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9月特集シリーズ「がんサバイバーの時代」:『親のがん どうする子への告知』取材日記

2013年08月19日(月)

「子どもになぜ言う必要が?」
‘親ががんであることを、子どもに告知する,
そのための支援が始まったという話を3年前に初めて聞いた時、
ひどい話だと素直に思った。
親ががんであることを伝えたら、子どもは辛いに決まってる――
半ば憤りを持って取材を始めたことを、はっきりと覚えている。


しかしその思いは、最初の取材で早くも覆った。
「子どもが、私の目の前で吐いたんですよ」
告知を支援する医師の一言目である。


3年ほど前、担当していた女性の末期がん患者が、様態が急変して亡くなった。
その後病院にやって来たのは、夫と小学校低学年の一人息子。
その息子は、お母さんの姿を見つけると、
その場で30秒程何も動かずに立っていたという。
そしていきなり、その場で嘔吐した。
「あまりにショックが大きすぎて、
何をどうすればいいか分らなかったんだろうね」
先生はそれ以降、がん患者の子どもへの支援を始めたという。
私はその話を聞きながら、ただ泣くことしか出来なかった。
その子どもは今どうしているのだろうか、
こうした子ども達は他にも沢山いるのではないだろうか。


取材を進めるにつれ、
がんは‘子どもにとうてい隠せない病気’だということを痛感した。
手術や抗がん剤の副作用で、以前と全く同じように生活することは難しい。
ましてや、子どもは大人が思っているより敏感だ。
「ママが何回も椅子に座るようになった」
「楽しみにしていたお風呂に、一緒に入ってくれなくなった」
ささいな変化から、子どもは、親に何かが起こっていると感じ取る。
取材をすればするほど、
子どもに伝えた方がいいのではと感じていく事実ばかりだった。


しかし一方で、告知しないと決めた親の愛情も、また大きなものだった。
「自分が死ぬよりも、子どもに辛い思いをさせたくない」
とまで言い切る母親もいた。
告知をしたことにより、子どもが心的ストレスを受けることも事実だ。

子どもに自らの病を告げるのか、どうか。
それぞれの家族の事情があることを考えても、簡単には答えを出せない-。


しかし一つ言えることは、
愛しているからこその‘親子のすれ違い’が、がんになると起きるということだ。
親は、子どもを愛するがゆえにがんであることを隠し、
子どもは親を愛するがゆえに、変化に気づいたとしても、
何も言えないままで抱えている。
このすれ違いを何とかするために、
私は、3年たった今も、対策を求めて取材を続けている。


増加しつづけている罹患者数、
その中心は30代から50代の女性です。
初産平均が初めて30歳を越えた今、
「親ががんであることを 子どもに伝えるかどうか」という問題は、
誰もが考えるべきことだと感じている。

※番組では、がんを患い、子どもへの告知について考えたことがある方。
自分の親ががんを患っていた方などからの体験談やご意見を募集しています。

 

◎2013年9月の特集「がんサバイバーの時代」
番組スケジュールは(本放送=夜8時、再放送=午後1時5分)

第1回 自分らしく今を生きる
→本放送:9月2日(月)、再放送:9月9日(月)

第2回 がんを抱えて“働く”
→本放送:9月3日(火)、再放送:9月10日(火)

第3回 人生を生き切るために
→本放送:9月4日(水)、再放送:9月10日(水)

第4回 反響編 みなさんの声にこたえて①
→本放送:9月23日(月)、再放送:9月30日(月)

第5回 反響編 みなさんの声にこたえて②
→本放送:9月24日(火)、再放送:10月1日(火)

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