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【出演者インタビュー】岩井俊二さん「どれだけ、僕らは余裕を持って暮らしているだろうか」

2016年08月19日(金)

20160823_iwai.jpg8月23日放送(8月30日再放送)
NHKハート展 詩とアートの展覧会
「出ない」「シンデレラ再び」

にご出演の岩井俊二さんにメッセージをいただきました。


《岩井俊二さんプロフィール》
’95年「Love Letter」で長編映画監督デビュー。映画監督・小説家・作曲家等活動は多彩。代表作は「スワロウテイル」「リリイ・シュシュのすべて」「リップヴァンウィンクルの花嫁」等。


――岩井さんは、失語症の齋藤里恵さんの詩『出ない』にアート作品を寄せていただきましたが、詩を読んでどのようなことを感じましたか。

僕は、日頃から言葉にお世話になっている仕事をしているので、「ことばがないね ごそっとないね」の部分で、すごい大変なことなんだろうなと思いました。数少ない言葉の中で「ない」という、比喩ではない言葉で表現していることが普通の詩とは対極にありつつ、非常にダイナミックな根源的な強さのある詩だなと思いましたね。


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――うまく言葉が出なくて、日々、葛藤している齋藤さんの日常をご覧になられて、どのような印象をもたれましたか。


齋藤さんは、急に「言葉」を無くしてしまったんですが、あとは何も変わらないんですよね。
だから、齋藤さんの生活が、引きこもらずにすむ、以前と変わらずに過ごせる環境が周りにあったらいいんだろうなと思いました。逆に振り返ると自分の生活環境の中に、「どれだけそういう余裕を僕らはもって暮らしているんだろう」と考えさせられました。例えば僕が、あるいは周りの誰かが急に言葉を無くした時、お互いまったく変わらないことは無いにしても、すべてが変わってしまう環境だとするとそんな世知辛い環境は無い。時々振り返って、ゆとりを持った生活環境をお互いに気を付けておく必要があると思いました。


――スタジオで「お互いが認められる社会」が必要だとおっしゃっていましたが、ハート展も、障害のある人と「ともに生きる」ことを目指して開催されています。岩井さんがおっしゃった「お互いが認められる社会」になるためにはどうすればいいと思いますか。

僕らの撮影現場でもそうですけど、社会は、みんなが健康体であることが大前提になっている。
例えばスポーツもそうだと思うんです。すごく機能している美、それを競い合わせて、より機能している方が勝っていくような機能美に魅了されていると思うんです。だから、ケガをすると交代させられる、パスミスやエラーが段々許せなくなっていく。日常の生活、僕らの生活のベースがそういう価値観だと問題だと思うんですが、どこかで僕らは無意識にそう思ってしまっている。それが当たり前で、そうじゃないのがおかしいって。そうするとそれを乗り越えられない人達が居心地の悪い社会になってしまう。どこかで時々立ち止まって、乗り越えられない人達を待つ時間をお互いにもちあうことを意識的にやらないとダメなんだと思います。

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