このシットスキーを使用して、
久保は2012／13シーズンの
ワールドカップバイアスロン年間優勝を飾った。
そして今季、ソチ本番を目指して、
さらに規定ぎりぎりの40cmまでシットスキーの高さを上げた。

「年間優勝したと言っても、まったく安心できる状況ではありません。
　ロシアの若手選手がどんどん力をつけてきている。
　彼らは、下りのカーブなどで片方のスキーを上げて
　1本のスキーでドリフティングする高度なテクニックで攻めてきます。
　僕にはそういうテクニックはありません。
　じゃあ、どこで勝負するか。上りと平地でのスピードを誰よりも上げること。
　だから、僕はシットスキーを高くして
　速いピッチとストロークの長さを最大限に生かしたいと思っています」

パラリンピックの射撃で使用するのは
エアーライフル（視覚障害はビームライフルを使用）。
所有するにも、
国内外の合宿や遠征のために持ち運ぶにも厳しい規制がある。
国内での練習場所も限られる。
そんな中、なぜ、日本の選手たちはバイアスロンが強いのか。

その象徴的な答えのひとつが、出来島桃子の練習だ。
空の銃を使い、腕立て伏せや腹筋運動などで
思いっきり心拍数を上げた状態でリズムよく射撃動作を行う。
この練習を、家の中でも遠征中のホテルの部屋の中でも
一人黙々と繰り返す。
走って伏せて的を見て撃つまでの一連の体の動きを、
無意識にできるまで覚え込ませるのだ。
こうした地道な練習の成果が、
バンクーバー以降、出来島のワールドカップ表彰台を実現してきた。

「私は、走力やスキーのテクニックだけでは海外の選手に勝てない。
　練習場所も時間も限られる。
　だから、できるときにできることをやるだけ、です」

初めて出場したトリノ・パラリンピックのバイアスロンで
銅メダルを獲得した太田渉子は、
バンクーバー大会では７位という結果に終わった。
しかし、最終日に行われた
クロスカントリースキーのスプリントでは銀メダルを獲得。
その後、夏場の陸上トレーニングで走力に磨きをかけ、
2012／13シーズンのワールドカップランキングでは
バイアスロンで総合3位につけている。

また、佐藤圭一は、夏場に自転車のヒルクライムなどの競技に積極的に出場し、
走力アップに努めてきた。
スケーティング技術を使うフリーを得意とし、
初パラリンピックのバンクーバー大会で10番台だった成績は、
バイアスロンでもクロスカントリースキーでも表彰台まであと少し、
というところにまで伸びている。

クロスカントリースキーでは、
前回のバンクーバー大会で2個の金メダルを獲得した新田佳浩が、
今大会でも期待の星だ。
世界の競技レベルは驚異的に上がっている。
「暴力的なくらい」の速さでのピッチ走法が現在、
世界の主流になっているという。
それでも新田はこの4年間、
自分のやるべきことを100％全うしてきた、という自負がある。

「これで負けたのであれば、
  勝った選手に本当の意味で賞賛をおくりたいという気持ちです」

今大会、10代のフレッシュな選手が3名、
初めてのパラリンピックに挑戦する。
女子立位で岩手県立盛岡南高校3年の阿部友里香、
女子座位で秋田県立秋田南高校1年の江野麻由子、
男子立位で飛騨神岡高校3年の岩本啓吾。
阿部は、クロスカントリーだけでなくバイアスロンにも出場する。
パラリンピックという大舞台、
若さを武器に思い切り力を発揮してほしい。

  

◆シリーズ　ソチパラリンピック（アンコール）
本放送：夜8時00分～8時29分
再放送：午後1時5分～1時34分

（１）目指せ！“ぶっちぎりの速さ” ―アルペンスキー　狩野亮―
→本放送：2014年2月12日（水）再放送2月19日（水）

（２）攻めてつかめ！まだ見ぬ“金” ―アルペンスキー　鈴木猛史―
→本放送：2014年2月13日（木）再放送2月20日（木）

（３）究極の走りへ！最強ロシアに挑む ―ノルディックスキー　久保恒造―
→本放送：2014年2月17日（月）再放送2月24日（月）

（４）ただひたむきに 前へ ―ノルディックスキー　出来島桃子―
→本放送：2014年2月18日（火）再放送2月25日（火）