


リオ・ピョンチャン・そして東京へ。
すべてのパラリンピックを盛り上げるために、ハートネットTVは取材を続けていきます。