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【出演者インタビュー】佐藤彰一さん「失敗は自己責任ではない」

2014年12月02日(火)

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12月2日、3日放送
(12月9日、10日再放送)
シリーズ 変わる障害者支援
第1回 私のことは私自身で決めたい
第2回 あなたの決断を支えたい
ご出演の佐藤彰一さんにメッセージをいただきました。

 

《佐藤彰一さんプロフィール》

全国権利擁護支援ネットワーク代表。

 

 

――「シリーズ 変わる障害者支援」をテーマに、2日間にわたりご出演していただきましたが、どのような感想を持ちましたか。

今回紹介した統合失調症の方の金銭管理をしている野口さんの事例も、本人の意思を尊重して医療同意をした住田さんの事例も、制度上は成年後見人の業務ではないんですね。ところが社会は成年後見人にそういうことをしてほしいと期待を持っているわけで、要するに制度の仕組みと社会の期待がずれてしまっているんです。制度の仕組みは代行決定ですから、本人の意向がわからないのであれば代行で決定しろということなんですが、実際に支援を始めるとそんなことは言っていられなくて、権限があろうが無かろうがご本人の意向を確認することが大切となる。それをよく示しているいい例が今回紹介できたと思います。ただ、視聴者の皆さんが今回番組で紹介した事例は成年後見制度の業務なんだと誤解されるといけないので、これは業務外でうまく支援ができている一例であるということをこの場で少し補足しておきます。

 

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――これからどのように社会全体で議論していかなければならないと感じますか。

支援をするときには、どうしても「ご本人のために」という思いと、「ご本人の言っていること」にずれが生じるので、支援を始めた人はみんな悩むんですよね。まずはその悩みの元を整理したうえで、第三者が代行決定しなければいけないのはどういう場合なのか、それはよくあるのか、ないのかということを支援者が悩まないで済むように議論を進めていく必要があると思います。

 

――問題のひとつとして、障害者支援は自分とは関係ないと思っている人が多いということもあげられると思います。

そうですね。でも、誰だって高齢者になることは間違いないわけですから、絶対に自分に跳ね返ってくる話なんです。そう認識してもらうと同時に、障害者支援は成年後見制度だけではまかないきれないということを専門家、あるいはマスメディアは正確に伝えるということが必要で、今は正しい報道や研究成果を国民全体に伝えられていないんですよ。そこが大きな問題だと思います。

 

――自己決定を尊重する社会にしていきたいというのは、どのような理由からですか。

そこをきちんと確保しないと人間が不幸になっていくと思うからです。人間というのは人に頼りたいという思いと、自分で決めたいという思いの両方の希望を同時に持っているのです。全部ひとりで決めろと言われるといっぱいいっぱいになってしまうけど、かといって全部他人に決められてしまうとがっくりしてしまうんですね。人に頼っている状態の中で、自分で決めたいという、非常に矛盾した要素を同時に持っているんだけど、日本はこれまで“自分で決めたい”という要素をないがしろにしてきたわけです。

でも、日本人は支援が好きな人も多いので、ご本人の素行をじっくりと見つめるということさえうまくできれば、むしろ意思決定支援はうまくいくんじゃないかと私は思っていますね。

 

――「本人が決めたからそれは自己責任だ」ということではないというお話もありましたが、どのように思いますか。

その通りです。そこを誤解されてはいけません。いま自己決定論に対する批判というのがいろんな研究職の間で広まりつつあって、特に若手の思想家とか論壇ではその風潮が強いんですけど、それは自己責任を追求するからなんですよ。

 

――では、失敗した場合はどのように接すればいいのでしょうか。

失敗したときは、その失敗を回復するために、さらに支援をしてあげる。ひとりにしないということです。失敗した原因はきちんとした支援ができなかったからだというふうに考える。ご本人が決めて、失敗した、じゃあまた支援をしよう。それだけですね。

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