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NHKハート展 12月17日の放送から(取材記録)

2012年12月15日(土)

自閉症知的障害と   (NHKハート展より)

12月17日夜8時から放送の《NHKハート展 叱られたとき》。
障害を持つ方々から寄せられた詩と、その詩にインスピレーションを受けた各界の著名人の方のイラストなどのアート作品をご紹介します。

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遠藤真宏さんの「詩」と、アート作品 を紹介する山田キャスター

番組では作品をご紹介した方の一人、遠藤真宏さん(19歳)の日常を取材しました。自閉症と知的障害がある遠藤さん。とても魅力的な方でした!

この記事では、番組内に収まりきらなかったエピソードを、担当ディレクターへのインタビューを元にお伝えします!

 

Q遠藤さんの第一印象はどうでしたか?

担当ディレクター(以下「担」):
シャイだけれど、いつもニコニコしていて、近付きやすい方だなと思いました。
取材中、マイペースにふらっとどこかへ行ってしまうこともあったけれど、戻ってきたときにご自分がとても大事にされている物を持ってきて見せてくれたり、積極的に接してくれました。

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朝の出勤  母・礼子さんに見送られて出かける遠藤さん


Q遠藤さんのご家族について印象に残っていることは?

担: お母さんからいいお話を伺いました。
真宏さんは小さい頃から人が好きで、友だちと遊びたいのだけれど、思ったことをうまく言葉にできずにお友達を叩いてしまったりすることが多く、その度お母さんは謝って回っていたそうです。
でも、お母さんはそれに懲りることなく、真宏さんを積極的に外出させました。「外に出さないことは、この子を否定すること」という思いがあったからです。そうした中で地域の馬術クラブに通うようになり、人間関係を学ぶ機会を得ていったそうです。


Q遠藤さんは馬術クラブ以外に何か活動はされていたんでしょうか?

担: 養護学校のサッカーチームに入っていました。といっても実は中学一年のときに一度、「ルールが分からない」などを理由に断られたそうです。


Qそうなんですか!入部が許されたのはどういった経緯だったんですか?

担: 入部を断られてから、真宏さんはお父さんと一緒にサイクリングをしたり、水泳をしたりしてスポーツに親しみました。
体力も養われ、自転車で走っている中で信号機のルールなどの社会常識を学んでいったそうです。

翌々年、真宏さんが中学三年のときに、再びサッカー部のテストを受け、とうとう入部が許されました。
また、その著しい成長が認められ、学校側から生徒会にスカウトされ、役員を務めることにも繋がりました。
そうした中でいつの間にかすっかり多動の傾向も収まっていったと聞きます。
こうした成長も、ご家族が無理に成長を促すのではなく、「一緒に楽しむ」姿勢でいたのが功を奏した結果だと思います。


Qすばらしい環境ですね!では、遠藤さんの勤め先の会社について伺います。

担: 障害者雇用にとても力を入れている会社で、従業員の身嗜みのチェックをしたり、日々の業務の中で扱う商品が身のまわりのどんな所で使われているかを話して、労働意欲を持たせるなど、一人前の社会人として育てていく意識があり、それでいて利益にも繋がっています。
上司の方も「会社の戦力として雇っている」と言い切っていました。

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職場での遠藤さん 食品の容器などのリサイクル会社


Qなるほど。では、今回のハート展の作品については何かお話ありますか?

担: 今回遠藤さんの詩には絵本作家のつちだよしはるさんが絵を寄せてくださいました。
実はこの絵が、遠藤さん一家の家族写真の中の一葉とそっくりな構図だったんです。
つちださんはもちろんその写真のことはご存知なかったので、写真をご覧になってたいへん驚かれていました。
真宏さんの詩には、そういったことを引き起こす不思議な力があるのかもしれません。

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絵本作家つちだよしはるさんと、作品


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そっくりな構図の写真 真ん中が遠藤さん みんなに囲まれて



Q素敵な偶然ですね。ブログの閲覧者の皆さんにもぜひ実際に、ハート展へ足を運んでいただいてご覧いただきたいと思います。

担: ありがとうございました。

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おわりに
インタビューを終えて・・・

筆者は今回、担当ディレクターにインタビューを行い、文章に書き起こす中で、障害のある人を取り巻く環境について考えさせられました。

筆者は大学時代に福祉を専攻しており、また知的障害がある姉を持つ障害者の家族でもあります。
障害者を受け入れられない社会こそが「障害」を生み出している、といった言い回しを福祉業界ではたびたび耳にします。
知的障害や自閉症がある人を取り巻く人々が、そうした障害を障害だと感じなくなったとき、それは障害でなくなるのかもしれません。しかし、障害のある人が家の外へ出て、家族以外の人と関わるときには、思いも寄らない物事がバリアになり得ます。それは偏見であったり、身体障害がある人にとって通行が困難な道の作りであったり、コミュニケーションがうまく取れないことであったり。こうしたストレスと天秤にかけて、私の両親は障害のある姉を外出させることにあまり積極的な方ではありませんでしたし、そういった家族は決して我が家だけではないと思います。
ですが遠藤さんのように、ご家族の意向で積極的に外の世界の人々と関わりを持つ中で、成長を遂げられた方を知ると、私も姉にそういった成長の機会を与えてやってこられただろうかと身につまされる思いです。

番組をご覧になる障害のある人のご家族の皆さんはどう感じられるでしょうか。今回、本当に皆さんのご意見を早くうかがいたいと思っています。

そして、遠藤さんが勤めている会社について。
会社のパンフレットを読ませていただき、ディレクターから話を聞く中で、一人前の社会人としての教育の徹底、やりがいを感じさせるために時間を割く、従業員一人一人を会社にとって有益な戦力として評価する、といった方針にいたく感銘を受けました。
しかし、これらは障害者雇用に力を入れているから、ということとは関係なく、健常者中心の企業でも当たり前に意識されていてしかるべきことなんだな、とも思いました。

筆者もまだ社会に出て日が浅い世代ですが、仕事にやりがいを見出せず、精神的に追いつめられて仕事を辞めていく同世代の若者の姿を何人か見てきました。彼らの勤めていた企業は遠藤さんの職場のように従業員を育てていく意識を持った企業であったのだろうか?そうでなかったことが追い詰められた原因ではなかろうか?そう思うと本当に侘しい気分です。

障害を持つ人々やマイノリティと呼ばれる人々の置かれている状況について考えるとき、翻って所謂「一般的」な人々に照らし合わせて気付くことは多いですが、そうした事柄の中でも今回の気付きは個人的にとても切ないものでした。
遠藤さんを取り巻く豊かな環境が決して特別な例にならぬよう、番組を通じて社会にアプローチしていきたいと気が引き締められた取材でした。
長文お付き合いありがとうございました!

コメント

わが家には六歳の知的障害+自閉症の息子がいます。
放送を見て、遠藤さんご一家、素敵なご家族だなあ、
と感じました。
遠藤さんのお母様が話されていた内容、私の心にとても
響きました。
外出のたび、追いかけまわさなきゃいけない、興奮して大きな声を出す息子を
かかえながら、「すみません、すみません」…
色んな経験をさせてあげたい、と思いながらも、少し私の気持ちも
弱くなってしまってる今日この頃…
遠藤さんのお母様の話を聞いて、涙が出てきました。
私もこんな気持ちのお母さんでありたい、と思いました。

投稿:ゆらり 2012年12月23日(日曜日) 00時46分

5才の軽度知的障害の男の子のママです。
言葉の遅れに気づき、発達の遅れ、手先の不器用さ、徐々に周りのお友達とずれが大きくなり、まさかとわ思っていましたが、知的障害なのだなと最近やっと実感してきたところです。

ハートネットTV大好きです。励まされてます。特にマサヒロさんが、毎日元気に明るく仕事をし、生きている姿を拝見でき、自分の子にもこうなってもらいたいと、将来像がみえてきました。ご家族のかたも輝いてました。

私も自分の子をなるべく、たくさんの人と係るように育てている最中です。休みの日は公園に行き知らない子と砂場で遊んだり、保育園の友達を家に呼んだり、輪を広げているところです。

その中では、お友達のおもちゃを取ってしまったり、嫌なことをされてたたいてしまったり、嫌われちゃたかなーうちの子と遊びたくないかなー育て方が悪いと思われてるかなーなど、毎日葛藤の日々です。

幸いにも、多くのお友達は、根に持たない純粋さを持っていて、次の日には、いつもと同じように接してくれて、助けられています。

マサヒロさんのお母様の気持ちがすごくよくわかります。

どのように育てればよいのか、毎日試行錯誤考え中ですが、マサヒロさんのご家族、お母様の考えを聞き、今の私の考えもそんなに間違っていないのかな、この方向でいいのかな。とうれしくおもいました。

これからも、障害を持ったかたが、いきいきと生活しているところを、たくさん放送してください。うれしくなります。

障害と枠を作ってしまうから障害なので、個性と思えば何でもないですよね。全世界の人がそう思ってくれればいいのにな。

言いたいことはたくさんありますが、ここらへんで。

投稿:もゆママ 2012年12月20日(木曜日) 12時09分