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オランダには認知症の人がおらん??

2013年07月03日(水)

今年2月、オランダに撮影に行かせて頂いたディレクターKです。
オランダといえば、
チューリップ、風車、自転車、絵画、ビール、アンネフランク・・・。
そんな固定概念を抱いていた私は、
同地が「認知症政策先進地」であることは、
恥ずかしながら取材をするまで知りませんでした。

さて、認知症シリーズでのオランダ出張の提案が通り、
乗り込んだまではいいのですが、
いざロケを始めると頭の中は「???」だらけ。
最大の「」は、私が取材させて頂いている方々が
本当に認知症なのか?」という根本的な疑問でした。
 


話をさかのぼると、私の身内にもかつて「認知症の人」がいました。
(当時はまだ認知症という言葉は一般的でなかったですが)。
夜中に起き出しては大声を上げる、
日中は寝巻きでぼーっとする、
昼夜何度も何度も食事を摂ろうとする・・・
家族ともども手を焼いて、家にいたいと願う本人の気持ちは見て見ぬふりをし、
「老人病院」、今の療養病床に入院できたときは正直ほっとしたものです。
(結局そこに何年も入院して亡くなりました)。
それが認知症や介護家族のイメージになっていた私は、
オランダで紹介された「認知症の方々」に戸惑ったのです。
というのは、男性も女性も整理整頓された部屋で、
必ず身なりをきちんと整え、にこにこし、
(言葉は少なくても)介護者と会話し、
夜もどうやら寝ているらしい・・・。
いくらケアが行き届いているといっても、
あまりに「症状が軽すぎる」と感じてしまいました。

「いえいえ、私が取材したいのは、『重い方が自宅で暮らしている様子』です。
 認知症先進地のいいところを見せるために
 『軽い方』ばかり紹介されていませんか?」
とやんわり介護者や医療者に問いました。

ところがその都度戻ってきた返事は、
「彼らが『重い人』なんですが・・・」。
それの繰り返しでした。

ええ?本当?と、診断書を見せてもらうと確かに重度の範疇です。
「いいケアをすれば、認知症でも穏やかに過ごせる」と聞いてはきましたが、
ここまで??と驚きました。
疑り深い私は、「末期の方達が入る」という入所型施設、
ナーシングホームも見せて頂くことにしました。
そこで目にしたのは、やはり認知症のご老人たちが読書をしたり散歩したり
自転車に乗ったりして穏やかに時を送る姿。
抗精神薬は「よほど不安が強い時少量使用する程度」が当たり前だといいます。
ではこの状態で一体、何年ホームで暮らすのかと施設長に尋ねると、
「1年半か2年後には皆さんこれです」と
やや目線を上げて、胸の前で十字を切りました。


ここでようやく、合点がいきました。
オランダでは認知症になっても本当に最後の数ヶ月までは、
自宅でも施設でも、穏やかに過ごす人が多いのだということ。
逆に、私の身内のように、施設や病院に入ると亡くなるまで
何年も寝たきりになるという状況はいくら説明しても、
「信じられない」とかえって驚かれてしまう始末でした。


どうやら私の「認知症の人」のイメージそのものが、
「固定概念」にとらわれていたようです。
「重い人を!寝たきりの人を!」と
色眼鏡で捉えようとしていた自分に反省するとともに、
同じ人間なのに一体なぜこんな違いが出るのか?
どうしてこんなことができるのか?
という疑問からあらためて取材をし直した次第です。


もちろん、オランダにも地域差はあり、
全ての認知症の方が満足な生活を送れているわけではありません。
かつての私が番組を見たらにわかに信じられないだろうなとも思います。
でも、番組でご紹介する「早期発見・治療」「家族支援」が、
国家戦略開始から10年経過しているだけあって確実に功を奏していることは、
今の私から過去の私に伝えたい。そんな風に思っています。


「『認知症の人』の『安楽死』」  などオランダでの驚きは続く・・・


◎番組スケジュールは(本放送=夜8時、再放送=午後1時5分)

第1回 462万人 ~自宅で暮らしたいけれど~
→本放送:7月1日(月)、再放送:7月8日(月)


第2回 “在宅”を支えるケア ~オランダからの報告~
→本放送:7月2日(火)、再放送:7月9日(火)


第3回 検証・オレンジプラン ~在宅支援の最前線~
→本放送:7月3日(水)、再放送:7月10日(水)


第4回 自分らしく生きよう ―アニメ映画「しわ」が描く当事者の世界―
→本放送:7月15日(月)、再放送:7月22日(月)


第5回 “わたし”から始まる町づくり
→本放送:7月25日(木)、再放送:8月1日(木)


 

コメント

何気なく サラサラ読んでました。オランダ

投稿:クマさん 2017年04月01日(土曜日) 19時23分