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【出演者インタビュー】荻上チキさん「薬物依存症は刑務所では治らない。医療機関や自助グループにつなげて治療することが大切」

2016年04月06日(水)

20160225_o.jpg2月25日放送(3月3日再放送)
WEB連動企画“チエノバ”
緊急特集!薬物依存
ご出演の荻上チキさんにメッセージをいただきました。

 

《荻上チキさん プロフィール》

1981年生まれ。評論家。ニュースサイト「シノドス」編集長。メディア論をはじめ、政治経済や福祉、社会問題から文化現象まで幅広く取材し分析。著書に『ウェブ炎上』『ネットいじめ』『僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか』など。


――チキさんは薬物問題におけるメディアの報じ方について、どのような課題があると感じていますか。

 

これは薬物問題だけに限らないんですが、本来であれば「どういった支援が必要なのか」という議論こそが必要な分野において、メディアは「犯罪報道の方法論」でのみ取り上げることが多いです。今回の薬物問題はその代表的なケースで、この問題において重要なのは、当事者たちがどういった支援につながればいいのか、どういった回復の道があるのかという情報をより広く届けることによって、より多くの当事者を救済することなんです。しかし、多くのメディアは、どういう入手経路で薬物を手にしたのだろうかとか、なぜあの人がこうなってしまったのだろうかという不幸話を紹介するような仕方で薬物問題を取り上げます。ですから、もっと当事者たちの命綱になる報道を増やしてほしいですね。


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――番組では「薬物依存症は刑務所では治らない」ともおっしゃっていましたが、それはどういうことですか。

 

刑務所というのは懲罰を与える場所であって、治療のための場所として作られているわけではないので、薬物依存症の再犯者率は高い数字になっています。もちろん違法な薬物を流通させる人たちは処罰する必要がありますが、一方で薬物に手を染めてしまった当事者は、それ自体を処罰しても効果がないどころか、むしろ社会から遠ざけて、居場所を奪って、薬物に依存したくなるきっかけを作ってしまうことにもなるのです。ですから、本来であれば、そういう当事者を刑務所ではなく、しっかりと医療機関や自助グループなどにつなげて治療していくことが必要で、そのためにもこれからは薬物摂取を非犯罪化しつつ、治療の対象として福祉や更生の枠組みで議論することが重要になってくると思います。

 

――医療機関や自助グループなどで治療をしていくためのポイントとしては、どのようなことがあげられますか。

 

治療のなかでは、本人が薬物に手を出したのはどういう問題を抱えていたからなのかということを丁寧に分析していくことになります。きっかけは軽いことだったかもしれないけれども、薬物に依存するには複合的な問題があるのです。そういったものをひとつ一つ紐解いていきながら、依存しなくてはいけない理由を別の安全なもので埋め合わせていくことが必要です。その“安全なもの”というのは、人との関わりだったり、やりがいのある仕事だったり、ほかの安定した環境だったり。あるいは自分のメンタルの病気の治療かもしれません。そして、そのうちのひとつが番組でも紹介したグループミーティングなどの「居場所作り」です。自分の居場所はここだと実感できる場所を提供することがとても重要で、だからこそダルクのような自助グループが機能を果たしていくということになるわけですね。

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