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【出演者インタビュー】荻上チキさん「貧困は個人の問題だと考えていたら、ますます社会は苦しくなる」

2014年05月08日(木)

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4月30日放送(5月7日再放送)
シリーズ 子どもクライシス
第4回 「子どもの貧困」寄せられた声をもとに~
ご出演の荻上チキさんにメッセージをいただきました。

 

《荻上チキさんプロフィール》

1981年生まれ。評論家。ニュースサイト「シノドス」編集長。メディア論をはじめ、政治経済や福祉、社会問題から文化現象まで幅広く取材し分析。著書に『ウェブ炎上』『ネットいじめ』『僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか』など。

 

――今回は日本に広がる「子どもの貧困」について見ていきましたが、
収録はいかがでしたか。

今は多くの自治体で“削り合い社会”が進んでいます。
財政難に陥った政治、行政、あるいは国家がさまざまなところで予算を削ったり、
今まで支出されていたものの中にも不要な物があるんじゃないかといって
削減しているわけです。
そして新しい社会問題が出てきても、それに対して予算を出せない事態が続いている。
そうしたなかで民間の工夫などをいろいろと紹介しながら、
前向きにできることを提案していくのはすごく大事だと思いました。
一方でその“削り合い社会”のなかには
「あそこからは予算を削ってもいいんじゃないか」ということを、
内実を理解せずイメージだけで議論してしまう人があまりに多いのも事実です。
貧困対策の議論というのはまだまだ個人問題だと思われていて、
社会問題と理解されていない面もあるので、
もっともっと情報を出していかなければいけないなということを感じながら収録に望みました。

 

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――貧困対策は個人問題ではなく社会問題であるというのはどういうことですか。

この問題を放置しておくと個人が不幸になるだけではなく、
実は社会全体もどんどん生きづらくなってしまうことになりかねません。
格差が広がると治安の問題もでてきますし、
貧困の人が増えると税収も減ることになるので、ますます社会も苦しくなりますよね。
ですから、「貧困を解決することは社会全体のためにもなる」という発想を
多くの人が持つことが重要だと思います。

 

――子どもの貧困が広がっている今の日本の状況は、国際的に見るとどうなのでしょうか。

「子どもの教育投資」という面で言えば、
先進国の中ではかなり課題が山積みな状況です。
教育投資によって将来ひとり一人に再分配される金額のGDP比は
非常に少ない数字になっていますし、教育水準という点でも、
ひとり当たりの教師が見る児童の数は平均より多い。
そして、子どもを豊かな環境で育てられるか否かは、
各家庭の教育への支出に大きく左右されるという状況になっているんですね。
いま日本では少子化問題や子どもの学力低下、あるいはしつけ問題など、
いろいろなことが騒がれていますが、
そういったことに文句を言いたいのであれば
きちんと子どもや教育に投資をしてから言ってほしいという思いはありますね。

 

――今後どのように考えていく必要があると考えていますか。

子どもの貧困の問題に関しては、
マクロベースとミクロベースの両方の対策を議論したほうがいいと思います。
マクロベースでは、日本は他の先進国と比べて
子どもに対する支出額が少ない国でもありますし、
まだまだ国の施策として有効な議論がたくさん残っているので、
それを進めるだけでもずいぶんよくなるというのは、ひとつ言えると思います。

 

――具体的にはどのような施策があるのでしょうか。

例えば日本は就学前教育がずいぶん遅れているんですね。
就学前教育というのは0歳から5歳までの段階の教育で、
保育所に誰でも託児をできて、その段階でしっかり言葉の教育をしたり
体を動かして遊ぶというものです。
そういう教育をすることが長期的な格差是正には最も有効だというデータもあるので、
その理解をより深めていくこともまた重要だと思いますね。

 

――ミクロベースではどのようなことが考えられますか。

ミクロベースでは、何よりもいま僕らの社会が
どういった状況になっているのかということを
知る人が増えないと、募金する人も増えないし、
その問題を選挙時の優先順位に掲げる人や政治家に要望する人も増えませんよね。
ですからメディアを経由して情報を取得している人が増える、
あるいはその情報の流通過程の精度を高めることが大事だと思います。
そして、そのことをもっとメディアに要望することも大事だし、
それを受けていろいろと議論をかわすことも必要。
そうしたミクロの積み重ねがマクロの政治を変えるため土台になっていくので、
まずは情報共有、あるいは情報調査から始めていくことかなと思いますね。


◆シリーズ「子どもクライシス」
第1回  貧困・追いつめられる母子

本放送4月1日(月)、再放送4月7日(月)

第2回  失われゆく“居場所”

本放送4月2日(火)、再放送4月8日(火)

第3回  ある地域の挑戦

本放送4月3日(水)、再放送4月9日(水)

第4回  「子どもの貧困」寄せられた声をもとに~

本放送4月30日(水)、再放送5月7日(水)