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【第5回】地域で暮らす

2013年12月24日(火)

障害者権利条約は、国連の公用語で書かれています。
国連の公用語は6つ。
英語、フランス語、スペイン語、ロシア語、中国語、アラビア語です。

日本語の訳は、以下の外務省のホームページに政府訳としてPDFファイルで掲載されています。
外務省 障害者の権利に関する条約
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なかに、いくつか気になる訳があります。
”inclusion” という言葉は「包容」という言葉になっています。
英和辞典で調べると、包含、包括といった意味です。

格差や貧困がひろがるなかで困難をかかえるひとを排除しないという意味で使われる“ソーシャル・インクルージョン”は、“社会的包摂”と訳されます。

障害のある子どもたちが普通学級でともに学ぶことインクルーシブ教育、とカタカナのまま使われています。
いずれも、包容という日本語のニュアンスとはやや異なる感じです。
 


たんに言葉のイメージの問題ですむならよいのですが、意味が異なるのではないかと、障害者団体が指摘している部分があります。

第19条「自立した生活及び地域社会への包容(inclusion)」のなかで、
“a particular living arrangement”“特定の生活施設”と訳しているのです。
障害者団体の仮訳では、“特定の生活様式“としていました。

ちょっと長いですが、二つを比較してみましょう。
「障害者が、他の者との平等を基礎として、居住地を選択し、
 及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること
 並びに特定の生活施設で生活する義務を負わないこと」
(政府訳)

「障害のある人が、他の者との平等を基礎として、
 居住地及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること、
 並びに特定の生活様式で生活するよう義務づけられないこと」
(川島聡=長瀬修仮訳)


これまで障害のあるひとたちは、施設に住まざるを得なかったり、親と住むのが当然と思われたりしてきました。
どこに誰と住むか、は、暮らしの基本です。
そのための支援やサービスのあり方を考える際に、この条文はとても重要なものになります。

“特定の施設で生活する義務を負わない”というだけでは、限られた狭い概念になってしまうのではないか、という危惧があるのです。


障害のあるなしで、どこに誰と住むかがかわってくるものではない、というのが、この条約の趣旨です。
そのことをきちんと理解した上で、条約の精神を実現することが求められています。


障害者権利条約の政府訳は、以下のページでも読めます。
障害保健福祉研究情報システム(DINF)
公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 情報センター

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【第1回】障害者権利条約が批准されます!
【第2回】障害者権利条約ってなに?
【第3回】合理的配慮
【第4回】手話は言語
【第5回】地域で暮らす
【第6回】教育と雇用
【第7回】自分で決める
【最終回】これからのこと
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