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『もっと"私"を診てほしい~てんかん勉強会に参加して~』

2013年03月22日(金)

てんかんに悩む人を孤立させないためにはどうしたらいいのか?
専門医が不足する中、医師たちにできることとは?
キーワードは“伝えることをあきらめない”



 「ハートネットTV」キャスターの山田賢治です。
先日、製薬企業が主催するてんかんの勉強会に行ってきました。
全国に100万人と言われる患者さんが、孤立しやすい状況にある
ことをあらためて感じた1時間。この現状を放置するわけにはいきません。


ten-aka.JPG
【写真】左:てんかん当事者の堀口香都さん(18年間発作なし。
「てんかんを抱えていても充実した生活を送れます」と話してくれました)
右:てんかん専門医の小出泰道さん

 




講師は、静岡県の病院に勤務しているてんかん専門医の小出泰道さん
東日本大震災後すぐに、被災地のてんかん患者さんやご家族、
さらに医療関係者向けにホットラインを開設し、薬の入手方法など、
生活に大きな影響を与える問題に対応したそうです。

ところが。

当初は「てんかん災害支援ホットライン」と銘打って
被災地のてんかん患者さんを対象にしていたのですが、翌月からは、
全国(海外からも)のてんかん患者さんから、診断治療や
受診についてだけでなく、自動車免許就職についてなど、
通常の生活における相談が増えてきたそうです。
そこで小出さんが感じたのは、「てんかん患者さんの相談窓口が、
平常時でもほとんどないのでは」
という、
当事者のみなさんが孤立している実態だったそうです。


小出さんは参考のために、2011年4月~2012年3月まで、
あるインターネットの相談サイトで「てんかん」の言葉を含む質問を
検索したところ、なんと3000件近い数があったそうです。
その回答は、当然誰が答えているかわかりません。
まったく的外れの回答も多くあるそうで、
それを鵜呑みにしてしまう危険性は言うまでもないでしょう。

 
小出さんは、担当医と患者さんとのコミュニケーション不足が、
一つの原因と指摘します。

治療の目標を共有していくために、お互いの立場でできること。
“伝えることをあきらめない”
医師と患者さん、“双方”が手を伸ばし、手を結ぶ努力が必要です。



医師の立場として「症状を見るだけでなく、自動車免許取得の問題など、
てんかんにまつわる社会問題にも関心を持つことが大事」
という提言。
一方で、てんかん患者の声も聞いてほしいと参加した、
当事者の堀口香都さんは、
「前向きにてんかんと向き合うためにも、例えば妊娠を希望しているときの
投薬の量
など、患者の声を担当医がしっかり聞いて、
ライフステージに合わせた“私向けの”対応をしてほしい。」
と。

でも。
疑念もあります。てんかん専門医などてんかんに熟知した医師の数が
まだまだ十分でない中で、正しいコミュニケーションができるか。
また、医師が一人一人の患者さんに対して、その人のライフイベントまで
把握する余裕があるのか、診療時間も確保できるのか。さらには、
患者さんが自分の症状を担当医に正しく伝えられるのか(小出医師からは、
発作が出たときにその様子を携帯の動画に撮って医師に見せては?
といったアドバイスもありました)。

 医師だけでは、対応の限度があると思います。
てんかん患者さんを支える、ソーシャルワーカー薬剤師などとの専門家と
連携したネットワークも必要になるでしょう。てんかんに関わる人たち、
誰もが孤立しないように。

 環境次第で、発作の頻度にも影響が出ると言います。
社会として、やるべきことは多々あります。
てんかんへの偏見や差別を無くすために、
もっと私たち一人一人の知識も理解も必要。
すべてで底上げが必要だと感じました。




「てんかんホットライン」
 独立行政法人国立病院機構 静岡てんかん・神経医療センター
電話:054-246-4618
対応時間:9時~22時 ただし17時~22時および土曜・日曜・祝日は当直が対応)
 

コメント

ハートネットの番組もよく拝見させていただいています。てんかん患者の苦悩はやはり本音を話しにくい面とかかなり沢山あると思います。
患者が起こした事故は確かに悪いですが、何故運転しなければならない状況だったのか。地域背景や雇用背景とか沢山あると思いますが、そういった面の報道や発信もあってほしいです。
また一般の患者の「普段の何気ない喜怒哀楽」を見てみたい、見て頂きたい思いもあります。

投稿:金曜日のPC 2013年05月08日(水曜日) 13時14分

こんにちは、山田です。コメントありがとうございます。

病気をオープンにしてもしっかりと受け止めてくれる社会が
理想ですよね。一気には無理だとしても、まずは一人でも
多く知ってもらい、それが線となって面となって拡がる
ように。これからも、てんかんの取材を続けて、
発信していきます。

投稿:山田賢治 2013年04月04日(木曜日) 12時27分

3歳からこの病気で苦しみました。

病気がメジャーになりてんかんの実体を良く知って欲しいと思います。そうなれば隠す事もあまりないし、差別、偏見も少なくなると考えています。
前の事故の時、側に患者の当事者がいてお互いの事を理解し合っていたらあの事故は防げたかも、支え合いを常にやれたらとつくづく感じます。
 ピアカウンをやっています。

投稿:kanako 2013年04月03日(水曜日) 20時38分

てんかんと診断されて30年になります。
学生時代はマラソンや水泳などの授業は
欠席しましたが、その他は普通に暮らしています。
大学へも行き、その後は社会人として働いています。
私のてんかんという病気は親しか知りません。
いつか治ると思っていましたが、どうやら
薬の服用はずっと続くようです。
発作もこの間20年は無く、病気のこと
自体を普段は忘れて過ごしています。
このような患者は沢山居ると思います。
誰にも自分の悩みを言えない苦しさ、
病気への偏見があるのが実情です。

投稿:hiro 2013年04月02日(火曜日) 16時50分

文聞さんへ

こんにちは。山田賢治です。
精神的にも、大変ご苦労なさったのだと推察します。
文聞さんのご経験や思いは、支援を受けているみなさんにとって
大きな心の支えになっていることは間違いありません。

これからもどうぞ、できる範囲で、無理をなさらず、自分のケアを
最優先にして、活動してください。応援しています。

投稿:山田賢治 2013年03月27日(水曜日) 11時17分

小学校5年生からてんかんを持ち
現在40歳、10年前に精神保健福祉士を取得
相談員や就労支援等行ってきましたが
ニュースで騒がれ始めた頃から
精神的に落ち込んで現在は障碍者となりました。

闘病し、支援する側になり、また
支援される側になるいったりきたりですが

てんかんについての理解がもっと深まることを
祈りつつ、また今後は様々な人に
理解していただける活動をしていきたいと
私自身も思っています。

投稿:文聞 2013年03月23日(土曜日) 22時50分