本文へジャンプ

私と次郎さんとマーマさんと -『次郎は「次郎という仕事」をしている』ロケ後記

2017年01月26日(木)

カキコミが届いたのは、去年10月23日。
生放送(10月26日放送「相模原の事件から3か月」)の3日前でした。
私は目を通した瞬間、大きな衝撃を受けました。何回も読み返しました。


写真・番組に届いた一件のカキコミ

 

これは、ぜひ生放送で紹介したい!

番組構成の大枠が決まってはいましたが、放送の最後にでもいいから何とか紹介できないか、模索しました。しかし一方で、こんな思いも。


「紹介するならば全文を読みたい。時間の関係で短くして紹介するのはもったいない」
「紹介してもその後に議論したくなる。時間が足りないのではないか」

結局、制作スタッフと議論した末に、苦渋の選択でしたが、残念ながら生放送で紹介するのはあきらめました。こうした経緯があっただけに、今回、1つの番組として放送できることに、私自身、特別な思いがありました。


「IQ18という次郎さんはどんな暮らしをしているのか。地域の人とどのように接しているのか。お母さんであるマーマさんは、どんな思いで見守っているのか。」

写真・「次郎」に会いに行く山田アナウンサー
私は2人が暮らす三重県に向かいました。

次郎さんと出会ったとき、私の中には少しの不安がありました。
「果たして彼の伝えたいことがわかるだろうか。私の伝えたいことはわかってくれるだろうか…」

しかし、それは杞憂に終わりました。次郎さんと歩く中で、自身の心にある、こびりついた様々な固定観念に次々と気づいていきます。

スーパーマーケットで、魚屋さんに魚を切ってほしかったが、いなかったとき。まさか肉屋さんに頼みに行くとは思いませんでした…。

「そうか、肉屋さんでもいいんだ!」

何とかしてくれる、助けてくれるという信頼感。同じ状況だったら、私はあきらめるでしょう。昨今、「人に迷惑をかけてはだめだ」という観念が強い風潮があります。時にもっと周りの人を頼っていいのかも知れません。


次郎さんは判断に迷ったとき、マーマさんへの直通電話で、すぐに聞きます。いくつかの単語と「アー、アー」という音声で伝える次郎さん。でも、マーマさんには伝わって、会話していたのには驚きました。

一緒にいるうちに、“次郎語”も自然と身についてきます。
少しの差でバスに乗れなかったときは、一緒に「クッソー」と声を上げました。交差点では、「あか、あお」と確認して渡りました。短時間で少しずつ変わってきた自分に驚きがありました。

また、次郎さんの私たちへの気配りは想像を超えるものでした。
「店を出たときに段差があるから気をつけて!」「道路のこちら側を歩いて!」などなど、ジェスチャーと少ない単語で必死に伝えてくれました。

帰りの新幹線。猛スピードで東京に向かう車内で、ゆっくりと1日を振り返りました。

“IQというのはその人の1つの特性に過ぎず、その数値がすべてを決めるものではない”

私が会ったのは、“IQ18の次郎さん”ではありませんでした。“道行く人にどんどん話しかけ、気配りをしてくれる次郎さん”でした。

きっと、私が感じたようなことを、地域の人たちも感じているに違いありません。
極めて“普通に”次郎さんと接する街の人の様子から“次郎の仕事”の成果を感じ取ることができました。人と人とが関わるときの“センス”が自然と磨かれるのではないでしょうか。

これは何も「障害のある人とない人」との間だけで磨かれる感覚ではないと思います。
普段、私たちが出会うどんな人との間にも化学反応があり、“センス”がお互いに養われていくのではないでしょうか。

だったら、「どんな人ともいい影響を与え合いたいな」と考えにふけった、窓に映る自分を見ながら、「あっ」と声を上げそうになりました。

これが、「次郎という仕事」か―――。

この日、私はすっかり次郎さんの“仕事相手”になっていました。
ふと、やさしく笑う次郎さんとマーマさんの顔が目に浮かびました。

写真・次郎さんとマーマさんと山田アナウンサー

 

▼関連番組
 『ハートネットTV』(Eテレ)

 2017年1月26日放送 障害者殺傷事件から半年 次郎は「次郎という仕事」をしている
 
 【アンコール放送】2017年3月21日(火)・夜8時/再放送:3月28日(火)・昼1時5分
 ※アンコール放送が決まりました!

コメント

次郎さんの元気な姿を見てとても嬉しいです。どこにいても「次郎さん」でいてください。

投稿:さんぽのおばさん 2017年03月21日(火曜日) 20時31分

リッチーさま、みなさま

番組担当ディレクターです。
次郎は「次郎という仕事」をしている、ご好評をいただき、このたびアンコール放送が決まりました!

★アンコール放送: 3月21日(火)夜8時
★アンコール再放送: 3月28日(火)昼1時5分

ぜひご覧いただければと思います。

投稿:番組ディレクター 2017年02月21日(火曜日) 23時00分

リッチーさま

番組担当ディレクターです。
コメントありがとうございました。とても嬉しいです。

再々放送のお問合せに関してですが、ご覧いただいたもの自体が「再放送」であり、残念ながらこれ以上の放送は予定はしておりません。
「ハートネットTV」では、要望の多い回について、不定期にアンコール放送という形で再々放送をさせていただく場合もありますが、今のところこの回については予定が立っていない状況です。
大変心苦しいですが、何卒ご了承ください。

投稿:番組ディレクター 2017年02月07日(火曜日) 19時13分

昨日2月2日再放送の「次郎の仕事」見ました。
私の息子18歳もIQが低く、実際年齢は2.3歳といわれています。
次郎さんの生活を見て、衝撃でした。言葉がなくてもあんなに自由に行動されていて、人との関係を作っていて・・・

うちの子は一人ではもちろん外出できないし、(信号もみれません)買い物もできない、傘もさせずいままで親として何をしてきたのかと恥ずかしくなりました。マーマさんは次郎さんを信頼して育ててきたのだなと思い見ました。地域で認知されていないうちの子・・・学校を卒業して4月から作業所へ行きます。すこしづつ今までとちがう生活目指したいです。
夫にみてもらいたいのですが、再々放送はありますでしょうか?

投稿:リッチー 2017年02月03日(金曜日) 13時25分

次郎さん、とても生き生きとしていて、ステキでした。お母様が、一人で外出させてみようと決断された事、素晴らしいと思いました。
私は、8歳のダウン症候群の息子を育てています。知的障害が重いので、幼稚園も保育園も受け入れてもらえず、小学校にあがるまでは、車で40分かかる療育センターの通園部にかよっていました。小学校も、バスで通う支援学校を勧められましたが、私は地域の小学校に通わせたいと思い、地域の小学校の支援級に通わせてもらうことにしました。それは、この子がいるこの地域で、この子がいるという事を周りの人たちが知らないままでいる事が、とても怖かったからです。
幸い、理解のある担任の先生に出会い、今は、朝の始業前や放課になると、たくさんの通常級の児童がクラスまで遊びに来てくれて、とても楽しく学校生活を送ることができています。
息子もたくさんの人たちと関わる事で学んでいるし、通常級の子供達も、まだ話せない息子と関わる事で、どうやって関わったら良いのかを、先生の見守る中でたくさん学んでくれています。
この学び合いが、当たり前になって欲しい。強く願って毎日を過ごしています。

投稿:エポママ 2017年02月02日(木曜日) 12時32分

こんにちは、山田です。
番組をご覧いただき、ありがとうございました。
また、メッセージもたくさん届き、うれしく感じています。
どれもうなずきながら拝見しました。
そしてマーマさんからも!お世話になりました。出会えて本当にうれしかったです。ありがとうございました。

「あなたはあなたでいいんだよ」と、自ら感じることができる街。その安心感が作り出す心の温かさは、周りの多くの人に自然なふるまいで伝わっていくと思います。
人間は実に多様で、だからこそおもしろい。認め合って、歩み寄って生きていきたい。これからの番組でも、みなさんと一緒に新しい気づきを感じていきたいと思います。

投稿:山田賢治 2017年01月30日(月曜日) 19時55分

海老原宏美さんの語ったことに共感しました。確かに人は誰でも自分のやり方で自分を表現しています。表現に障害者、健常者の区別はありません。大切なことは相手を理解するセンスだと分かりました。障害者、健常者が触れ合うことでセンスも磨かれます。できないことは「できない」と言って誰かに助けて貰うことも大切だと彼女は言います。助けた人も助けたことで良い気分になれます。ギブアンドアンドテイクは素晴らしいです。助けられる人も負い目に感じる必要もありません。次郎さんのように私も「私という仕事」をします。

投稿:たま 2017年01月28日(土曜日) 18時29分

山田さま
 初めて投稿させて頂きます。
「次郎という仕事」の仕事ぶりを拝見した。次郎さんがにこやかに周囲の人々と接していて、人間本来の姿を見ている感じがしました。人々を幸せにする、人々と快適に暮らす、言葉が無くても気持ちが通じている。これが人の仕事の基本だと思いました。誰かの笑顔のために、これからも次郎さんにはお仕事続けて頂きたいと思いました。

投稿:一人 2017年01月27日(金曜日) 16時20分

山田さんお疲れ様でした!録画をして何度も拝見させていただきました。次郎さんと山田さんの優しさが伝わってきて、感動と胸が熱くなりました。お母さんの愛情と地域の皆様との信頼関係が一杯に包まれて、次郎さんも幸せそうで応援したくなりますね!この番組を通して障害者の皆様への偏見が少しでも無くなります事を願っております。今年度も色々と勉強させて下さい、よろしくお願い致します‼︎取材など大変でしょうが呉々もお身体を大切にして頑張ってください‼︎

投稿:西口清満 2017年01月27日(金曜日) 14時36分

次郎は次郎の仕事をしている、IQ18はその人のものさしではないと新たな発見まさに目から鱗でした。わが息子も障害があります、一人っ子ゆえにあれこれと親がやってしまうのは自立心を妨げることになるんじゃないかと気づかされました。彼のアクティブなメンタル力に、ただ凄いと感動!。マーマさんも息子さんを心から信頼してるから一人で行動させているのですね。
私は息子を心の奥ではまだ信じきれずにいて常に共に行動してますがこれからスモールステップで心からの自立を進んでいこうと思いました。
次郎さんを知れて嬉しかったですありがとうございました。

投稿:ガクトママ 2017年01月27日(金曜日) 08時04分

私はいろいろな施設にボランティアで歌いに行っています
実は次郎さんの学校にも何度か行かせていただいてていつも皆さんに明るく迎えてもらっています
もちろんコミュニケーションが苦手な人もいます
逆にもうずっと話しかけてきてくれる人 すごい記憶力で以前行った時のこといろいろ話してくれる人 ただにこにこしてる人 ほんとにそれぞれ個性的で素敵な人達です
今日町の人達の様子を見ていて本当に心が暖かくなりました
素敵な番組ありがとうございました!

投稿:たかちゃん 2017年01月27日(金曜日) 07時54分

山田さま

こんばんは!

お世話になりましたマーマです。

放送をハラハラ観ました!

私も知らない次郎の外の顔をお知らせくださって、ありがとうございました。お魚屋さんのシーンでは、ハラハラがオロオロに変わり、いったいどうなることか?と思いました。どころが、皆さん親切にしてくださり、本当にうれしかったです。魚をビニール袋で持って帰るのも謎だったのですが、次郎が頼んでいたことも判明しました。

お弁当屋さんは、私は一度も行ったことがないですし、ブラジル食品屋さんも、次郎が発見したお店です。

もう、いろいろハラハラドキドキでした。けれど、どこに行っても、優しく接してくださる皆さんに、心から感謝しました。

やはり、世の中捨てたもんじゃない!

次郎はいつも、私にそう教えてくれます。

まだまだ、番組を観た感動が言葉になりませんが、今日はひとまず、お礼まで。

本当にありがとうございました。

投稿:マーマ 2017年01月27日(金曜日) 00時01分

我が家の知的障害を持つ重度自閉症児のなっちゃんも「なっちゃんの役割」があります。地域の中で育って欲しいと重度ですが人懐こい性格なので、学区の小学校の特別支援学級に通学しています。
校長先生が「言い方は悪いかもしれないけど、なっちゃんのような重度の障害(行動で障害児とわかる)のお友達が学校にいるという事は、健常児に自然と色々な人がいると理解出来るし、みんなの優しさを引き出してくれる必要不可欠の存在」とおっしゃてくれます。もちろん、校長先生が日々児童に指導してくださっている背景もありますが、家族以外からもなっちゃんが"必要とされている"という事は有り難く嬉しい事です。外出先でも「僕、なっちゃんと同じ小学校なんだよ」と嬉しそうに声をかけられる事もあります。

なっちゃんも成長したら、次郎君のようにもっと外の世界が広がることを願います。

投稿:よんプリママ 2017年01月26日(木曜日) 23時57分

番組を見ながら、これは障碍者と健常者の関係というだけでなく、人と人の関係に敷衍できることではないかと感じました。健常者同士の間にも「重い扉」は存在している。次郎さんのように、だれもが道行く人にあいさつをし、困ったときは助けを求められる社会になったら、きっと障碍者、健常者の区別なく、だれにとっても住みやすいのではないでしょうか。次郎さん、マーマさん、ありがとう。

投稿:はるみ 2017年01月26日(木曜日) 23時28分

1月26日のハートネットTV、「言葉を話せない次郎くん」が、次郎くんの方から地域の方に積極的に話しかけていき、手を振る姿に、とても考えさせられました。そして対応するお店の方がほとんど次郎くんの言葉を理解されていたのにも驚きました。領収書に「大切なお客様」って書かれていたのにも、いかに次郎くんが地域の方々と信頼関係が築けているのかが良く解りました。ハンディをもった方々がもっと地域に出て、そして支え合う社会になれば良いし、私も支えたいと思いました。良い番組をありがとうございました。

投稿:恵美ちゃん 2017年01月26日(木曜日) 23時12分

障害を持った方だけでなく、生きづらさを抱えている人の存在を生きていてくれるだけでいいんだと言ってくれているような内容で、次郎くんが楽しく地域に溶け込んでいることに心が踊り涙が出てきました。マーマのブログを拝見したことがありますが、アフリカのことなど、もっと掘り下げた内容で第2弾を期待しております。

投稿:mase 2017年01月26日(木曜日) 22時46分

次郎さんの明るさと行動力に感動しました。また、母親の言葉も心に残りました。笑顔で人生を送れと教えられました。

投稿:トシオ 2017年01月26日(木曜日) 22時42分

私の娘、真輝子も「真輝子は、真輝子の仕事をしている」とマーマさんに共感し、自分に再確認し、感動しました。(^.^)

投稿:真理子 2017年01月26日(木曜日) 22時31分

今夜のハートネットTV、ものすごくよかったです。
革命的でした。

投稿:陽子 2017年01月26日(木曜日) 20時45分