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【南相馬取材記】被災地に住む人々が思っていること(1)

2013年10月25日(金)

先日、10/19(土)20(日)と、
ローカルサミットin 南相馬に取材に行ってまいりました。

NPO代表の方や、医療関係者の方など
たくさんの方々のお話を伺うことができました。
その様子を2回に分けて紹介させていただきます。


被災地に住む、仮設住宅に“住んでいない人”の声。
「(被災地に住む人間は)せつない」

 

「そもそも仮設(住宅)の人たちは生活を建て直せない人たち」
「地元の一般の住民は(避難してきた人がいっぱいで)
 医療施設などが使えない現実があるんだよ」
「被災地は上流と下流にわかれている、
 上流は世界に目を向けているが、下流は現実に耐えるしかない」
「福島の中でも慰謝料をがっぽりもらって働かなくなっている人も」
「復興住宅は土地が余っている高級住宅地に建てられる、
 元から住んでいる我々は住めないのはなぜ…せつない」

「こんな現実、放送なんてできっこないだろう?」


淡々としゃべる男性の言葉は重く、
何度も「せつない」とおっしゃっていました。

ただ話を聞くことしかできないのか、現実を変えることはできないのか?
何もできないかもしれない感覚に深くショックを受けました。


20131025_hisaichi001.jpg
写真:wikipediaよりセイダカアワダチソウ
時期にもよりますが、秋は、
被災地には外来種で繁殖力の強いセイダカアワダチソウが生い茂っているそうです。
地元の人々は「強い毒性を吸ってくれるというこの植物が
 なぜこの地に繁殖しているのか」と、不安を話していました。


次の日は、南相馬市内各所にて分科会が行われました。
私は「分断から新しいコミュニティーの形成へ」
というセッションに参加しました。
震災の影響で今まであった”ご近所づきあい”が分断され
孤独を感じる人が増えてきている地域もあると。
その中で、コミュニティーの再生や、
新しいコミュニティーの理想像を話し合いました。

話を聞くうちに、家族の中心である「おかあさん」が元気であれば
お父さんも子どもも、家族中が明るくなれるかもしれない。
「おかあさん」のパワーがとても気になりました。


子どもと一緒の会 廣畑裕子氏の詩より(一部抜粋)
  避難命令が出され 車で北へ 西へ 向かった
  その時は 小高に帰れなくなるなど思いもしなかった
  みんな ばらばら 離ればなれになった
  知らない土地での 不安な日々が続いた
  何を目的にしたらいいか わからなくなった
  何をするでもない・・・子どもの顔を見るのが辛かった

  子どもの笑顔が 一番心を癒してくれるのに・・・
  その子どもを笑顔にさせるのはなんだろう・・・

  お母ちゃんは考えた。
   「お母ちゃんが元気だと 子どもも元気」
   「みんなで 不安な毎日の中でも
    ちょっとした息抜きや
    明るい 普通の当たり前のことを やってみよう」
  みんなで元気になるため、いろんな事とつながっていこうと、決めた。

  仮設住宅での何気ない会話の中で気づいたことがあります。

  これから どうやっていけばいいのか
  だれにも 答えは出せません。

  だれにも 出せない答えなんだから・・・
  失敗しても 何もしないでいるより
  答えは近づいてくるのではないか?
  失敗したという結果も 答えなのでは・・・?

  自分のできることを まずは やってみる。
  ただ できることをやってみる。
  ただ できる範囲で歩み、動き出そう。



廣畑さんが感動したという「坂の上の雲」の音楽とともに詩が流れ、
涙を流しているおかあさんたちもいました。
震災後の苦労は計り知れないもかもしれませんが、
ひとつひとつ、いろいろなコミュニティの中で
明るい「花」が咲いてきているように思えました。


20131025_hisaichi002.jpg
廣畑さんの詩、震災前の 南相馬市小高区の風景。
この景色は戻らないかもしれないけれど、違う「花」が咲くように。


【南相馬取材記】被災地に住む人々が思っていること(2)へ続きます。
  


◎11月シリーズ 被災地の福祉はいま 放送予定
(本放送=夜8時、再放送=午後1時5分)
第1回 居場所を失う子どもたち
  2013年11月4日(月)  再放送11月11日(月)
第2回 行き詰まる仮設住宅の暮らし
  2013年11月5日(火)  再放送11月12日(火)
第3回 相次ぐ新たな“こころの病”
  2013年11月6日(水)  再放送11月13日(水)
第4回 被災地で始まる医療再生―陸前高田市の取り組み―
  2013年11月11日(月) 再放送11月18日(月)
第5回 反響編(1)
 2013年11月25日(月) 再放送12月2日(月)
第6回 反響編(2)
 2013年11月26日(火) 再放送12月3日(火)