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【出演者インタビュー】尾木直樹さん「脳科学が学校と家庭、地域をつないでくれる」

2014年11月10日(月)

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10月29日放送
シリーズ リハビリ・ケア新時代
反響編「子どもの睡眠 SOS」
ご出演の尾木直樹さんにメッセージをいただきました。

 

《尾木直樹さんプロフィール》

教育評論家。法政大学教職課程センター長・教授。 愛称は「尾木ママ」。22年にわたる教員経験を生かして、子育てと教育、メディア問題など現場に密着した調査・研究を行なっている。臨床教育研究所「虹」所長。

 

――第4回は視聴者からの反響が最も大きかった「子どもの睡眠の乱れ」について掘り下げて考えました。尾木さんは日々教育の現場に立たれておりますが、この問題について実感はありましたか。

実感はありましたけども、ここまで広範囲になっているとは思わなかったですね。去年の11月に小学5年生から高校3年生を対象とした放課後の生活に関する大規模な調査が行われたんですが、その結果を見ると「もっとゆっくりしたい」と答えた小学生は約74パーセント、中高生だと約85パーセントに達するんです。その裏側にある生々しい実態の中には、もしかすると睡眠障害の問題も含んでいるんじゃないかなという気がして、今日はかなり衝撃を受けました。

一方で、最近の脳科学の進歩によって起きられない子どもたちの実情がかなり正確につかめてきていますよね。われわれ教育関係者はすぐ“運動”と捉えて、「夜9時には寝ましょう」とか、「それができた子は何人います」とか、数値ばかりの成果主義に陥ってしまうんですけど、脳科学を元にした医師からのアドバイスで睡眠をチェックし、科学的に改善していくことは素晴らしいと思いました。

 

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――勉強や部活の忙しさに加え、インターネットやゲームが普及したことも要因のひとつだと考えられています。

中高生のスマホの所有率は非常に高くなってきていますね。高校1年生でほぼ9割です。パソコンなんて使わないで、ほとんどがスマホになっていて、そこでゲームやメッセージのやりとりをしているんです。そして、その状況は年々変わってきているから、学校現場も本当に悩んでいるし、これは学校で対処すべきことなのか、それとも家庭のことなのかという線引きも曖昧になっているんです。

そこに医学や脳科学の領域から迫っていくことは、家庭や学校、地域など全部をひっくるめて束ねていく太いロープになるというか、みんなをつないでくれる役割になるのではないかと期待しています。いいきっかけになれば嬉しいですね。

 

――ネットリテラシーとは別の意味での「使い方」を教えることも重要になるかもしれません。

そうですね。スマホ自体は何の罪もない。SNSだって使い方次第では非常に便利ですし、今は好きな子に告白する時もSNSで行うようになってきているんですよ。「別れるのも簡単でいいわ」って(苦笑)。そういうツールの変化の中で、どういうふうに“いい使い手”になれるかということが問われていて、それが睡眠障害を克服するヒントになるし、学力や集中力の低下、キレる子を防ぐことにもつながる可能性があるわけです。

ですから、自分をコントロールできるような自立した子どもをどう育てるかということを学校や家庭も含めた社会全体で考えていかなければいけませんね。そういう意味でも科学的な説得力というのは大きいですよ。今回の番組を本当に皆さんにしっかり見ていただきたいですね。

 

――電子機器の利用は家庭でルールを作ることが大切だとお話されていましたが、どのようなポイントを抑えながら作ることが必要なのでしょうか。

いくつかポイントはあるんですけども、一番大事なのは、親が勝手にルールを決めてしまうのではなくて、「子どもと一緒に作る」ということ。そして、できればその作ったルールを子ども自身に書いてもらうといいですね。親が書いたルールを押し付けて、「紙に書いてあるじゃない!」と厳しく言うのではなくて、可愛く作って、それをみんなで大事にする。

そして、そのルールの中に必ず入れてほしいのが、「自分の部屋や寝る部屋にはスマホを持ち込まない」ということ。夜はリビングで充電するというのをルールにしてほしいですね。

また、時々ルールをやぶってしまうことはあるかもしれないですから、軽いもので構わないので一応ペナルティを作ることも必要です。一日ママが預かるわ、みたいにね。ただ、いざルールを作っても合わなかったということは往々にしてあるので、その時は相談して、ルールの変更もありうるということも伝えておくことが大切だと思います。

 

――ただ、両親も子どもの友人関係のことを考えると、なかなかルールを作りづらいかもしれません。

確かに子どもは友だちとの関係が強いし、依存もしているから、仲間の中でひとりだけルールを守るというのは大変です。そんな時は親を悪者にして、「うちのお母さんはどうしようもないんだ。夜9時以降に使うとお小遣いを減らされるから返事ができないんだよ」と言ってしまうんです。よくお母さんたちは「友だち付き合いを考えると制限ができない」と言うんですけど、それで実際に友達関係が壊れたという話は聞いたことがないですよ。そんなことに振り回されないで、親たちもしっかりしてほしいです。

 

――日本は世界的に見ても睡眠時間が少ない国ですし、親子で一緒に改善していくのもいいかもしれませんね。

そうですね。お父さん・お母さんもこんなに努力しているよって。もちろん大人だから子どもと同じレベルにはできないけれども、そういう姿を見せるということは大事ですね。

 

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