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【取材記】野波ツナさんへのインタビュー

2015年01月28日(水)

先日の取材記、発達障害の夫をもつ妻の悩みで野波ツナさんにお会いした際のインタビューをご紹介させていただきます。


■「発達障害の夫をもつ妻の悩み」が今、話題になっていることについて
徐々に徐々にで、まずはネットからだと思うんですよね。誰かがそういうことを言い出して、そこから広がっていったのだと思います。

今まで知らなかったっていうお便りも非常に多いです。「夫はちょっと変わってると思っていたけど、発達障害があるとは知らなかったです」とか。
ましてや、妻が鬱状態に陥るケースがあるとかは、まだまだ知られていないので、見過ごされてきたことが少しずつ声をあげることで変わってきているのだと思います。2010年からだったと思いますが、大人の発達障害の本がたくさん出版されて、それを見て「あれっ?」と、思う人も増えてきたのかな。


■「発達障害の夫をもつ妻の悩み」ならではの悩みとは?
<つらさ①>外から見えない
やっぱり外からはわからない。夫自身も自覚が薄いところもありますね。ぱっと見で外からわからないから、こんなにがんばって水面下での水をかいているけど、その激しさが誰からも見られない。妻がものすごくがんばってなんとかやっているのに、”お気楽”にみえてしまうっていうところも辛いですよね。だから夫の障害も外からみえないし、妻のがんばりも外からみえないっていうところかなと。


<つらさ②>無言のプレッシャー
真摯にならなきゃいけないっていう、無言のプレッシャーみたいなものが常にあって、それはどの立場でも同じだと思います。親御さんであってもそうだし、兄弟であってもそうだし、障害がある人のためにしてあげなきゃいけないことっていうのがとても多いじゃないですか。で、家族だと義務ではないですけど、強いられるところもあって、辛くなるときはあるんですよね。でも「辛い」とは言えない、言っちゃいけないみたいな。当事者はもっと大変なんだから、障害者じゃない自分が辛いなんて言っちゃいけないんじゃないかっていう、そういう気持ちもやはりプレッシャーとなって、もう”自分で自分を苦しめてしまう”みたいなところが、多分皆さんにあるのだと思います。
「私たちがんばってるよね、そうだよね」って言い合うだけでもかなり救われるのですけど、“がんばって当然”みたいに周りは見てしまう。「お母さんなんだからがんばって当然だよね」とか、「奥さんなんだから旦那さんを支えて当然」って言わないまでも、そういう目で周りは見るので、それはしんどいですよね。


<つらさ③>周囲に理解してもらえない
社会的にちゃんとした地位のある人、旦那さまが実はっていうパターンが非常に多くて、その場合、気付きにくい上に「もしかしたら?」っていう話を夫に話しても、絶対に拒否されてしまいますね。「僕はそんなはずは無い!だってこんなに地位もあるし、こんなに収入もあるんだから」みたいな感じで。それで周囲に言っても、夫が医者だったり弁護士だったりすると、「収入がいいんだからそれくらい我慢しなさいよ」とか、「どこの家庭もよくあるわよ」みたいな感じになってしまい、かえって追い込まれる場合も多いです。


<つらさ④>自分らしさが失われていく
夫とずっと対応していると、感情を表情に出したり、声に抑揚をつけると相手に伝わりにくくなってしまうので、淡々と無表情に用件を要約して伝えるということが必要でした。
そうすると、それが染み付いて、「何か変わったね」っていわれたり・・・、「昔、自分はもっとテンション高かったのになんでこんなになっちゃったんだろう?」って思って。 “家庭”って本当は一番安心出来る場所のはずなのに、そこで常に緊張感を持っているから、自分が何なのかわからなくなっていくのは当然ですよね。自分が出せないまま暮らしている訳ですから。だんだんこっちの感情がぐちゃぐちゃになるんですよね。相手に感情が無いと、こっちが泣き出したくなったり、ヒステリー起こしたり・・・



■別居に至るまでの長い道のり
私は家を守りたかったし、お父さんがいてお母さんがいて子供がいて、っていう形態を崩したくなかったんです。それはやっぱり私の中で、「普通でありたい」という囚われだったのかなと今は思うのですが。ウチの場合はケンカが無かったので、子供の目からは別に親の仲が悪いとかは無いんですよ。見えないんですよ。
もっと暴力的だったりとかしたら、子供の前でそんな姿を見せたりしたっていうことがきっかけになったかもしれないけれど、とにかくおとなしい旦那で、ただただヒステリックなお母さんみたいな、「ウチのお母さん、いつもカリカリしてるね」ぐらいの、割と平穏な家庭だと子供の目にも見えていたようで。
「私さえ我慢すれば・・・」という気持ちがあったんだと思うんです。私さえ我慢すれば子供もお父さんのことは好きだし、お父さんもいろいろ問題はあるけど、別に暴力ふるったりする訳でもなく、問題なく保てるっていう。だから私一人のわがままでこの家を壊してはいけないっていう思いがずっとあって、それは家を売るところから別居になったんですけど、そうなってからもずっと「なんか私が壊しちゃったなあ」というのはあったんですね。でもそれも私が壊した訳じゃない、こうなるべくしてなったんだという思いで、もうそれもとらわれていないですね。そこがステップの一つです。
がんばってアスペルガーの旦那に合わせる、自分を合わせていって会話をなんとか成立させようっていう努力をしていた時期が、知らず知らずのうちに自分のストレスになっていっていたのではないかと思います。


■脱出へのヒント
◎押し込めていた気持ちと向き合った事
昔、好きだった気持ちを思い出したんです、はっきりと。それを思い出したことで自分を許すことも出来ました。昔好きだった気持ちすら思い出したくなくて、ずっと押し込めていました。でもそれと向き合うことが出来たので、「過去の全てもそれで良かったんだ」「あの時ああしなきゃ良かった」みたいなのはもう考えないようにしようっていう気持ちです。結婚したことにも意味があるし、きっと旦那の方にも結婚生活で彼なりに得たものはあったと私の中で納得出来たので、「無駄ではなかったんじゃないかな」という思いが、私の中で”落としどころ”になっています。


◎自分を責める気持ちを解放したこと
自分は変わることができるけど、相手を変えることは出来ないなっていうのがよくわかりました。
自分らしくいられるというか、もう何も罪悪感も無いし、後悔も無いし、それでいいかなと。そうすることで「じゃあ明日からどうしよう」っていう未来を考える気持ちにもなりました。ずっと今まで過去にとらわれて来て、「旦那のアスペルガーに気づかなかったことが悪かった」とか、「なんで気づかずに結婚しちゃったんだ」とか、「なんであの時ああ言っちゃったんだ」とか、そういうことをずっとずっと溜め込んでいたんですけど、全部その時その時で仕方なかったんだし、間違ってはいなかったんだって、肯定できて。
“カサンドラ”の方って自分を責める人が多くて、自分が悪いというのを常に持っているんですよね。
※カサンドラとは・・・アスペルガーの特徴である「共感性の欠如」に日常的に接し続ける苦しさとそのことを他人に話しても理解してもらえない苦しさとで心身を病んでしまう状態。
(野波ツナ「旦那さんはアスペルガー 奥さんはカサンドラ」より)

それをどう”解放”してあげるかっていうのが一番、“カサンドラ”からの脱出の方法になるのかなって。
やっぱり、自分を変えるといっても、自分を責めたり相手を合わせたりする方向で変えるのではなくて、”自分を認めてあげる”ということ。そういう方向で変えることが大切だと思います。



■同じ様に悩んでいる方へ最後にメッセージ
①自分自身の異変に気付く事

一つ目に、「自分は“カサンドラ”じゃないか?」とか、「“カサンドラ”だ」と気づいたことが、もうファーストステップのぼっているので、第一段階はクリアしていると思います。


②仲間を見つけて、自分の気持ちを文字や言葉にする
二つ目は、「仲間を見つけること」だと思います。だからネット上でも良いし、こういうテレビの番組とかでも良いから、「自分は一人じゃないんだ」っていうことを自覚してほしい。あと、出来れば声を上げてほしい。例えばブログでも良いし、SNSでも良いし、Twitterのつぶやきでも良いから、自分の気持ちを文字や言葉にしてほしい。そうすることで、自分でフィードバックして、「じゃあ何で私こんなことをつぶやかなきゃいけないような状態なんだろう?」など、一つずつ前に進める可能性があるかと。
お仲間と会って愚痴っている内に、「ウチはこうしているよ」みたいな話を聞くと、じゃあ試してみようとか、そういうやり方もあるね、とかいう話にも発展するので非常に前向きになれると思うんです。そういう立場の人でないとわからない悩みとか、困ったことというのがあると思うので、自分の気持ちを話せるようになってほしいです。


③自分自身を否定しない事
自分が悪いと思わないでほしい。支えきれないのは当然だし、「全部自分が支えなきゃ!」って思わないでほしいです。
その救いを、今は行政とかがないから助けを求められないけど、そういう行政のシステムが出来てくれたら良いなと思います。
まだまだ知られていないので、もっと知られてほしいです。

 

周囲の人には口にできない、ネットだからようやく言える…。本当のつらさを誰もわかってくれない…言えない…。押しつぶされそうな思いに、向き合いたいと思います。


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1/29(木) (1)誰にも言えなかった苦しみ
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