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小説『きみはいい子』著者・中脇初枝さんインタビュー:その1

2013年05月10日(金)

虐待を題材にした連作短篇小説集
『きみはいい子』(ポプラ社・2012年発行)が
大きな反響を得た作家の中脇初枝さん。

この小説を書くにあたっては、かなり取材もされたと言います。

中脇さんがそこで感じたこと、
また小説を通じて発しているメッセージとは――。


※このインタビューは全4回に分けて掲載します。


■「する側」も汲みたい

――虐待というテーマを書こうと思った経緯からお話を聞かせてください。

今、虐待があるからです。
新聞やテレビの報道で、虐待事件を目にするようになりましたが、
その場合、最悪の結果になっていることが多いですよね。
すごく小さいのに死んでしまう、
もしくは、せっかく大きくなったのにそういうことで死んでしまう、
そういう現実を知って、
こどもたちが死なない道はなかったんだろうかと思ったことが、
書きはじめたきっかけです。


――いろいろ取材をされたと伺いましたけれども
 実際に当事者からお話を聞いて、最も強く感じたことはどんなことですか。


「された側」のこどもの話や記事が取り上げられることが
やはり多いと思うんです。
実際、その結果、亡くなったこどものことを思うと、
この死を無駄にしたくない、必ず書いて残して伝えなくては、
という気持になります。
でも一方で、「した側」の人の話をきくと、
ある意味、そここそ汲まないといけないのではないかと思うのです。
擁護しているわけではないんですけど、
「した側」の人のほうが深く重いものを抱えているんじゃないか、という。


――確かに、報道の特性として、どうしても被害者中心に取り上げ、
 加害者側を掘り下げて伝えるということは、
 あまり多いとは言えないのが事実です。


加害者はどうしてそんなに刹那的で、想像力がないのか。
一昔前は病気とか心の闇とかいって片づけてしまっていましたけど、
もう少し丁寧に見たい。
虐待する人って、モンスターなんかじゃない。
自分自身もそうですけど、みんな紙一重のところでいるのではないか。
だれでもきっかけがあったらしかねないと思っているので。

(2013年4月24日にインタビューを行いました)

gyakutai_20130510_001.JPGのサムネイル画像
撮影 山口美紀

中脇初枝さんプロフィール
1974年徳島県生まれ。
『魚のように』で第2回坊ちゃん文学賞を受賞してデビュー。
小説に『祈祷師の娘』『こんこんさま』。
絵本に『こりゃまてまて』他著書に『女の子の昔話』など。
2012年に発表した『きみはいい子』(ポプラ社・刊)は8年ぶりとなる小説。


小説『きみはいい子』著者・中脇初枝さんインタビュー:その2は
こちらをクリック



 

シリーズ 子どもの虐待 どう救うのか
*以下すべて午後8時から放送。再放送は翌週の同じ曜日、午後1時5分〜

2013年5月6日(月)
第1回「深刻化する虐待 児童相談所はいま」

2013年5月7日(火)
第2回「“ハイリスク妊娠”からのSOS」

2013年5月8日(水)
第3回「埋もれた“性的虐待”」

2013年5月13日(月)
第4回「虐待の傷と向き合う」

2013年5月20日(月)
第5回「言葉が持つ力―育児漫画家・高野優さん―」

2013年5月30日(木)
第6回「みなさんの声にこたえて」

 

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