【大会8日目】NHKソチパラリンピッククロスカントリー実況解説者・長田弘幸さんに聞く。
2014年03月16日(日)
- 投稿者:出演者
- カテゴリ:ソチ パラリンピック 2014
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大会8日目の放送を終え、
クロスカントリー実況解説の長田弘幸さんにお話を伺いました。
長田弘幸さん
1998年の長野パラリンピックから4大会連続出場。
シットスキーを使用し、クロスカントリー、バイアスロンに出場している。
長田さんというとこの分野の先駆者というか、さきがけとだと思うのですが、あらためて競技を始められたきっかけを教えていただけますか?
もともとケガをしてから・・・96年くらいからなんですけど、18年ぐらい前ですかね。長野が98年でしたので、その2年前、車いすマラソンをやっていまして、その車いすマラソンの友人が誘ってくれたのがきっかけです。
どのようなケガをされたんですか?
バイクで交通事故を起こして。それで脊髄損傷になりました。
始まりは長野パラリンピックの前、ということだそうですが、その頃、日本にはシットスキーのノルディックをやられている方っていうのはどのぐらいいらっしゃったんですか?
10人弱ぐらいだったと思います。長野パラリンピックがあるので、選手の募集をしたんですね。それで何人か立候補した中の私もその一人だったんですが。車いすの選手は10人ぐらい・・・10人もいなかったと思います。
そうすると最初の頃は練習はどうされていたのですか?
それがですね、私が始めた頃にNHKさんの取材を受けたのですが、その時、ノルウェーの方に行かせていただいたんです。そこでいろいろトレーニング方法とか学んできました。本当にあれがもう。私のきっかけの原点というか。そんな感じになっていますね。
その前の状況はどうだったのでしょう?
もうとりあえず長野パラリンピックがあるからって、選手を募集したんですけれど、やっぱりそれまでやっている人もあまりなくて。この競技も自分たちとしてどういう風にトレーニングしていいか分からなかった状況でした。
最初の頃は模索の連続だったと。
そうですね。何をどういう風にやっていいのかも分からなくて、とりあえず何となく持久系のスポーツということで車いすマラソンを基本にした練習をやっていました。
競技としてはだいぶ違いましたか?車いすマラソンとは?
車いすマラソンはこげばこぐほどスピードに乗っていけるんですけれど、スキーはアップダウンがあるので。こがなければ下がってしまいますし。まともに上半身だけの力だけの勝負なので。スキーの操作とかも難しいですし。自然との戦いでもあるので、思った以上に過酷な競技だなという感じがしました。
北海道・札幌のご出身ですよね。クロスカントリースキーなどをされたことは?
やったことは無かったです。クロスカントリーの競技も見た事が無かったですし。もともとクロスカントリースキーっていうのは知っていたんですけれど。競技のスキーの板とかも見た事無かったですし。ワックスがどうだとかそういうのも全然分からなかったです。
本当に手探りの中で始められた。そのご自身のパラリンピックでのご経験というのが振り返ってみると、どういう風に思われますか?
4大会行かせていただきましたが、やっぱりこういう競技することを通じて自分としては成長させてもらえたのかなと思います。
解説をしていただく中で、気を付けていることはどんなことですか?
まずはこういう競技があるという事を知ってもらうことですね。、まだまだマイナースポーツなので。競技自体を知らない方がいると思うので、なるべく丁寧に伝えられればいいかなと思っています。分かりやすくっていうんですかね。
ぱっと見ただけでは分からない大変さとかおもしろさがあるということでしょうか?
バイアスロンの射撃でトップ選手は簡単に全部当てているように見えちゃうかもしれないですが、実際はコースを走ってきて、走っている最中は心拍も1分間に180以上越えていますし、それを呼吸を調整しながら自分の撃てるタイミングまで心拍を落として、それでいかに早く正確に射撃を行うかっていう競技なんです。静と動のよく言われるのですが、相反することをやっているのがバイアスロンなので、そういうおもしろさがありますし、競技の最中にもいろいろ駆け引きがあるというのが分かってもらえればいいかなと思います。
駆け引きとは?
例えばライバルの選手の前にノーミスで射撃をしますと、ライバルの選手がプレッシャーを感じるんですよね。そのプレッシャーで相手選手ががはずすと、そこでやっぱり順位が大きく変わったりする事もありますので。例えば走力が無い選手でも射撃がノーミスで行けばどんと上位に来るという事も考えられる競技なので。そういうところが面白いのかなと思います。
他の選手がノーミスかどうかは分かるんですか?
はい、だいたい分かります。射撃の射場で取ったデータをコースにいるコーチ達に無線で飛ばすので、今何番手とかそういうのが全部滑っている選手の様子はだいたい分かってきます。
教えてもらわない方が落ち着いて滑れるとかは?
まぁ選手によっては必要な情報と必要じゃない情報っていうのがあるので。例えば正確な順位を知りたいという人もいれば、そこまでいらないという人もいます。
長田さんはどちらでしたか?
自分は順位を知りたかった方です。あと前の選手と何秒差とか。そういうのを聞きながら行くと、頑張るポイントが明確に分かるので。
やっぱり射撃を1発外すと結構ショックってありますか?
走るのにも影響が出て来ますね。ノーミスで行くと走りもすごいノリノリで行けるんですけれど。やっぱり最初に5発ハズしたとかってなったら「もう終わった」って感じで。
なるほど・・・。今回のソチ大会、実況解説をされていて、何か思った事とかありますか?
今もう世界のトップ選手はほとんど射撃を外さなくなってきているんで。日本人選手はいかに射撃の動作を早くして、今度は走りで食らいついて行かなければならないっていうのを改めて感じました。射撃の正確さと、射撃を早くすること、それと走りで戦えないと、ちょっと相当厳しいかなっていう感じがしています。
これから先、パラリンピックはどういう方向に進んで欲しいと思われますか。
東京パラリンピック、東京でやることも決まったので。やっぱり競技人口がもっと増えなければ。クロカンなんかは特に競技人口が少ないので。競技人口、こういうパラリンピックを見て始めたいという人がもっと増えればいいかなと思います。もっと競技人口を増やして競技のレベルも高くしていければいいのかなと思っています。
今回の競技人口が増えればいいなという思いも込めて、解説していただいたのですね。改めて、今後の期待はいかがでしょうか?
そうですね、今やっていることって多分自分たちがやっていた時から、競技のレベルもすごく上がってきて。テクニックなんかも別ものになってきている感じがしますね。はっきり言ってシットスキーのレベルは別の競技になっているような気がします。タイムとかトップ選手がやっているような技術は特に。例えば下りのカーブなんかで片方のスキーを浮かせてばーっとカーブを曲がっていったりとか、そういう技術っていうのはすごいなと思うので。そういう技術、レベルアップに対応できるように日本の選手もレベルアップしていって欲しいと思っています。
◆シリーズ ソチパラリンピック
3/20(木)夜8時、熱戦の舞台裏を生放送!
過去放送
(1)目指せ!“ぶっちぎりの速さ” ―アルペンスキー 狩野亮―
(2)攻めてつかめ!まだ見ぬ“金” ―アルペンスキー 鈴木猛史―
(3)究極の走りへ!最強ロシアに挑む ―ノルディックスキー 久保恒造―
(4)ただひたむきに 前へ ―ノルディックスキー 出来島桃子―
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