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【出演者感想】高野 優さん「"叩かれない暴力"もある」

2013年05月16日(木)

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――収録の感想を教えて下さい。

今回出演してくださった方たちは特別な人というわけじゃなく、ごく普通のお母さんですよね。だからこそ響くものがあると思うので、そういう近い存在の方が乗り越えてサバイブしている姿を見て、少しでも勇気が出ると良いなって思います。
みなさんあんなに輝いていて、カッコイイな、素敵だなと思いながら収録をしていました。

一方で、そういう意味ではちょっと綺麗にまとまり過ぎちゃったかなと感じるところもあって、「助けて」という声も、もう少しあってもよかったのかもしれません。そこまでの話ができなかったことが、今回自分の反省点かと思います。

 

――今回のように番組に出演していただいたり、高野さんの講演を
聞きにこられる当事者の方は、少なくとも外に出ている。
本当に困っている方はそれすらなかなか難しいのかもしれません。


そうなんです。虐待もそうですし、育児ノイローゼの方なども
こういう現場にはなかなか来ないんですよね。
そういう方たちをどうしようかという話を
子育て支援の方とよくするのですが……。
「本当に助けて」「苦しい」という悲鳴に似た叫びの方たちに
今回の番組が少しでも届けば良いなって思いますね。

 

――そういう方たちに、たとえばどのようなことを伝えたいですか。

“叩かれない暴力”もあるってことですね。
スタジオでもお話させていただきましたが、
言葉の暴力というのは血が出るわけじゃないし、
アザができるわけでもない。
見た目に残らない分、ひどく曖昧になっていたので、
言葉も虐待につながるということを少しでも伝えられたかなって思います。
自分の言った何気ない言葉、あれは言葉の暴力なのかなって思った方が
ひとりでもいたら良いな。
実際、カキコミで言葉の暴力を訴えていた方もいたので、
すごく穏やかな水にポンっと石を投げられたかなって思います。

 

――言っている本人が自覚していないだけに、それが暴力だと
気づかせることは難しいかもしれません。


そうですね。でも今回たくさんのアンケートを拝見させて頂いて
気づいたのですが、“書く”っていう作業は、虐待してしまった方、
そして虐待された本人にとっても、一度それを整理する良いステップだと
思ったんです。出演者の吉岡さんも終わった後に
「書くことで自分は消化できた」とおっしゃっていましたし、
そういった“自分でできる救い”の仕方もあるんだなって気付かされて、
私自身、今回の番組はある種のターニングポイントになったような気がします。

これからは講演会に呼ばれてただしゃべるだけじゃなく、
たとえば講演会の後に座談会みたいなものを設けてワークショップをすれば、
当事者の絡み合った気持ちをほぐせるかもしれませんよね。
そして、そういうことを希望する方は絶対多いと思うんです。
講演会に来て話は聞けても、自分の声は届かないと思うお客様も
多いと思いますし、まだまだ自分にできることは
たくさんあるんだっていう気持ちが今すごく大きいですね。

 

――自分の思考の中だけじゃなく、相談できる人を見つけることが大切という
お話もありました。また辻さんも「100
人いたら100通りの支援がある」
とおっしゃっていましたが、そういう選択肢をどう用意するかも
大切だと思うのですが。


これまで子育て支援センターは悩みがある人のために
門を開けて待っているという状態が多かったと思うんですが、
本当に困っている人は門を叩くこともできないんですね。
今、社会もそれに気づき始めて、じゃあこっちから動こうと
いろいろと模索している最中なんです。

たとえばホームスタートという家庭訪問型子育て支援があって、
自宅にボランティアの方が伺って
いろいろな相談に乗るというものなんですけど、
その活動によって親の孤立化が防げて、
家族のエンパワーメントがはかれたらと期待しています。
またファザリングジャパンは、父親のワーク・ライフバランスを支援していて、
あれこそ男性社会の大きな風穴だと思うんです。
安藤さんはよくぞあんな大きな穴を開けて、
ムーブメントを起こしたなと思いますね。

そして、今回の番組も風穴のひとつになったら良いなと思います

 

――今回の番組はどのようなことを考えながら見て欲しいと思いますか。

たとえば大阪の3人の方たち、彼女らはものすごく壮絶な体験があってこその、
今の元気とパワーなんですね。
ただ親から殴られて、虐待がつらかったということで出演している訳じゃなく、
もっと壮絶で、本当に生きるか死ぬかを乗り越えたという経験があるわけです。
そういうバックボーンを意識しながら見ていただきたいですね。
柳谷さん、辻さん、他の方ももちろんそうですけど、
それを乗り越えた人の言葉はうわついていないと言うか、
ドンと来るものがある。
当事者の方は今、つらいかもしれないけれど、
その闇をくぐり抜けたら彼女たちのような女性になれるって思って欲しいな。

 

《高野 優さんプロフィール》
育児漫画家・絵本作家。高2、中3、小5の三姉妹の母。
NHK教育テレビにて「土よう親じかん」、「となりの子育て」の司会を務める。
著書は「よっつめの約束」「思春期ブギ」など、約40冊。
台湾、韓国でも翻訳本が出版されている。

コメント

こんにちわ。ひとつでも 出きれば 私がいなくなったら どうやって 生きて行くんだろう。 いっぱい 言ってはいけない 言葉を口にして 息子を 傷つけてきた。もう 介護で いいよね。わかっているのに親って 理解できてるようで、一番 できなてないかも 知れませんね。

投稿:山ちゃん 2017年07月11日(火曜日) 19時47分

専門職&援助職です。
小さい頃に、言葉の虐待、身体的な虐待、を受けて育ちました。
仕事に疲れて帰ってきて、子ども二人を、愛してあげなければと思いながら、
相手をする元気もありません。
ちょっとしたことで、子どもを怒鳴り、脅し、父母とそっくりな
自分に希望がもてません。治せません。
夫は、気持ちの共感性が低く、収入も低いので、私が稼がねば
なりません。精神科に行って、薬をもらって、今日も人助け。
毎日、死にたい死にたい死にたい、、、勇気がありません。
父も弟もアスペルガーでした。フタをあけたら、夫もそうでした。
私が死んでも、困る人はたくさんいても、泣く人はいないだろうな、、、
上司にも、仕事を減らしたいと言ってみましたが、冗談で帰され
ました。
虐待の連鎖だけは避けたかったのに。
死んでほしいのは自分なのに、死ねと子どもに罵って、私は
本当に死ねばいいです。
今日は夫に子守りをたのんで寝ています。
頼めば子守りをできる日はしてくれるのが、いいところです。 
だから、まだ、生きていられる。
もう、誰かの面倒をみたり、期待に応えることをやめたい。
子どもを産む資格がなかったなと、思います。
産まれて来なければ良かったのにな。

投稿:たぬき 2014年10月30日(木曜日) 20時57分

私は虐待経験のない、甘やかされて育った30代です。
しかし、自分が一人っ子で2人の子をどう育てたらいいのかがわからないのと、自己中心的な性格のせいで、4歳の長女についチクチクと小言を言ってしまう日々が続きました。そのせいで長女は朝や休日は夫にべったり。余計イライラしてついキツい言い方になるという悪循環でした。
虐待というほどでは…と思いながらも、藁にもすがる気持ちで5/27の再放送を拝見し、高野さんの、言葉の暴力も虐待である、自分のイライラを八つ当たりしているだけではというお言葉にハッとさせられ、お子さんの表情について保育園の先生に言われて気づいたというエピソードに、スタジオのママと一緒に涙しました。
私も同じで、ちょっとくらいお行儀が悪くたって、ちゃんとご飯を食べなくたって、元気で笑顔で毎日を過ごしてくれればそれでいいのに、元気や笑顔を奪っていたのは私でした。夫や専門家の方に言われたら、上から目線だと思ってしまって素直に受け取れなかったかもしれません。同じように悩み、苦しみ、それを乗り越えた高野さんのお言葉だったからこそ、心に迫ったと思います。
本当に救われました。ありがとうございました。

投稿:sachi 2013年05月27日(月曜日) 14時03分

番組ずっと視ています。今夜(20日)の放送も視ますが、座談会のメンバーが母親だけなのは気になるところです。実際、虐待をするのは母親が多いですが(日本はほとんど母親が育児しているので当たり前ですが)、父親や養父が加害者の場合も少なくないからです。

そういう男性がこうした番組に出ることはまずない、ということも理解しますが、母親ばかり出演させることでまた「育児はお母さんがしっかりやらねやらならければならない」という「刷り込み」になりはしないかが、私は心配なのです。

ps
高野さん、ファザーリング・ジャパンの取組に言及していただき感謝です!

投稿:安藤哲也 2013年05月20日(月曜日) 15時50分